「相続税申告を税理士に依頼した場合、費用はいくらぐらいなのだろう?」
「相続税申告の依頼を税理士に依頼したら、費用が60万円だった。これって割高?割安?」
この記事をご覧のみなさんは、こんなお悩みをお持ちなのではないでしょうか。
最初にお伝えさせていただきます。
相続税申告における税理士報酬の相場は「遺産総額の0.5~1.5%」です。
ただし!上記はあくまでも相場です。例えば
・自宅以外にも、多数の土地を所有している
・非上場株式を所有している
・相続税申告の期限が間近に迫っている
など、様々な要因で税理士報酬の額は前後します。
そこで、本記事は弊社が実際に担当した案件をもとに作成した12件の事例を紹介しながら、相続税申告における税理士報酬について解説しています。
この記事で紹介した情報が、相続税申告のお役に立つことを心から願っております。
目次
- 1.税理士報酬の相場は「遺産総額の0.5~1.5%」
- 2.税理士報酬の目安がわかる事例12選
- 【ケース1】主な遺産が「ご自宅(戸建て)・金融資産」のケース|約70万円
- 【ケース2】主な遺産が「ご自宅(マンション)・金融資産」のケース|約50万円
- 【ケース3】農地を多数所有しているケース|約50万円
- 【ケース4】山林を多数所有しているケース|約60万円
- 【ケース5】賃貸アパートを所有しているケース|約140万円
- 【ケース6】コインパーキングを所有しているケース|約120万円
- 【ケース7】多額の上場株式を所有しているケース|約170万円
- 【ケース8】相続人が多いケース|120万円
- 【ケース9】会社を経営しており非上場株式があるケース|約100万円
- 【ケース10】相続税申告の期限が迫っているケース|約100万円
- 【ケース11】遺産総額が3億円以上のケース|約500万円
- 【ケース12】海外に遺産があるケース|約170万円
- 3.税理士報酬に関するよくあるQ&A
- 4.まとめ
1.税理士報酬の相場は「遺産総額の0.5~1.5%」
相続税申告を税理士に依頼した場合、税理士報酬の相場は「遺産総額の0.5~1.5%」です。
平成14年3月までは税理士法で「税理士報酬規定」が定められていましたが、現在は廃止されており、各税理士事務所が自由に報酬を設定しています。つまり、各税理士事務所は独自の方法で税理士報酬を算出しているのです。
しかしいくら自由に設定できると言っても、そこには相場が存在します。その相場が「遺産総額の0.5~1.5%」なのです。
以下に遺産総額ごとの税理士報酬の相場を記載しました。ご自身の遺産総額の箇所を見ていただけると、税理士報酬の相場のイメージをお持ちいただけると思います。
1-1.遺産総額別の税理士報酬の目安表
遺産総額 | 税理士報酬 |
5,000万円 | 25-75万円 |
6,000万円 | 30-90万円 |
7,000万円 | 35-105万円 |
8,000万円 | 40-120万円 |
9,000万円 | 45-135万円 |
1億円 | 50-150万円 |
1億5,000万円 | 75-225万円 |
2億円 | 100-300万円 |
2億5,000万円 | 125-375万円 |
3億円 | 150-450万 |
1-2.【注意】「遺産総額の0.5~1.5%」はあくまでも”相場”
税理士報酬の相場は「遺産総額の0.5~1.5%」ですが、これは「あくまでも相場」です。
税理士報酬の額は
- 自宅以外にも土地を所有している
- 非上場株式を所有している
- 相続税申告の期限が間近に迫っている
など、様々な要因で前後します。
税理士報酬の額で後々トラブルにならないためにも、「税理士報酬の額がおおよそいくらになるか」を初回面談の時に必ず税理士に確認してください。
2.税理士報酬の目安がわかる事例12選
それでは、実際に相続税申告を税理士に依頼した人は、税理士報酬としていくら支払っているのでしょうか。
2章では税理士報酬の目安がわかる事例12選をご紹介いたします。ご自身と似た例を探してみてください。ざっくりとした費用イメージを持つことに役立ちます。
- 【ケース1】主な遺産が「ご自宅(戸建て)・金融資産のケース」|約70万円
- 【ケース2】主な遺産が「ご自宅(マンション)・金融資産」のケース|約50万円
- 【ケース3】農地を多数所有しているケース|約50万円
- 【ケース4】山林を多数所有しているケース|約60万円
