先祖代々所有している土地や地方の山林などが、登記簿上に記載されている面積と実際の面積とが異なる場合があります。このような状況を専門用語で縄伸び(縄縮み)と言います。
今回は縄伸び(縄縮み)について、なぜ違いが起こるのか、相続した際の計算・申告方法についてご紹介いたします。
目次
縄伸び・縄縮みが起きる背景
まずは土地の縄伸び(縄縮み)がどうして発生するのかを簡単に説明しましょう。
「公的機関が管理している登記簿謄本の面積が間違っているはずはないじゃないか」と思われる方も多いのではないでしょうか。
実際には、先祖代々所有している土地や山林については、面積が違う事が往々にしてあります。それはなぜでしょうか。
答えは明治時代の地租改正にあり
答えは簡単です。現在の登記簿上の面積は、明治時代に行われた地租改正事業の時に測量したものがそのまま引き継がれており、その当時の測量技術が未熟だったことが原因の一つです。
また、税の軽減を図るために意図的に実際の面積よりも小さく測ったり、売買の際に高く売るために実際の面積よりも大きく見せたりしたともいわれています。
そうした歴史が、現在まで縄伸び(縄縮み)という形で残っているのです。
現在では、このような状況を是正するために昭和26(1951)年から市町村が主体となって地籍調査をしています。ただ、調査開始から60年以上経過していますが、全国での進捗率が52%となっているのが現状です。
縄伸びしている土地を相続したときの相続税申告はどうなるの?
相続税の申告上、土地の評価をする際に重要となる土地の面積については、登記簿上の面積ではなく実際の面積により評価することとなっています。
相続税評価額の計算にあたっては、必ず測量をするの?
しかし、相続税評価額を計算するうえで必ず測量をしなければならないのかというと、国税庁の質疑応答事例によれば、実測は一定の場合に行うこととされています。
実務上では、特に縄伸びが多い山林等については、以下の方法によって実際地積を把握することとしています。
- 立木に関する実地調査の実施
- 航空写真による地積の測定
- その地域における平均的な縄延割合の適用
……など
これらの方法によっても把握ができないもので、市町村で管理されている固定資産課税台帳に記された地積(台帳地積)に基づいた場合に、他の土地との評価のバランスを著しく失なうと認められるものについては、実測を行うこととなります。
申告前に事前の測量をしたほうがよいケース
前項とは逆に、申告前に事前の測量をしたほうがよいケースをご紹介します。
例えば、相続した後すぐに売却が決まっているような土地については、売却時に測量をしますので実際の面積が明らかになります。
この場合、申告書を出した後で縄伸びが判明した時には修正申告が必要になります。縄縮み等により評価額が下がる場合には、更正の請求(税金の還付請求)を行います。
また、公図や航空写真から隣接する土地との比較をして明らかに縄伸びしていることが分かる場合にも、土地家屋調査士等の専門家に相談して求積図等を作成し、より実測に近い形で評価して申告しておくと良いでしょう。
縄伸び判明後に地積更正登記を行ったら、翌年以降の固定資産税の増額に注意
相続した土地をそのままの状態にしているのではなく、何らかの事情で分筆をする事もあるかと思います。
その場合には分筆した部分だけではなく、元の土地全体を確定測量することが必要です。
土地家屋調査士へ確定測量を依頼して、登記簿上の面積と測量した面積が異なる場合には、管轄の法務局へ「地積更正登記」を行いましょう。
地積更正登記を行うことで固定資産税の課税台帳も修正されますので、その結果、縄伸びしている場合には、翌年以降の固定資産税がその分増加します。
このため、役所から固定資産税の納税通知書が届いて金額を見たらビックリ!なんてこともあります。納税通知書が届いてから慌てないためにも、固定資産税がどのくらい増えるのかを管轄の役所に確認しておくと良いでしょう。
おわりに
相続した土地が縄伸び、あるいは縄縮みしていることが分かったけれど、どうしらたらよいかわからない、などお困りの際には、辻????・本郷 相続センターまでお気軽にお問い合わせください。
また、求積図等を作成できる土地家屋調査士のご紹介など、問題解決にむけてお力になります。