相続財産に「田」や「畑」といった農地がある場合、相続税の計算にとても大きな落とし穴があることをご存じですか?
農地を所有している方、相続する(される)前に注意点を確認しておくことをおすすめします。
目次
農地を相続するときの落とし穴
落とし穴① 固定資産税評価額は低いのに、相続税評価額だと高くなることがある。
落とし穴② 農地評価の減額要素の適用が漏れており、相続税を過大に納付していた。
なぜこのようなことがおきるのでしょうか。見ていきましょう。
固定資産税と相続税との評価金額には大きな差がある!
毎年4月~5月頃に自宅に郵送されてくる固定資産税の納税通知書には、所有する不動産の評価額等が記載されています。
「田」や「畑」を所有されている方は、田や畑の評価額を確認してみましょう。おそらく「宅地」に比べて、大幅に低い金額になっていると思います。
固定資産税の納税通知所の記載例
宅地(自宅) | 200m² | 評価額 | 20,000,000円 |
---|---|---|---|
畑 | 1,000m² | 評価額 | 250,000円 |
ここに1つ目の落とし穴です。
もしこの畑が住宅地の中にあり、自宅のすぐ隣の土地であった場合でも、この低い固定資産税評価額をベースに相続税を計算してよいでしょうか。残念ながら、多くのケースではそうはなりません。
市街地にある農地は宅地に準じた相続税評価額になることが多く、固定資産税評価額を基準に相続財産や相続税を予測していると、想定外の税負担に驚くことがあります。
上記のケースの相続税評価額の例
宅地(自宅) | 200m² | 評価額 | 22,000,000円 |
---|---|---|---|
畑 | 1,000m² | 評価額 | 100,000,000円 |
市街地農地については、固定資産税評価額と相続税評価額に大きな差が生じる可能性があることを意識しておきましょう。
※市街地区域内にある農地や、農地法上で転用許可を得ている農地、転用許可が不要な農地のことを指します。
固定資産税評価額……固定資産税等を決める際の基準となる評価額で、所有している土地がある市区町村が算出する土地や家屋の価格のことです。固定資産税評価額×1.4%が固定資産税となります。
相続税評価額……相続税を計算するための評価額のことで、土地の場合は路線価が基準となります。
農地には評価減のための多くの要素がある!
続いては2つ目の落とし穴です。実際に相続税を納付済みの方もご注意ください。
農地を宅地に準じて評価することになるとしても、農地には多くの減額要素があり、その要素を漏れなく適用することで評価額を低くすることが可能です。
※農地は、農地法などにより宅地への転用が制限されています。都市計画などにより地価事情も異なりますので、これらを考慮して評価します。
検討すべき要素としては以下のようなものがあります。
宅地造成費の控除
農地の場合、宅地であるとした場合の価額から、宅地造成費を控除して評価することができます。1m²あたりの宅地造成費の金額については年ごとに各国税局が定めており、国税庁のウェブサイトで確認することができます。
市街地周辺農地の評価減
市街地周辺農地に該当する場合には、評価倍率表に「周比準」 と記載されています。該当する場合、市街地農地として評価した場合の価額の100分の80に相当する金額によって評価できます。
地積規模の大きな宅地の評価減
三大都市圏であれば500m²以上、三大都市圏以外の地域に所在する場合は1,000m²以上の地積を有する宅地の場合、一定の要件を満たせば評価減が可能です。「宅地」ではない「田」や「畑」であっても、宅地に準じた評価を行う市街地農地や市街地周辺農地であれば適用可能です。
貸し付けられている農地の評価減
耕作権、永小作権、賃貸借により貸し付けられている土地などについては、それぞれの貸し付けられている権利の内容によって評価減ができる場合があります。小作人に田畑を貸しているような状況がある場合は必ず検討しましょう。農業委員会に確認することで契約の内容を把握することができます。
生産緑地の評価減
生産緑地に指定されている農地の場合も一定の評価減が可能です。生産緑地に指定されているかどうかは役所等で調べる必要があります。
宅地造成費……宅地以外の土地を宅地にする目的で土地を整えるための費用で、整地費、伐採・伐根費、地盤改良費、土盛費、土留費、傾斜度に係る造成費といった費目があります。
耕作権(小作権)……小作料を支払うことで、他人の農地を耕作または牧畜する権利のことです。
生産緑地……市街化区域内にある農地等のうち、生産緑地法の規定により指定された土地のことで、市街地の環境確保のために定められた制度です。
相続発生前なら相続税の試算を!
所有不動産に農地が多い場合、固定資産税評価額だけでご自身の相続財産や相続税を予測すると、実際の評価と大きな差が生じてしまうリスクがあります。
相続対策のためにも、ある程度精度の高い相続財産の概算評価と相続税の試算を行うことをおすすめします。
相続税申告後5年以内なら、相続税の還付の可能性も!
農地については、相続税の計算において上記のような減額要素が見過ごされているケースが意外と多いです。すでに相続税を申告済みの場合でも、もう一度申告書の評価内容を見直してみてはいかがでしょうか。
相続税を納税済みでも、法定申告期限から5年以内であれば評価額を減額し、更正の請求により相続税が還付される可能性もあります。