相続税を計算する場合、被相続人の不動産、株式、預貯金等の財産は課税の対象になることは理解できますが、自宅の庭は価値がないから相続税課税対象の財産にならないと思われる方が多いようです。
今回は「庭の相続税」について説明いたします。
相続財産の価額とは
相続税の課税対象となる財産は相続開始時点の現況に応じて、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額で評価することになります。
土地は路線価等による評価、預貯金は通帳や残高証明書により金額を確認できますが、価額がわからない我が家の庭の場合はどうすればよいでしょうか。
庭の価値観
被相続人(または先代)が購入した庭の植木や庭石について、興味がない家族にとって日々の草取りや落ち葉掃除、庭師の剪定(せんてい)費用の負担のため、管理するのが大変だからという理由で、相続後は庭をつぶして駐車場か家庭菜園にしたい方もおられるでしょう。
しかし、石灯籠、沓脱石(くつぬぎいし)、飛び石等の庭石や、五葉松、槙(まき)、躑躅(つつじ)等の植木の購入価額を調べると予想より高い値段で驚くことがあります。
造園工事の相場価格
専門の造園業者に工事の値段を尋ねても、はっきりとした金額は示してもらえませんが、一般的には庭一坪(約3.3m2)当たり10万円以上が造園工事の相場とされ、庭の形に応じた庭石の配置や土壌を考慮した庭木の植栽等、庭全体のバランスが必要とされていることから、工事の上限額はないようです。
庭園設備の相続税評価
相続税の庭園評価では地区によって異なりますが、上記の工事見積り坪当り10万円または専門家の意見による原状の庭園を改めて購入する場合の価額(専門的には「再調達価額」といいます)の100分の70で評価します(財産評価基本通達92(3))。
<例>
20坪(約8メートル四方の庭 約66m2相当)× 単価 100,000円 × 70/100 = 評価額 1,400,000円
上記にあげた財産評価基本通達92(3)、庭園設備(庭木、庭石、あずまや、庭池等)の対象となるのは、名庭園といわれるような有名な日本庭園などであり、歴史的・文化的な価値がある庭の評価方法となります。
一般家庭の庭は、よほど大規模で手入れの行き届いた庭でない限り、現実に評価対象となることはあまり多くありません。
ただし、資産価値がある庭石や灯篭など高価なものは対象になることがありますので、注意は必要です。
おわりに
なお、気になる方は懇意にしている庭師に「同じ庭を造るといくらかかるでしょうか。お世辞抜きで。」と尋ねてみてもよいでしょう。
今回取り上げた庭を含め、相続税の評価に関してお困りのときは、私たち相続の専門家へお問い合わせください。