- 【ケース5】賃貸アパートを所有しているケース|約140万円
- 【ケース6】コインパーキングを所有しているケース|約120万円
- 【ケース7】多額の上場株式を所有しているケース|約170万円
- 【ケース8】相続人が多いケース|120万円
- 【ケース9】会社を経営しており非上場株式があるケース|約100万円
- 【ケース10】相続税申告期限が迫っているケース|約100万円
- 【ケース11】遺産総額が3億円以上のケース|約500万円
- 【ケース12】海外に遺産があるケース|約170万円
※本章で紹介しているのは、あくまでも一例です。
特に土地の評価は、対象地がどこにあるか、大きさが何㎡かなどで相続税評価額が大きく異なります。条件が同じだからといって必ずしも同じ税理士報酬にはなりませんのでご注意ください。
あくまでも一つの目安としてご覧ください。
【ケース1】主な遺産が「ご自宅(戸建て)・金融資産」のケース|約70万円
主な遺産が「ご自宅(戸建て)」と「金融資産」のケースです。
このケースは三大都市圏近郊に住んでいらっしゃる会社勤めの方に多いケースです。
この場合の税理士報酬は約70万円でした。
相続人 | 配偶者・子供2人 |
主な財産の種類と相続税評価額 | 東京都23区にある自宅の土地・自宅の建物 3,000万円 預貯金3,000万円 投資信託1,000万円 |
相続税申告までの期限 | 8ヶ月程度 |
【ケース2】主な遺産が「ご自宅(マンション)・金融資産」のケース|約50万円
主な遺産が「ご自宅(マンション)」「金融資産」のケースです。
このケースもケース1と同様、三大都市圏近郊に住んでいらっしゃるサラリーマンの方に多いケースです。
なお、2024年1月よりマンションの相続税評価方法が変更になります。相続税評価額は従来より上がることが予想されるので、税理士報酬の額も上がる可能性がありますのでご注意ください。
この場合の税理士報酬は約50万円でした。
相続人 | 配偶者・子供1人 |
主な財産の種類と相続税評価額 | 東京都23区にあるマンションの一室 1,000万円 預貯金3,000万円 投資信託1,000万円 |
相続税申告までの期限 | 7ヶ月程度 |
【ケース3】農地を多数所有しているケース|約50万円
農地を多数所有しているケースです。
このケースは比較的田舎のエリアで農業に従事している方に多いケースです。
この場合の税理士報酬は約50万円でした。
相続人 | 配偶者・子供1人 |
主な財産の種類と相続税評価額 | 自宅の土地・建物 500万円 田んぼ10筆:100万円 畑 10筆:100万円 預貯金4,000万円 投資信託:5,000万円 |
相続税申告までの期限 | 8ヶ月程度 |
【ケース4】山林を多数所有しているケース|約60万円
山林を多数所有しているケースです。
このケースは比較的田舎のエリアに先祖代々住んでいらっしゃる方に多いケースです。
この場合の税理士報酬は約70万円でした。
相続人 | 子供1人 |
主な財産の種類と相続税評価額 | 自宅の土地・建物 500万円 田んぼ10筆 100万円 畑10筆 100万円 山林50筆 50万円 預貯金4,000万円 投資信託1,000万円 |
相続税申告までの期限 | 8ヶ月程度 |
【ケース5】賃貸アパートを所有しているケース|約140万円
ご自宅の他に賃貸アパートを所有しているケースです。
この場合の税理士報酬は約140万円でした。
相続人 | 配偶者・子供1人 |
主な財産の種類と相続税評価額 | 東京都23区にあるご自宅 3,000万円 関東近郊で経営している賃貸アパート1棟 3,000万円 預貯金4,000万円 投資信託2,000万円 上場株式2,000万円 |
相続税申告までの期限 | 8ヶ月程度 |
【ケース6】コインパーキングを所有しているケース|約120万円
ご自宅の他にコインパーキングを所有しているケースです。
この場合の税理士報酬は約120万円でした。
相続人 | 配偶者・子供1人 |
主な財産の種類と相続税評価額 | 東京都23区にあるご自宅 3,000万円 東京都23区で経営しているコインパーキング 1,500万円 預貯金4,000万円 投資信託2,500万円 |
相続税申告までの期限 | 8ヶ月程度 |
【ケース7】多額の上場株式を所有しているケース|約170万円
多額の上場株式を所有しているケースです。
