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老人ホームに入所していた場合でも小規模宅地等の特例が使える4つの例

公開日:2023.04.18
財産評価
老人ホームに入所していた場合でも小規模宅地等の特例が使える4つの例

相続税において財産評価額を減額する「小規模宅地等の特例」。
とてもよく知られている特例ですが、使うためには、色々と複雑な条件を理解しなければならなりません。

この特例の条件のうちに「亡くなる直前に被相続人等が住んでいたこと」がありますが、近年はご自宅で亡くなる以外にも、病院、そして介護施設で亡くなる例が多くあります。

今回は、老人ホームに入所していても小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)が使える例・使えない例を確認しましょう。

京都事務所

まずは「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」をおさらい

亡くなられた方(以下、被相続人と言います)の自宅の土地は、相続される方にとっても生活に必要不可欠な財産です。そのため、住居を失わないよう税制上の優遇措置が設けられています。

具体的には、一定の条件を満たせば、自宅の土地330m2までの評価額を80%減額することができます

条件

その1に加えて、その2の①~③いずれかに該当することが必要です。

  • その1:
    亡くなる直前に被相続人等が住んでいたこと
  • その2:
    ①配偶者が取得したこと
    ②被相続人と同居の親族が取得し、引き続き居住していること
    ③被相続人と別居の親族で 、以下の条件にあてはまる相続人が取得したこと

    • 被相続人(亡くなった方)に配偶者がいないこと
    • 相続開始の直前において被相続人と同居していた法定相続人がいないこと
    • その宅地を相続した相続人が、相続の開始3年前までに「自己または自己の配偶者」「自己の3親等内親族」「特別な関係にある法人」が所有する家屋に住んだことがないこと
    • 相続開始時において居住している家屋を過去に所有したことがないこと
    • 相続税の申告期限までその相続した宅地を所有していること

なお、③の条件にあてはまる方を、税理士業界では「家なき子」と呼んでいます。
過去の相続税コラムでは、家なき子にあたる方が小規模宅地等の特例を使用できるケースをご紹介していますので参考になさってください。

計算例

相続人:子1人
被相続人の自宅の土地 評価額:1億円
被相続人の自宅の建物 評価額:1千万円
自宅の土地面積:300m2

項目特例の適用なし特例の適用あり
財産評価額110,000,000110,000,000
小規模宅地等の減額0▲ 80,000,000
基礎控除額▲ 36,000,000▲ 36,000,000
課税価格74,000,0000
相続税額15,200,0000

計算例のように、小規模宅地等の特例を適用すると土地の評価額が最大80%減額されます。
条件にあてはまるなら、使わないと損ですね。

さて、老人ホームに入所していた場合でも特例を使用することはできるのでしょうか。

老人ホームに入所していた場合も小規模宅地等の特例が使える?

ここまでご紹介したとおり、この特例は「亡くなる直前において、被相続人等が住んでいたこと」が条件とされています。
ただ、近年は老人ホームで最期を迎えられる方が増えていますので、このような場合でも特例が使えるのかどうか気になります。

結論からお伝えすると、被相続人が老人ホームに入所されていても、一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例が使えます。それでは、具体的な事例をいくつか見てみましょう。

被相続人についての条件

  • 被相続人が要介護認定または要支援認定を受けていること
  • 被相続人が老人福祉法等に規定する老人ホーム等に入所していたこと

亡くなる直前の自宅の利用状況

小規模宅地等の特例が使える場合4例

①従前、自宅に夫婦で居住しており、被相続人が老人ホームに入所。配偶者は引き続き居住。
配偶者が住居を相続する場合、小規模宅地等の特例が使えます。

小規模宅地等の特例が使える場合-1

②老人ホームに夫婦で入所後、自宅が空き家となった。
配偶者が空き家を相続する場合に、小規模宅地等の特例が使えます。

小規模宅地等の特例が使える場合-2

③被相続人が老人ホームに入所後、同居していた親族が引き続き居住。
同居親族が相続する場合に、小規模宅地等の特例が使えます。

小規模宅地等の特例が使える場合-3

④被相続人が老人ホームに入所後、自宅が空き家となった。
別居親族の「家なき子」が相続する場合に、小規模宅地等の特例が使えます。

小規模宅地等の特例が使える場合-4

小規模宅地等の特例が使えない例

被相続人が老人ホームに入所後、生計を別にしていた親族が新たに居住を開始した場合、小規模宅地等の特例は使えません。

小規模宅地等の特例が使える場合-5

特定居住用宅地等としては使えないが、貸付事業用宅地として使える例

被相続人が老人ホームに入所後、自宅を賃貸した場合、特定居住用宅地等としての小規模宅地等の特例は使えませんが、貸付事業用宅地としての小規模宅地等の特例を使うことができます
貸付事業用宅地等の場合、土地200m2までの評価額を50%減額することができます。
※3年以上貸付けていることが条件となります

小規模宅地等の特例が使える場合-6

老人ホームに入所していた場合の申告書添付書類

老人ホームに入所していた場合、この特例の適用を受けるためには、小規模宅地等の特例適用の添付書類に加えて、次の書類を申告書に添付して提出する必要があります。

  • ①亡くなられた日以後に作成された被相続人の戸籍の附票の写し
  • ②介護保険の被保険者証の写し、障害福祉サービス受給者証の写しなど、要介護認定等を受けていたことを明らかにする書類
  • ③施設等の入所契約書など、名称、所在地等の施設内容が記載された書類

病気治療のために入院していた場合はどうなる?

老人ホームへの入所ではなく、病気治療のために入院して自宅が空き家になっていた場合はどうでしょうか?
この場合も、小規模宅地等の特例が使えます

居住用の宅地であるかどうかは、被相続人の日常生活の状況など、生活の拠点がどこにあったかで判定します。
病気治療のための入院であれば、生活の拠点は自宅にあったと考えられるので、小規模宅地等の適用要件を満たします。

おわりに

被相続人の方が老人ホームに入所していたケースで、小規模宅地等の特例が使える場合・使えない場合をご紹介しました。

この特例は、適用要件が毎年のように細かく改正されています。適用要件を満たしているかどうか判断を読み誤ると、税額に大きく影響してしまいます。

ご自宅の相続について不安のある方や、この特例について個別のケースを専門家に相談したいと感じたら、辻・本郷 相続センターまでお気軽にお問い合わせください。

老人ホームに入所していた場合でも小規模宅地等の特例が使えるケースとは

山口 拓也

この動画のポイント

  • 小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)とは?
  • 特例が使えるための条件
  • 特例が使える場合の4例

動画時間: 6分38秒

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