昨今、少子化が進み、独居者が増加しています。亡くなった方に相続人がおらず、さらに遺言書も作成されていない場合が今後増えるものと思われます。
こうしたケースでは、生前に療養看護等のお世話をされた方などが特別縁故者となって相続財産を受け取ることができます。
今回は日頃あまり聞くことのない、特別縁故者制度について解説致します。
目次
特別縁故者にはどんな人がなれるのか
特別縁故者になるには、以下いずれかの条件にあてはまる場合に限ります(民法第958条の3)。
- 被相続人と生計を同じとしていた者
- 被相続人の療養看護に努めた者
- その他被相続人と特別の縁故があった者
誰も相続人がいないと、財産が国のものになる
被相続人になる立場としても、自分自身と一緒に住んでいた方や生前お世話になった方に遺産を渡したいという気持ちがあるのが当然のことでしょう。
そのうえ、相続人がいない場合には財産が国庫に入る、つまり国のものになります。
特別縁故者になりえる立場の方にとっても、「法定相続人がいないから」であるとか、「遺言書が作られていないから」との理由だけで、取得できる可能性がある財産がすべて国庫に取られてしまうのでは、納得できないことでしょう。
次に、特別縁故者に相続財産を分ける場合の手続きをご案内します。
特別縁故者が財産分与を受けるには?
特別縁故者として扱われるには、家庭裁判所への申立てが必要です。どんな流れで手続きを進めることになるのでしょうか。
相続人が明らかでないときの相続財産は「法人(相続財産法人)」となり、被相続人との利害関係者(親族、葬式費用等を立替えた方、債権者など)や検察官の請求によって、家庭裁判所が相続財産の管理人を選任することになります。
選任された管理人は相続人を捜索するとともに、相続債権者からの請求による清算等を一定期間実施した上で、残余財産がある場合には特別縁故者の申し出によって、財産の全部または一部を渡すことになります。
そして特別縁故者は、相続人の捜索の公告期間満了後の3か月以内に家庭裁判所へ「特別縁故者に対する財産分与の申し出」を行い、家庭裁判所から財産分与を受けて、財産を取得することになります。
相続税の申告手続きが必要な場合もある
特別縁故者が相続財産法人から財産の分与を受けた場合、その財産は被相続人から「遺贈」によって取得したものとみなされます。
相続財産については、法定相続人がいないので基礎控除の3,000万円を超えると相続税の申告・納税の手続きが必要です。
法定相続人の場合は以下の式によって基礎控除を求めることができますが、「法定相続人の数 × 600万円」が適用されません。また、相続税が2割増しとなります。
相続税の基礎控除の額 = 3000万円 +(法定相続人の数 × 600万円)
特別縁故者の場合、相続税の納付申告期限や財産評価の時点が通常と異なる
相続税の課税は、相続開始(被相続人が亡くなった時)の年分として扱われることとなるため、相続開始時の税制が適用されることになります。
一方で、申告にあたって評価を行う土地・建物・上場株式などの相続財産については、分与が確定した時点での評価額によって算定をします。
この分与を知った日の翌日から10か月以内に申告と納税を行うことになります。
おわりに
特別縁故者という、一般的にはあまり知られていない制度についてご案内しました。
この制度は「情けは人のため成らず」、身寄りのない高齢者に対して支援や介護等を行う親切な援助者が報われる話に繋がっていきます。
ご自身が特別縁故者にあたると思われるものの、どうしたらよいかとお困りの際には辻・本郷 相談センターまでお気軽にお問い合わせください。
その他、相続税や贈与税についてもご相談を承っております。