【司法統計をもとに解説】相続争いに関する基礎知識

相続争いってよく聞くけど、実際にどのくらい起きているのだろうか…?
自分の家族は相続争いをするリスクがあるのだろうか…?

本記事をご覧の方はこのような疑問をお持ちではないでしょうか。

本記事は相続争いが「いつ起こるのか」「実際にどのくらい起きているのか」「誰が争っているのか」「なぜ争うのか」といった、相続争いに関する基礎知識を司法統計の数字に基づいて解説しています。

また、よくある相続争いの事例、相続争いが起きたらどうすればよいのか等も併せて解説しております。

本記事が、相続について関心をお持ちのみなさまの一助となれば幸いです。


1.相続争いはいつ起こるのか

相続争いは、「被相続人が残した財産をどのように相続するか」を遺族が話し合う時に起こります。

被相続人がお亡くなりになり、葬儀などがひと段落すると、遺言書がある場合はその通りに財産を分けていきます。しかし遺言書がない場合は、法定相続人全員で遺産分割協議を開催して、財産の分け方を決めます。

この遺産分割協議において、被相続人の財産を「誰が」「何を」「どのように」引き継ぐかで遺族たちが揉めると、相続争いに発展することがあります。

また、遺言書があったとしても、不公平な内容であったり、遺言書の様式に不備があった場合は、相続争いに発展することがあるので注意が必要です。

公正証書遺言を作成してももめる?遺言書を作成する6つのコツを紹介


2.実際に相続争いはどのくらい起きているのか

次に、実際に相続争いがどのくらい起きているのか説明します。

2-1.家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割争いの件数は13,447件

現在公開されている最新の司法統計である令和3年度の司法統計によると、家庭裁判所へ持ち込まれた遺産分割争いの件数は13,447件です。

令和3年司法統計年報 3家事編 第44表

2-2.遺産分割争いの件数は20年で1.5倍になった

家庭裁判所へ持ち込まれる遺産分割争いの案件は年々増加傾向にあり、ここ20年で1.5倍になっています。
平成12年に8,889件であった遺産分割事件数が、令和3年には13,447件にまで増加しています。


3.誰が相続争いをしているのか

次に誰が相続争いをしているのか説明します。
相続争いはごく普通の家庭で起きています。

令和3年の司法統計によると、調停や審判など裁判所で争うこととなった相続争いの中で、全体の約76%は遺産額5,000万円以下のごく普通の家庭です。

遺産額が少額な場合は、遺産のほとんどが不動産ということも多く、不動産の分け方が決まらずに相続争いに発展することがよくあります。


4.なぜ相続争いは起こるのか

相続争いは「相続人同士が争うこと」で起こります。

相続人同士が争う理由は以下の2つです。

  • 資産に関する問題があるから
  • 家族に関する問題があるから


5.よくある相続争いの事例10選

よくある相続争いの事例を10個紹介します。
クリックすると、図解つきのよくある相続争いの事例を確認することができます。

また、事例と合わせて、相続争いとならないための生前対策を記載しています。
ご自身の家族に似た事例があった場合、必要であれば生前対策を行ってください。

事例1主な遺産が自宅の土地・建物のみであるケース
事例2被相続人が会社を経営していたケース
事例3生命保険金の受取人が偏っているケース
事例4特定の相続人が遺産を独占したがるケース
事例5特定の相続人だけ生前贈与を受けていたケース
事例6被相続人に前妻との間の子供がいるケース
事例7特定の相続人などが被相続人の介護をしていたケース
事例8相続人の中に認知症の人がいるケース
事例9不公平な遺言書が出てきたケース
事例10特定の相続人が被相続人の財産管理をしていたケース