資産家の中には、多額の上場株式などの金融資産を所有している方もいらっしゃいます。
この場合の税理士報酬は約170万円でした。
相続人 | 配偶者・子供1人 |
主な財産の種類と相続税評価額 | 東京都23区にあるご自宅 3,000万円 預貯金 2,000万円 上場株式 1億円 投資信託 5,000万円 |
相続税申告までの期限 | 6ヶ月程度 |
【ケース8】相続人が多いケース|120万円
相続人が多いケースです。
相続人が多いと被相続人が各相続人に生前に贈与していないかどうかを確認する等、財産を精査するのに手間がかかります。そのため税理士報酬も高額になるケースが多いでしょう。
また「相続人が一人増えるごとに、二人目から基本報酬の10~15%を加算する」とHPに記載している税理士法人もあります。
相続人が多い場合の代表的なケースは、以下のように代襲相続が起こっている場合です。この場合、相続人となるのは緑の〇がついている6人です。
この場合の税理士報酬は約120万円でした。
相続人 | 配偶者・長男・長女・亡き次男の子3人 |
主な財産の種類と相続税評価額 | 東京都23区にあるご自宅 3,000万円 預貯金 5,000万円 投資信託 2,000万円 |
相続税申告までの期限 | 8ヶ月程度 |
【ケース9】会社を経営しており非上場株式があるケース|約100万円
会社を経営しており非上場株式があるケースです。
非上場会社のオーナーに相続が発生した場合が該当します。
非上場株式の評価には会社の形態によって様々なパターンがあり、その企業の総資産・利益・負債・株式の配当金額など様々な要素を考慮して評価する必要があります。通常の相続税申告業務に加えて、この非上場株式の評価を行う必要があるため、税理士報酬は高くなることが多いでしょう。
中には非上場株式の評価を「1社につき15万円」というように、具体的な数字をHPに掲載している税理士法人もあります。
この場合の税理士報酬は約100万円でした。
相続人 | 配偶者・子供2人 |
主な財産の種類と相続税評価額 | 東京都23区にあるご自宅 3,000万円 非上場株式 3,000万円 預貯金 2,000万円 |
相続税申告までの期限 | 8ヶ月程度 |
【ケース10】相続税申告の期限が迫っているケース|約100万円
相続税申告期限が迫っているケースです。
税理士法人によって基準は異なりますが申告期限まで3ヶ月を切つている場合は該当する可能性が高いです。
この場合は税理士報酬は申告期限に余裕がある場合に比べて高くなります。「報酬総額の20~50%加算」というように、具体的な数字をHPに掲載している税理士法人もあります。
相続税を支払う義務がある方(相続した財産が基礎控除を超えている方)は、相続開始から10ヶ月以内に相続税申告をしないと、ペナルティ(加算税等)がかかります。そのため申告期限内に相続税申告書を作成し申告を行うことが非常に重要です。そのため、申告期限が迫っており、すべての準備が間に合わない場合は、以下の2つのような対処法を取ります。
- 申告期限内に概算申告で税額を概算の金額で支払っておく
- 「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出し、未分割申告を行う
いずれの対処方法をとるにしても、一般的な相続税申告業務に比べて、非常に手間がかかるため、税理士報酬は高くなります。
この場合の税理士報酬は約100万円でした。
相続人 | 配偶者・子供2人 |
主な財産の種類と相続税評価額 | 東京都23区にある自宅の土地・自宅の建物 3,000万円 預貯金 2,000万円 投資信託 1,000万円 生命保険の死亡保険金 500万円 |
相続税申告までの期限 | 2ヶ月 |
【ケース11】遺産総額が3億円以上のケース|約500万円
遺産総額が3億円以上のケースです。
同じ3億円であっても、財産の内容次第が預貯金が多いのか、土地が多いのかで税理士報酬に差がでることがあります。また、生前に多数の親族へ贈与を行っていた場合は、追加報酬が発生することもあるようです。
以下の場合では、税理士報酬は約500万円でした。
相続人 | 配偶者・子供2人 |
主な財産の種類と相続税評価額 | 三大都市圏の駅前の宅地50個 3億円 預貯金 1億円 上場株式 5,000万円 投資信託 5,000万円 |
相続税申告までの期限 | 8ヶ月程度 |
【ケース12】海外に遺産があるケース|約170万円
