令和5(2023)年税制改正でNISA制度が大きく変わり、さらに利用しやすくなりました。非課税保有期間が無期限化されたことから、今後は20年以上の長期運用を行う方の増加が見込まれます。
そこで気になるのが、もしNISA口座を保有したまま亡くなった場合、相続人の方はどのような手続きをすることになるのでしょうか。
相続時のポイントをまとめました。
目次
そもそもNISAとは? 新制度でどこが変わる?
NISAとは、少額から投資を行うための非課税制度です。具体的には、金融機関で個人が開くことのできる証券口座の一つです。
一般口座や特定口座で株式や投資信託などを売却して得た利益や配当等には、本来20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で投資から得られた利益は非課税となります。
つまり税金をかけないというものです。
「家計の安定的な資産形成の支援」と「成長資金の供給」を目的として、政府が2014年に導入したしくみです。
NISAは税制改正でどこが変わる?
このNISAについて、令和5年税制改正で大幅な見直しがありました。
施行される令和6(2024)年からは、NISA口座がより使いやすくなるものと予想されます。改正の主な内容は以下のとおりです。
改正前(2023年12月まで) | 改正後(2024年1月から) | |
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非課税保有期間 | つみたてNISA:最長20年間 一般NISA:最長5年間 | 無期限化 |
口座開設期間 | つみたてNISA:2042年まで 一般NISA:2028年まで | 恒久化 |
両制度の併用 | 併用不可 | 併用可能 |
年間投資枠 | つみたてNISA:年間40万円まで 一般NISA:年間120万円まで | つみたて投資枠:年間120万円 成長投資枠:年間240万円 合計最大年間360万円まで投資が可能 |
非課税保有限度額 | つみたてNISA:800万円まで 一般NISA:600万円まで | 全体で1,800万円まで このうち成長投資枠は1,200万円まで売却後の投資枠再利用が可能 |
それでは、もしNISA口座を残して亡くなった場合、相続人の方にどのような税金や手続が必要になるのかを次の項で確認しましょう。
NISA口座を所有している方が亡くなった場合の手続きの流れ
NISA口座を開設している方が亡くなった場合、そのままにしていては、売却したり、配当金・分配金を受け取ることはできません。以下の流れで手続きを行います。
- 相続人は、被相続人の死亡を知った日以後に遅滞なく、金融機関へ「非課税口座開設者死亡届出書」等の書類を提出する
- NISA口座内の株式・投資信託等を相続人の口座へ移管する場合は、金融機関に「相続上場株式等移管依頼書」を提出する
なお、被相続人のNISA口座と相続人の特定口座は、必ず同一の金融機関とします。
また、同一銘柄の株式等は、特定口座と一般口座とに分けての移管ができません。同一の口座に移管することになります。
NISA口座の相続で知っておきたい4つのこと
含み益をもつNISA商品は、相続開始時点で税金がかからない
相続発生時までの含み益は、非課税です。
つまり、亡くなった方がNISA口座で投資した商品の取得価額より相続発生日の時価が大きい場合、その相続開始時までの差額利益については、税金がかかりません。
相続した投資商品を非課税のまま持ち続けることはできない
相続が開始した時点で被相続人のNISA口座は終了し、相続人の一般口座または特定口座に相続時の時価で移管することになります。
したがって、NISA口座の投資商品を売却する際、相続以降に発生した含み益には、税金がかかることになります。つまり非課税のまま持ち続けることはできません。
なお、NISA以外の他の投資商品も同様です。
たとえ相続人の方がNISA口座を開設していても、相続によって取得した株式等はNISA制度の適用を受けることはできません。
亡くなった日以降に受け取った配当金等には税金がかかる
亡くなった日以降に受け取った配当金や分配金は、非課税にはなりません。したがって、所得税・地方税がかかります。
NISA口座の投資商品を相続人が引き継ぐ際の取得価額=相続発生時の時価
相続税の計算に含めるNISAの時価はどのように計算するのでしょうか。
一般的に相続では、株式等の取得日や取得価額は、被相続人が取得した際の価額が引き継がれます。
ただし、NISA口座から受入れた株式等の取得日は、相続発生日となり、取得価額は相続発生日の時価となります。
つまり、相続人が新たにこれらの株式等を購入した形となります。
上場株式等の相続税評価額の求め方
なお、上場株式等の相続税評価額は、相続開始日の終値など、以下4つの価格のなかから最も低い金額を選択することができます。
- 相続開始日(亡くなった日)の終値
- 相続開始日の当月の終値の月平均額
- 相続開始日の前月の終値の月平均額
- 相続開始日の前々月の終値の月平均額
2~4は、その月のすべての取引日(取引所の営業日)の、終値の平均値を算出します。
おわりに
かしこくNISA制度を利用して安定的な財産形成を行い、将来の相続を有利に進められるよう準備をしましょう。
相続および相続対策へのご相談は、辻・本郷 相続センターまでお気軽にお問合せください。