高齢者にとって生活の支えになる年金。
年金は前月・前々月分を後払いするしくみなので、受給者が亡くなられた時点では未支給が発生します。これは相続財産にあたるのでしょうか?
結論から申しますと、被相続人の死亡後に支払われる未支給年金は相続財産にはあたらず、受け取った相続人の一時所得となります。
執筆:辻・本郷 相続センター小田原事務所
目次
年金の支払いは亡くなられた月まで
年金の支払は、亡くなられた月の分までとなります。公的年金の支払は偶数月の15日に年6回に分けて支給されます。
日割り計算は行われず、1日に亡くなっても1ヵ月分が支給されます。
偶数月に亡くなると、1ヵ月分(もしくは3ヵ月分)、奇数月に亡くなると2ヶ月分が、亡くなられた時点で支給されてない年金が存在することになります。
この年金を「未支給年金」といいます。
たとえば、4月10日に亡くなられると2月・3月・4月分が、4月20日に亡くなられると4月分が、5月20日に亡くなられると4月分・5月分が未支給年金になります。
年金受給者が亡くなられた際の手続きは?
年金受給者が亡くなられたら、受給権者死亡届を遺族が提出しなければなりません。
届の提出が遅れて、死亡日以降分が被相続人の口座に振り込まれた場合には、返却が必要になります。
たとえば4月30日に亡くなられて6月15日に4月分・5月分が振り込まれた場合は、5月分を返却しなければなりません。
未支給年金は相続財産に含まれません
未支給年金は、被相続人と生計を一にしていた人に請求権があります。
したがって、未支給年金は請求権のある人の財産となり、相続財産には含まれず、受け取った方の一時所得となります。
この件については、判例があります(平成7年11月7日最高裁判決)。
未支給年金(障害厚生年金等)が相続財産になった場合、ならなかった場合
以下に、障害厚生年金等の未支給年金が相続財産となった事例と、ならなかった事例をご紹介します。
相続財産になった事例
被相続人A様はガンで長年入退院を繰り返していて、年金事務所に障害者年金の支給申請をしていました。
A様は令和3年3月に亡くなられ、3月15日に約700万円がA様の通帳に振り込まれました。
この場合、A様が申請して生前に決定され支給されたものとして本来の相続財産に算入しました。
相続財産にならなかった事例
次に、令和2年(2020年)12月に亡くなられたB様の事例をご紹介します。
B様の母親の口座に、障害厚生年金の未支給年金として約190万円が振り込まれました。
この場合は、B様の相続財産に算入しないこととなります。
B様の生前に支給されていれば、障害厚生年金は所得税法上も非課税として取り扱われます。
本件の場合も、遺族が受ける未支給年金のうち厚生年金保険法等の規定により課税されないものは一時所得の対象から除かれることになります。
障害厚生年金については、非課税所得として遺族の一時所得とならないと考えています。
おわりに
今回は未収年金の相続についてご紹介いたしました。
未収年金に関して個別のケースでお悩みの際には、私たち辻・本郷 相続センターまでご相談ください。