海外に遺産があるケースです。
資産家の中には海外投資を行い、国外財産を所有している方もいらっしゃいます。この場合、以下に挙げたような様々な事情を勘案して相続税申告を行う必要があるため、税理士報酬は高くなります。
- 被相続人と相続人の国籍・日本の居住実績に応じて、日本の相続税の課税対象かどうかを判断
- 海外でも相続税に相当する税が課税された場合は、日本で計算した相続税額から海外で課税された当該税額を控除する外国税額控除の適用を検討
- 海外に不動産を所有している場合は、日本の財産評価基本通達に基づく評価方法では評価できないため、専門家に依頼して、現地の不動産の時価を算定する
- 税務署からの要請等により、英文資料を翻訳して申告する必要がある場合
「基本報酬に20~50%を加算した額」といったように、具体的な数字をHPに掲載している税理士法人も多くあります。
以下の場合では、税理士報酬は約170万円でした。
相続人 | 配偶者・子供2人 |
主な財産の種類と相続税評価額 | 東京都23区にある自宅の土地・自宅の建物 3,000万円 海外にある別荘 3,000万円 預貯金 4,000万円 投資信託 3,000万円 生命保険の死亡保険金 500万円 |
相続税申告までの期限 | 7ヶ月 |
3.税理士報酬に関するよくあるQ&A
相続税申告における税理士報酬に関するよくあるQ&Aを紹介いたします。
3-1.税理士報酬は相続財産から控除できるのか
控除できません。
相続財産から控除できるのは相続開始時に債務の確定している金額です。(※葬式費用は除きます。)
税理士報酬は相続発生後に確定する金額のため、控除の対象外です。
3-2.税理士報酬を支払うタイミングはいつなのか
相続税申告の前後に支払うことが一般的です。
また、前金が必要な事務所もありますのでご注意ください。
税理士報酬を支払うタイミングは税理士から初回面談時に説明することが一般的ですが、万が一説明がなかった場合は必ず確認するようにしましょう。
3-3.税理士報酬は誰が支払うのか
基本的には誰が払っても構いません。
税理士報酬は、法律等で「〇〇が負担すること」などとは定められていません。相続人のうち誰か1人が全額負担してもよいですし、相続人全員で按分することもできます。
ただし、明らかに子供が税理士報酬を支払うべき義務があるケースで、親が税理士報酬を支払うなどすると、贈与となり贈与税の対象となる可能性もあるので注意が必要です。
3-4.途中で税理士を解約した場合、税理士報酬を支払う必要はあるのか
最初に結んだ契約書の内容にもよりますが、税理士が行った作業に対する報酬や手数料は支払う必要があるでしょう。
税理士に依頼して相続税申告を進めていたが、税理士と反りが合わずに解約を検討することもあるでしょう。その場合は、原則的には解約することはできますが、税理士が行った作業に対する報酬や手数料は支払う必要があるでしょう。
税理士の解約を検討されている方は、まずは契約書を確認し、契約内容を確認しましょう。
3-5.基礎控除ギリギリの遺産総額だが、万が一相続税が発生しなかった場合、税理士報酬は支払うのか
税理士報酬は発生します。
なぜなら、税理士が相続財産を評価し、被相続人が各相続人に生前贈与されていないかなどを確認して、初めて、基礎控除の範囲に収まるかどうかが分かるからです。
基礎控除を超えるかどうか微妙な場合は、アポイントや初回面談など早めの段階でその旨を伝え、税理士報酬についてクリアにしてから、依頼するかどうか決めるようにしましょう。
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
相続税申告における税理士報酬の相場をご理解いただけましたか。また、ケーススタディの中からご自分に似ているケースを探し、ざっくりとした費用イメージをお持ちいただけましたでしょうか。
税理士報酬は数十万~数百万円と、決して安い金額ではなりません。「自分で相続税申告を行った方が得ではないか?」と思われる方もいらっしゃると思います。しかし、たとえ遺産総額の1%を税理士報酬で支払ったとしても、最終的に相続税申告にかかるトータルのお金は、税理士に依頼した方が安くなる可能性もあります。
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相続税申告を行う際は、税理士に依頼することをご検討いただけると幸いです