死亡保険金の受取人は、保険契約時に受取人に指定された人です。保険証券に記載されていますので確認しましょう。死亡保険金は受取人固有の財産ですので、遺産分割協議の対象にはなりません。また、死亡保険金が相続税の課税対象となるのは、被保険者と保険料の負担者が同一の場合です。受取人が相続人である場合、相続税には非課税枠がありますので、保険金が課税されるかどうかも合わせて確認してみましょう。
本記事をお読みになった皆さんが、死亡保険金の受け取りや、その申告についての疑問を解消し、最小限のコストで正確な相続税申告を終えることを心からお祈りしております。
目次
1.死亡保険金は誰のもの?
1-1.死亡保険金の受取人は「契約時に受取人に指定された人」
死亡保険の受取人は、保険契約時に受取人に指定された人です。保険証券に記載されていますので確認しましょう。また、契約時から変更されている場合もありますので、最新の契約を確認するようにしましょう。保険証券がない場合は、保険会社に問い合わせてみてください。
なお、受取人がすでに死亡しており、その変更手続きがされていなかった場合は、「受取人の法定相続人」が受取人になります。
1-2.死亡保険金は受取人固有の財産
死亡保険金は契約書に指定された受取人固有の財産であり、相続財産ではありません。そのため、原則、相続人同士で分け合うものではありません。つまり、遺産分割協議の対象にはなりません。
1-3.【例外】「特段の事情」がある場合は、特別受益になるケースも
上記の通り、死亡保険金は受取人固有の財産であり、遺産分割協議の対象ではありません。しかし、例外ではありますが、生命保険金が特別受益とされるケースがあります。特別受益とは、特定の相続人が得た特別な利益のことで、遺産分割時はその利益を相続財産に合算した上で、各相続人の相続分を決めることとなります。保険金が高額で、遺産に占める割合が5割を超えるような場合など、「特段の事情」がある場合に保険金が「特別受益」とされた判例があります。
■詳細はこちら
辻・本郷相続ガイド 生命保険金は相続財産ではないの?生命保険金と特別受益の関係
2.相続税とは限らない!パターンによって変わる税金の種類
死亡保険金にかかる税金は、被保険者・保険料負担者・受取人によって変わってきます。
次の表のように、相続税が課税されるのは「被保険者」と「保険料の負担者」が同一の場合です。契約者ではなく、「実質的に保険料を負担した人」で判断しますので注意が必要です。
被保険者(保険をかけられている人=お亡くなりになった方) | 保険料負担者 | 受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
A | B | B | 所得税 |
A | A | B | 相続税 |
A | B | C | 贈与税 |
次の表に、夫が亡くなった場合の例を記載します。
被保険者 (保険をかけられている人 =お亡くなりになった方) | 保険料負担者 | 受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
夫 | 妻 | 妻 | 所得税 |
夫 | 妻 | 相続税 | |
妻 | 子 | 贈与税 |
表のように、夫が亡くなった場合、死亡保険金に相続税が課税されるのは、保険料を支払っていたのが夫である場合となります。
3.死亡保険金には「非課税枠」がある
上記の通り、死亡保険金は受取人固有の財産であり、民法上の相続財産ではありません。しかしながら、相続税の課税対象となるため、「みなし相続財産」と呼ばれています。みなし相続財産には、「非課税枠」が設けられています。
3-1.「非課税枠」が適用されるのは、受取人がお亡くなりになった方の法定相続人である場合
死亡保険金に非課税枠が適用されるのは、受取人がお亡くなりになった方の法定相続人である場合です。受取人が相続人以外の者である場合は、遺贈により取得したものとみなされ、非課税枠は適用されません。また、相続放棄した人は、保険金を受け取ることはできますが、受け取った保険金に非課税枠を使用することはできません。
■詳細はこちら
辻・本郷相続ガイド 遺贈と相続って何が違うのでしょうか?
辻・本郷相続コラム 相続放棄をした人が死亡保険金の受取人になっている場合
3-2.非課税枠の計算方法
非課税枠(いくらまで非課税になるのか)は、次の算式によって求められます。
死亡保険金の非課税枠=「500万円×法定相続人の数」
すべての相続人が受け取った保険金の合計額が、算出した非課税枠を超える際は、その超える部分が相続税の課税対象になります。非課税枠を超えない場合は、その保険金は非課税となります。
4.まとめ
死亡保険金の受取人は、保険契約時に受取人に指定された人です。保険金は受取人固有の財産なので、相続人で分け合うものではありません。相続税が課されるのは、被保険者と保険料の負担者が同一の場合です。また、受取人が相続人の場合には、相続税の非課税枠がありますので、死亡保険金に相続税がかかるかどうかも確認してみましょう。
最後に、死亡保険金だけでなく、すべての相続財産について、相続税がかかるのかどうか知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
辻・本郷相続コラム 相続税はかかるのか? ~相続税の計算方法~
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