「最近、母が認知症っぽいけど相続は大丈夫だろうか?」
「認知症でも相続はできるのだろうか」
「身内に相談したくないけど、どうしよう」
色々な悩みがあると思います。そんな方へ向けて“認知症と相続”に関して解説しています。
是非、参考にしてみてください。
目次
1.相続人の中に認知症の人がいると遺産分割協議ができない
認知症になってしまうと、判断能力が低下し、適切な判断ができないため、遺産分割協議をすることが出来ません。
相続税の計算は、各人の相続割合により相続税額を計算することになっているため、遺産分割協議ができないと相続税の計算ができなくなってしまいます。そのため、適切な相続税申告をすることが難しくなってしまいます。
相続税の計算方法を知りたい方は、こちらをご覧ください。
引用:東京税理士会「相続税の計算方法」
下記の図の様に遺産分割協議は、認知症の方も含めた、相続人全員で行う必要がありますので注意しましょう。
遺産分割協議について詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
【2023年最新版】遺産分割協議書とは?雛形付き作成方法も徹底解説!
2.ただし、認知症でも遺産分割協議に参加できる場合もある
医師の診断により判断能力に問題なしとされれば、遺産分割協議を行うことも可能となります。
認知症は人によって症状に差があり、認知症の人全員が意思能力がない訳ではありません。
家族の呼びかけに、反応できたり、日によっては認知症と分からないぐらい意思がハッキリしていたりと、人により様々です。
最近だと、「意思能力鑑定サービス」というものもあるそうで、安心安全な相続税申告を行うのであれば、医師や弁護士に相談することをお勧めします。
後々トラブルを防ぐためにも、相続人同士で独自に判断せずに慎重に検討しましょう。
3.相続人に認知症の方がいる場合は、成年後見制度を利用しましょう
相続人に認知症の方がいる場合は遺産分割協議ができないとお話ししましたが、「成年後見制度」を利用することで遺産分割協議ができるようになるのです。
・成年後見制度とは
判断能力が不十分な方(認知症、知的障害、精神障害)を保護するためのものです。
判断能力が不十分なため、悪徳業者等から高価な物を買わさせたり、必要のない契約をさせられたりしてしまう可能性があります。このような不利益を被らないように、成年後見人という代理人を定めて、その成年後見人に財産の管理や、契約をしてもらう制度です。
3-1.成年後見制度のメリット
相続において成年後見制度を利用することで、得られるメリットを3つ紹介します。
遺産分割協議に参加できる
認知症の方の代わりに、遺産分割協を行うことができます。
成年後見人は、認知症の方の財産を守る立場となりますので最低でも、法定相続分を受け取れる内容でないと合意することは難しいとされています。
相続放棄・限定承認ができる
認知症の方の代わりに、相続放棄や限定承認の申し立てを行うことができます。
成年後見人は、認知症の方の利益になるかどうか慎重に見極めた上で、相続放棄や限定承認をするかどうかを判断することになります。
相続放棄・限定承認については、下記記事をご覧ください。
相続放棄の期間は3ヶ月!期限を過ぎた時の対処法や期間伸長の申立を解説!
相続放棄の手続きと影響を解説します
相続登記や、相続税申告ができる
認知症の方が、不動産を相続する場合には、登記申請を成年後見人が代理して行うことができます。
また、相続税の申告が必要な場合にも代理して手続きを行うことができます。
成年後見人が、本人に代わって司法書士や税理士に手続きを委任することができるということになりますので、成年後見人が登記申請書を作成したり、手続きをしなければいけない訳ではありません。
遺産相続手続きに関しては、下記記事をご覧ください。
遺産相続の手続き期限はいつ?一目でわかる一覧表付き
3-2.成年後見制度のデメリット
相続において成年後見制度を利用することで生じる、デメリットを3つ紹介します。
成年後見人の申立てが面倒
成年後見制度は、家庭裁判所に申立てる事から始まります。
申立ての前に、診断書や必要書類の収集をしなくてはなりません。申立てをして、家庭裁判所の審判が下り、実際に後見が開始されるには、約1〜2ヶ月程かかります。状況によっては、それ以上かかるケースもあります。
相続税申告の期限は、亡くなったことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に行うことになっています。相続発生後に、成年後見人の申立てを行う場合は、なるべく早く取り掛かりましょう。
遺産分割協議が思い通りにならない可能性がある
成年後見人は、法定相続分を主張してきますので、認知症の方以外の相続人の重い通りになるとは限りません。
2次相続の事を考え、認知症の方の取得分を少なくした内容の遺産分割協議を希望しても、後見人が認めるのは難しくなります。
専門家が成年後見人になるとお金がかかる
専門家が後見人になると、報酬が発生します。
認知症の方の財産額により変わってきますが、月2~6万円くらいかかります。
また、原則、途中解約できないことになっていますので、認知症の方が亡くなるまで報酬を支払うことになります。
4.もし、成年後見制度を使わずに相続税申告をしたらどうなるか
成年後見制度の手続きをめんどくさがり、他の相続人が代わりに遺産分割協議書やその他の相続手続きに関する書類等に署名・押印することは、私文書偽造罪になります(刑法159条の1)。
(私文書偽造等)
第百五十九条 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
自分だけはバレないから大丈夫だろうと思わずに、まずは専門家へ相談しましょう。
5.認知症の家族がいるときは遺言書を書いておこう
ここまで、認知症の方がいると遺産分割協議ができないとお話ししてきました。
遺産分割協議は、遺言書がない場合に行うものであり、遺言書があれば遺言通りに財産を分けることが出来るので遺産分割協議は必要なくなります。
残された相続人のためにも、遺言書を準備しておくことをお勧めします。
さいごに
認知症と相続について解説させていただきました。
近年、医療の進歩により平均寿命が延び、配偶者が認知症の診断を受けているというケースは増えています。
お一人で悩まずに、ぜひ辻・本郷 税理士法人へご相談ください。
お問い合わせお待ちしております。