みなさんは相続手続きを行う中で「銀行の窓口」や「固定資産税納税通知書」を通して、代表相続人という言葉に出会ったことでしょう。
そして、
代表相続とは何をする人なのだろう?
代表相続人には何か特別な利益や役割があるの?
と疑問に思い、代表相続人という言葉を検索する中で本記事に出会われたことと思います。
代表相続人とは「相続手続きを行う上での相続人のリーダー」のことです。
何事でもそうですが、物事を進めるにあたって、誰かがリーダーとしてチームを引っ張っていく必要がありますよね。代表相続人は相続手続きを進めるにあたって、相続人を引っ張っていくリーダーなのです。
リーダーであるため、法律で定められた特別な役割や権限があるわけではありません。
相続人であれば誰でもなることができます。
しかし、なることができるからと言って、相続人であれば誰でもいいというものではありません。
代表相続人が何をする人であるのか理解した上で、相続人の中からしかるべき人を選出する必要があります。
本記事は相続税専門税理士監修のもと、以下について解説しています。
みなさんが代表相続人を決める上でのガイドと、本記事がなれば幸いです。
1.代表相続人とは、相続手続きにおける相続人のリーダーです
代表相続人とは、相続手続きにおける相続人のリーダーです。
役所や金融機関と相続手続きのやり取りをする際、相続人の窓口となります。
代表相続人は法律上、選出することが必須というものではありません。
また、法律で定められた役割や権限があるわけではありませんし、相続人であれば誰でもなることができます。
しかし、相続人が2人以上いる場合は、代表相続人を選出した方が、円滑に相続手続きを進めることができるでしょう。
1-1.代表相続人になったからと言って、遺産の相続分は増えない
代表相続人になったからと言って相続分は増えません。
代表相続人はあくまでも「相続手続き」におけるリーダーです。
そのため、代表相続人になったからといって、遺産の相続分には全く関係はありません。
代表相続人として他の相続人よりも多くの相続手続きを担ったからといって、遺産の相続分が増えるということも残念ながらありません。
ただし、相続人同士で相談し、代表相続人に対して何らかの報酬を提供したり、多めに財産を相続させたりすることは可能です。
2.相続手続きがスムーズに進む代表相続人の選び方
相続手続きがスムーズに進む代表相続人の選び方を紹介します。
代表相続人には相続人であれば誰でもなることができます。
しかし、相続人であれば誰でもいいというものではありません。
代表相続人が何をするのか理解した上で、相続人の中からしかるべき人を選出することで、相続手続きがスムーズに進むようになります。
※代表相続人は一人である必要はない
代表相続人は必ずしも一人である必要はありません。
- 長男は金融機関での預金の払い戻しを担当
- 長女は固定資産税納税通知書の受取を担当
- 次男は相続税申告を担当
といったように、相続手続きごとに代表相続人を分けることも可能です。
以下の前提条件と相続手続きごとの条件を満たす人を、代表相続人として選出しましょう。
適材適所の代表相続人を選出することが、相続手続きがスムーズに進む近道です。
2-1.前提条件
前提条件として、以下の3つが挙げられます。
どれも相続手続きを行うことを考えると、当たり前のような条件です。
しかし、当たり前であるからこそ、認識しておいて欲しいので記載します。
- 責任感のある人
- 高齢ではない人
- 相続放棄をしていない人
2-2.相続手続きごとの条件
相続手続きごとの要件は以下の表の通りです。
相続手続きごとに代表相続人を分けることも可能です。
以下の前提条件と相続手続きごとの条件を満たす人を、代表相続人として選出しましょう。
適材適所の代表相続人を選出することが、相続手続きがスムーズに進む近道です。
金融機関での預金の払い戻し | 平日の日中に金融機関の窓口に赴くことができる人 |
固定資産税納税通知書の受取 | 被相続人の固定資産税を一時的に立て替えることが可能な人 |
相続税申告 | 税理士・他の相続人と密に連絡が取れる人 |
不動産の名義変更 | 不動産の売却を検討している場合は、不動産の近くに住んでいる人 |
3.代表相続人が行う相続手続き
代表相続人が実際に行う相続手続きを解説します。
