宝くじ当せん金は相続税の課税対象|生前にできる相続税対策も紹介

「宝くじの当せん金を生前に使いきれそうもない…。家族に遺した場合は相続税の対象なの?」
「宝くじの当せん金に対しては所得税や住民税はかからないと聞いた。相続税もかからないの?」

この記事をご覧のみなさんは、上記のような「相続税法における宝くじの当せん金の取り扱い」に悩んでいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では宝くじに当せんした方が、その当せん金を使い切らずに亡くなった場合、「相続税は課税されるのか」「されるとしたら、どのように財産評価を行うのか」について、相続専門税理士が解説しています。また、宝くじ当せん金における相続税対策についても、ご紹介しております。

宝くじの当せん金がお手元にあり、相続税について不安や疑問をお持ちの方は必見です。


1.宝くじの当せん金は相続税の課税対象

生前に使いきれずに残った宝くじの当せん金は相続税の課税対象です。

当せん金をもらった人が生前に当せん金を使い果たさずに亡くなった場合は、当せん金は資産となり、他の資産と合わせて相続税が課税されます。

「宝くじの当せん金は所得税・住民税が非課税なので、相続税もかからないのでは?」と考える方もいらっしゃると思いますが、残念ながら相続税の課税対象です。

なぜなら、相続税は「被相続人の所有していた全ての財産に課せられる税金」だからです。相続税法第2条「相続税の課税財産の範囲」には以下のように記載されています。

第一条の三第一項第一号又は第二号の規定に該当する者については、その者が相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し、相続税を課する。

相続税法に記載されていることから明らかな通り、宝くじの当せん金については相続税の課税対象です。

1-1.(補足)宝くじの当せん金は所得税が非課税

宝くじの当せん金は所得税が非課税です。

宝くじのルールを定める「当せん金付証票法」の13条には当せん金にかかる税金について、以下のように記載されています。

第十三条 当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない。

宝くじのルールを定める当せん金付証票法に記載されていることから、宝くじの当せん金については所得税が非課税であることは明らかだと思います。

1-2.(補足)宝くじの当せん金は住民税が非課税

宝くじの当せん金は住民税が非課税です。

なぜなら、住民税は今年(1月1日から12月31日)の所得に対して、翌年にかかってくる税金だからです。

そもそも宝くじの当せん金は所得として扱わないので、住民税は非課税になります。

1-3.(補足)宝くじの当せん金を分配した場合は贈与税の課税対象

宝くじの当せん金を分配した場合、基礎控除額を超える分は贈与税の課税対象です。

宝くじの当せん金を両親や子どもに贈与して、基礎控除額を超えた場合は、一般の場合と同様に贈与税が課税されます。

「両親の住む実家をリフォームしよう」「子どもに車を買ってあげよう」というふうに、当せん金を家族のために使おうとするのは自然なことですが、基礎控除額を超えた場合は贈与税が課税されます。ご注意ください。

1-4.(補足)宝くじの共同購入をした場合の当せん金の受取に注意

家族やお友達とお金を出し合って宝くじを共同購入される場合もあるでしょう。 その宝くじが高額当せんした場合、共同購入者の代表が受け取ってしまうと、他の共同購入者に分配するときに贈与税が課されてしまいます。

贈与税が課されないためには、
1. 当せんした場合に全員で受け取ることのできる購入方法で購入する。
2. 当せんした場合は、全員で受け取りに行く。
のがよいでしょう。

宝くじ公式サイト ネット購入共同購入とは


2.相続開始日に残っていた金額を「預貯金または現金」として相続税評価する

宝くじの当せん金は相続税開始日に残っていた金額を「預貯金または現金」として相続税評価します。

宝くじの当せん金独自の評価方法というものはありません。宝くじの当せん金は、他の預貯金・現金と合わせて評価します。

  • 銀行に預貯金として預けている場合
    銀行から相続開始日の残高証明書を取得し、その金額を相続税評価額とします。
    (残高証明書の取得方法はこちらをご覧ください。)
  • 家のタンスや金庫に現金として保管している場合
    タンス預金や金庫の現金も含め、手元にある現金の額を相続税評価額とします。
    (タンス預金などの現金の取り扱いについては、こちらをご覧ください。)
  • 当せん金で車などの高額な資産を購入していた場合
    その資産を相続財産として計上することになります。