6.相続争いが起きたらどうすればよいのか

相続争いが起きたら、以下の順番で対応していきましょう。

6-1.【ステップ1】相続人同士で話し合う

まず、相続人同士で話し合いましょう。
それぞれの主張を感情的に話してしまうと意見がまとまらないので、法律を根拠に話し合うことをおすすめします。

6-2.【ステップ2】弁護士を入れて話し合う

弁護士を入れて話し合いましょう。
弁護士は法律とトラブル解決の専門家です。法的な根拠に基づいて、冷静に遺産分割について話し合い、解決に導くことができます。

6-3.【ステップ3】家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる

弁護士を入れて話し合いをしても解決しない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てましょう。

遺産分割調停とは、遺産の分割について相続人の間で話し合いがつかない場合に利用することができる、家庭裁判所の手続きです。

家庭裁判所の裁判官と調停委員が、相続人それぞれの主張を聞き取り、話し合いによって相続人全員による合意を目指します(調停委員とは民間から選出された非常勤の裁判所職員のことで、弁護士などから選任されます)。

遺産分割調停とは?図解を用いてわかりやすく解説

6-4.【ステップ4】家庭裁判所で遺産分割審判をする

遺産分割調停で話し合いがまとまらず合意に至らない場合は、遺産分割審判に移行します。

この遺産分割調停が不成立になり、遺産分割審判に移行することを判断するのは調停委員ですので、相続争いの当事者が何か手続きを行う必要はありません。

遺産分割審判では、裁判官が当事者から提出された書類や資料に基づいて、遺産分割の方法を判断して決定します。


7.相続争いは誰に相談すればよいのか

相続争いは誰に相談すればよいのか説明します。

7-1.相続争いについて相談できる専門家は弁護士一択

相続争いについて相談できる専門家は、弁護士の一択です。

弁護士は法律と紛争解決の専門家です。
税理士や司法書士は、紛争解決の専門家ではありません。

相続人同士で争いになってしまっている場合は、弁護士に相談しましょう。

7-2.弁護士に依頼した場合の費用

相続争いの解決を弁護士に依頼した場合の、費用の内訳は以下の通りです。

なお、弁護士費用は経済的利益の金額によって大きく変わってくるので、一概に〇円ということが難しいのが現状です。

相談料(弁護士に相談する時にかかる費用)30分5,500円程度
着手金(業務に着手するときに支払う費用)20-60万円程度
(訴訟の規模に応じて価格が決まる)
報酬金(弁護士に支払う成功報酬)経済的利益の金額によって変動
・300万円以下の場合:16%
・300万円超え3,000万円以下の場合:10%+18万円
・3,000万円超え3億円以下の場合:6%+138万円
・3億円を超える場合:4%+738万円
日当(弁護士が遠方に赴く時の出張費)1日50,000円程度
(出張がなければ支払いなし)
実費(諸費用)1-5万円程度

【例】遺産分割調停を弁護士に依頼した場合の費用

あくまでも一例ですが、経済的利益が1,000万円だったAさんの弁護士報酬は約163万円になります。

相談料22,000円(2時間相談したと仮定)
着手金40万円
報酬金118万円(1,000万円×10%+18万円)
日当なし
実費(諸費用)3万円

8.まとめ

相続争いってよく聞くけど、実際にどのくらい起きているのだろうか…?
と疑問をお持ちの方を対象に、相続争いに関する基礎知識を司法統計の数字に基づいて解説してまいりました。

最後に、本記事のポイントを一覧表で振り返ります。

相続争いはいつ起こるのか「被相続人が残した財産をどのように相続するか」を遺族が話し合う時
相続争いはどのくらい起きているのか令和3年の家庭裁判所へ持ち込まれた遺産分割争いの件数は13,447件
誰が相続争いをしているのか約76%は遺産額5,000万円以下のごく普通の家庭
相続争いが起きたらどうすればよいのか以下の順番で対応していく
【ステップ1】相続人同士で話し合う
【ステップ2】弁護士を入れて話し合う
【ステップ3】家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる
【ステップ4】家庭裁判所で遺産分割審判をする
相続争いは誰に相談すればよいのか弁護士

本記事が、相続について関心をお持ちのみなさんの一助となれば幸いです。

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