海外在住の相続人がいるとき、遺産分割協議書の作成はどうすればよい?

「娘が結婚して、海外に住んでいるけど相続は出来るのだろうか
「息子が仕事で、海外に住んでいる場合の相続手続きはどうなるのだろう」

そんなお悩みを抱えたあなたへ、海外在住の相続人はどの様に相続手続きを進めていけば良いのか解説しました。
是非参考にしてみてください。


1.相続人が海外にいても、遺産分割協議が必要

遺産分割協議は、必ず相続人全員で行う必要があります。

海外に住んでいようと、特別に待遇が変わるわけではありません。
当然、海外に住んでいても相続人という立場は変わりませんので遺産を相続する権利があります。

遺産分割協議とは、相続人全員で誰がどの財産を引き継ぐのかを話し合い、遺産分割協議書を作成することです。遺産分割協議書には相続人全員の署名捺印が必要となりますので、相続人のひとりが海外にいる場合ですと署名捺印を貰うだけでも、時間がかかってしまいます。

もしもの時に備えて、やらなければならない事を確認しておきましょう。


2.相続人が海外に住んでいるときにやること

早速、確認していきましょう。

2-1.印鑑証明書の代わりにサイン証明書を取得しよう

相続税申告の際に、遺産分割協議書と印鑑証明書を提出することとなっていますが、海外に住んでいる人は印鑑証明書がありません。その場合、サイン証明を印鑑証明書の代わりとして提出することになります。

サイン証明とは、海外に住んでいる人に対し、印鑑証明書の代わりとして在外公館が発行するものです。

・サイン証明書の取得方法

①サイン証明書を必要とする方が住んでいる国の日本大使館・領事館へ行く。

②サインすべき書類(遺産分割協議書)に、領事の面前でサインをします。
※領事の面前で署名(又は拇印)を行わなければならないので、申請する方本人が出向いて申請すること
  が必要です。代理申請や郵便申請はできませんのでご注意ください。

③本人がサインしたものの証として、サイン証明書を発行してもらいます。

・サイン証明書の取得に必要な書類

・日本国籍を有していること及び本人確認ができる書類(有効な日本国旅券等)
・日本から送付されてきた署名(又は拇印)すべき書類

・サイン証明書の取得に必要な手数料

1通につき邦貨1,700円相当です。お支払は現金(現地通貨)となります。

詳しくは、下記ページをご確認ください。
外務省HPより「在外公館における証明」​​​

2-2.必要な場合は在留証明書も取得しよう

もし、海外在住の相続人の方が不動産を相続する場合は、在留証明書が必要です。

在留証明書とは、外国のどこに住所(生活の本拠地)を有しているかを証明するものです。
年金の受給や、不動産登記、学校の受験手続き等に使用されます。

・在留証明書の取得方法

①在留証明書を必要とする方が住んでいる国の日本大使館・領事館へ行く。
 ※ただし、本人が公館に赴くことができないやむを得ない事情がある場合は、委任状をもって代理申請を行うことが
  できる場合もありますので、事前に証明を受けようとする在外公館にご相談ください。
本人による申請が原則となります。在留証明は、遺産分割協議や不動産登記、その他申請される方にとって重要な
  用途に使用されるため、申請する方の意思と提出先の確認を行うと同時に、本人の生存確認を行います。

②申請をして、在留証明書を発行してもらう。

・在留証明書の取得に必要な書類

・日本国籍を有していること及び本人確認ができる書類(有効な日本国旅券等)
・住所を確認できる文書
(例:現地の官公署が発行する滞在許可証、運転免許証、納税証明書、公共料金の請求書等で
住所の記載があるもの、現地の警察が発行した居住証明等)
・滞在開始時期(期間)を確認できるもの
※滞在期間が3か月未満の場合は、今後3か月以上の滞在が確認できるもの
(賃貸契約書、公共料金の請求書等)
・証明書上の「本籍地」欄に都道府県名のみではなく、番地までの記載を希望する場合は戸籍
謄(抄)本

※詳細は証明を受けようとする在外公館のホームページ等で御確認ください。

1通につき邦貨1,200円相当です。お支払は現金(現地通貨)となります。

2-3.遺産分割協議書を郵送or一時帰国してもらおう

海外在住の方が忙しく、一時帰国できない場合は遺産分割協議書を海外へ郵送し「サイン証明書」を取得してもらいます。

日本に一時帰国している場合には、日本の公証役場でサイン証明書を取得することもできます。

本人確認資料として、パスポート、海外の住所がわかるもの(在留証明や免許証等)を持参して、公証人の目の前で遺産分割協議書等に自分で署名することで、それらの書類に本人が自筆で署名したという「サイン証明」を作成することができます。このサイン証明は印鑑証明書と同じ公的な証明書類として扱われます。

ただし、不動産の登記手続きでは「在留証明書」が必要となりますので、覚えておきましょう。
もし、海外在住の方が不動産を相続する場合は、一時帰国する前に「在留証明書」を取得しておくとスムーズでしょう。


3.相続人が海外にいる場合に気をつけること

ここまで読んでいただければ分かるように、相続人の方が海外にいる場合は通常の相続税申告よりもやる事が増えてしまいます。この章では、相続税申告をする上でどの様なことに注意が必要かをまとめましたので、一つずつ確認していきましょう。

3-1.書類準備・やりとりに時間がかかる

サイン証明書や、在留証明書は窓口へ行けば即日発行してもらえますが、下記の通り郵送に時間がかかります。

国際郵便の配達目安
・EMS  2~4日
・航空便 3~6日
・船便  1~3ヵ月

余裕を持って、進めないと申告期限に間に合わなくなってしまいますので注意しましょう。

詳しくは、こちらをご覧ください。
日本郵政グループHP「発送方法の比較」​​​

3-2.遺産分割が進みにくい

日本国内であれば、相続人同士が顔を合わせて話し合いができますが、海外に相続人がいる場合はそうもいきません。時差があったり、通信環境が悪かったりと様々な状況が考えられます。

お互い思いやりを持ち、円満に話し合いを進められるよう心がけましょう。

3-3.現金を相続すると手続きが面倒

海外在住の相続人が預貯金を相続する場合で、日本国内に口座を開設していない場合は、海外送金をする必要があります。
しかし、日本の金融機関では、マネー・ロンダリングおよびテロ資金供与対策として、海外への送金を行う際に厳しい制限や確認作業を行っています。

各金融機関により手続き方法が異なります。
遺産分割協議書等の原資を確認できる書類の提示を求められたり、戸籍謄本等の提示を求められる場合があります。また、振込できる金額にも制限があり、1回につき100万円未満や、1日につき200万円以下、1ヶ月につき500万円以下とされる場合もあります。

海外送金手数料もおおよそ、2,000円から7,500円くらいと国内送金より高額となっているため、覚えておきましょう。


まとめ

慣れない相続手続きで、さらに海外に相続人がいる場合は、手続きに労力がかかってしまいます。
少しでも、不安な方は専門家へ相談しましょう。第三者の専門家を交え、円満に相続を進めましょう。

辻・本郷 税理士法人の相続税申告サービス
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