3-1.金融機関での預金の払い戻し
金融機関での預金の払い戻しは代表相続人が行う相続手続きです。
故人の預金の払い戻しは、原則として相続人全員で行います。
しかし、相続人全員が金融機関の窓口に赴いて手続きをすることは煩雑です。
そのため、実務においては、相続人の代表である代表相続人が
- 必要書類を取りまとめて、金融機関に提出する
- 故人の預貯金を一旦預かって、各相続人に分配する
という形式をとることで効率化をはかっています。
また、銀行で相続手続きを申し出ると「代表相続人を選出するように」と窓口の担当者から指示されることが多いようです。
3-2.固定資産税納税通知書の受取
固定資産税納税通知書の受取は代表相続人が行う相続手続きです。
固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に納税の義務があります。
被相続人が生前不動産を所有していた場合、その不動産の納税義務は被相続人の相続人に受け継がれます。
そこで、相続手続きの一環として、市区町村役場で代表者指定届を提出することで代表相続人を定め、その代表相続人に固定資産税の納税通知書が届くようにします。
ただし、代表相続人はあくまでも通知書を代表して受け取る人のことで、代表相続人のみが固定資産税等を負担する義務を負うわけではありません。
3-3.相続税申告
相続税申告は代表相続人が中心となって行う相続手続きです。
相続税申告とは、基礎控除額以上の遺産を相続した相続人が行う手続きのことで、一般的に相続税申告は、全相続人の連名で行います。
相続税申告の手続きを進めるにあたって、
- 税理士とやり取りをしたり
- 実際に税務署へ相続税申告書を提出し、納税する
などの行為は、相続人全員で行うのではなく、代表相続人を定めた方がスムーズに行うことができます。
■相続税申告に関する詳細はこちら
相続税申告の入門書|相続税申告の全体像を理解するための7ステップ
4.代表相続人に関するよくあるQ&A
代表相続人に関するよくあるQ&Aを解説します。
4-1.代表相続人は必ず決めないといけないのか。
代表相続人は必ず決める必要はありません。
しかし、実情を踏まえると相続人が2人以上いる場合は決めた方が良いでしょう。
代表相続人は法律で定められている肩書ではないので、必ず決める義務があるわけではありません。
しかし、相続人が2人以上いる場合は、金融機関や役所の窓口で代表相続人は誰かと聞かれ、書類に名前を記載することがあります。
相続が開始したら早い段階で、代表相続人を誰にするのか、相続人の間で話し合い、代表相続人を決めることをおすすめします。
4-2.相続人がみな高齢だ。相続人ではないが、代表相続人になることはできるのか。
相続人ではない人が、代表相続人になることはできません。
代表相続人は相続人の代表者です。
相続人ではない人が、代表相続人になることはできません。
例えば以下のような場合は、相続人ではない「相談者」が代表相続人になった方がスムーズに手続きは進むでしょう。
しかし、相談者は相続人ではないので、代表相続人になることはできません。
親であるBを代表相続人として、相談者はBをサポートするという形で相続手続きを進めるのが良いでしょう。
4-3.代表相続人が被相続人の預金の払い戻しをした後に、各相続人にその預金を分配しても贈与税はかからないのか。
贈与税はかかりません。
被相続人の預金が一旦、代表相続人の口座に入ったとは言え、その預金は代表相続人のものではありません。
代表相続人のものではないので、各相続人にその預金を分配しても贈与税はかかりません。
4-4.固定資産税の相続代表者指定届を提出しないとどうなるのか。
出さなくても手続き上問題はありませんが、相続代表者指定届を提出するようにと、市町村から案内が送られ続けます。
相続代表者指定届は速やかに提出することをおすすめします。
■相続代表者指定届に関する詳細はこちら
国立市HP 相続人代表者指定届
5.まとめ
代表相続とは何をする人なのだろう?
代表相続人には何か特別な利益や役割があるの?
と疑問に思われている方を対象に、代表相続人について網羅的に解説してきました。
本記事の大切なポイントを4点、最後にもう一度紹介します。
みなさんが代表相続人を決める上でのガイドと本記事がなれば幸いです。