3.宝くじの当せん金における相続対策

次に宝くじにおける当せん金の相続税対策を4つお伝えします。

3-1.当せん金でお墓などの非課税財産を購入する

当せん金でお墓などの非課税財産を購入することで、相続税を軽減することができます。

相続税には非課税財産という、相続税が課税されない財産があります。具体的には墓地や墓石・仏壇・仏具などです。

国税庁HPタックスアンサー(よくある税の質問)
(No.4108 相続税がかからない財産)

相続税がかからない財産のうち主なものは次のとおりです。

1 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物

ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。

相続税は遺産総額から基礎控除額を差し引いた課税遺産総額に税率をかけて計算します。当せん金を利用して生前にお墓などの祭祀財産を購入することで、その値段分だけ遺産総額を低くすることができるので、自然と相続税額を下げることができます。

3-2.生命保険に加入し、保険料を一括で支払う

生命保険に加入し、保険料を一括で支払うことで、相続税を軽減することができます。

相続税において生命保険金は「500万円×法定相続人の数」が非課税となります。

生前に生命保険に加入し保険料を一括で支払うことによって、遺産総額を減らすことができます。さらに、死後生命保険金が出たとしても、生命保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があるため、相続税が軽減されます。

なお、相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません。そのため、受取人には相続人になるであろう人を指定するのが節税の点からはよいでしょう。

3-3.贈与税の基礎控除額の範囲内で、生前に贈与する

贈与税の基礎控除額の範囲内で、生前に贈与することで、相続税を軽減することができます

贈与税には年間110万円の基礎控除額があります。つまり、年間110万円までであれば、贈与を行ったとしても贈与税は課税されないということです。

この基礎控除を利用して、宝くじの当せん金を毎年110万円以内で贈与することで、相続の時に残る遺産総額を減らすことができるので、相続税を軽減することができます。

3-4.贈与税の非課税措置を活用する

非課税措置を利用することで、相続税を軽減することができます。

贈与税には父母・祖父母などの直系尊属が、子供や孫に住宅の購入や、結婚、子育て、教育費など一定の使い道で贈与する場合、贈与税の非課税措置があります。

この非課税措置を活用して、宝くじの当せん金を贈与することで、相続の時に残せる遺産総額を減らすことができるので、相続税を軽減することができます。

以下に贈与税の非課税措置の簡単な一覧表を作成したのでご覧ください。なお、この非課税措置を利用するには、所得金額の制限等さらに細かい条件があり、かなり複雑です。利用を検討する際は相続税専門税理士に相談することをおすすめします。

住宅取得等資金結婚・子育て資金教育資金
贈与者父母・祖父母などの直系尊属
受贈者18歳以上の子・孫など18歳以上50歳未満の子・孫など30歳未満の子・孫など
限度額省エネ住宅など1,000万円
上記以外:500万円
1,000万円
結婚に際して支払う金額は300万円が限度 ※1
1,500万円
使い道居住用の家屋や敷地の
購入資金
増改築の費用
結婚に際しての費用
(300万円が限度)
例)結婚式の費用
新居の費用
引っ越し費用
子供の保育料など ※2
学校の入学金
授業料
学用品の購入費など
習い事の費用

※1受贈者が使い切る前に贈与者が亡くなった場合など、相続税の対象となる場合もあります。
個別具体的な内容は相続専門税理士にお尋ねください。
※2 国税庁 父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし


4.まとめ

いかがでしたでしょうか。

生前に使いきれずに残った宝くじの当せん金には相続税がかかります。

生前に宝くじの当せん金を使いきれそうもない方は、3章でご紹介した相続税対策を行うとよいでしょう。ただし、生前対策は正しく行わないと節税対策にならなかったり、後々「無申告」と判断され税務調査になるリスクもあります。相続税の生前対策をお考えの際は、相続税専門税理士に相談することをおすすめします。

辻・本郷 税理士法人の相続税申告サービス
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