交通事故は自分が気を付けていても起こってしまうもので、誰の身にも無関係と言い切れず恐ろしいものです。
万一、交通事故の被害に遭ってしまった場合、損害賠償金を受け取る示談が成立するまでにさまざまな要因で時間がかかることもあります。
今回は損害賠償金を受け取ったタイミングごとに、税金がかかるか、かからないかを確認していきましょう。
目次
パターン1:交通事故の損害賠償金を被害者本人が受け取ったら?
まずは、損害賠償金を被害者自身が受け取ったときの基本的な取り扱いを確認していきます。
この場合、損害賠償金は被害者の所得扱いになり、原則、所得税がかかりません。
交通事故などのために、被害者が損害賠償金等を受け取ったときは、これらの損害賠償金等は所得税が非課税となります。
参照:国税庁タックスアンサー No.1700「加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき」
ただし、以下の1・2の損害賠償金については、所得税が課税されます。
1.事故による傷害のために減収した給与や休業等による収入減などを、補てんするために受け取った賠償金
事故による負傷のために働けなくなってしまったことによる補償に対しては、課税されません。
補償しきれない収入減をおぎなうために、支払いを受けたものは課税の対象となります。
ただし、これらの損害賠償金のうちに、その被害者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には、その補てんされた金額に相当する部分については、各種所得の収入金額とされます。
参照:国税庁タックスアンサー No.1700「加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき」
2.名目は見舞金であっても社会通念上高額なもの、収入やサービスの対価として支払いを受けたもの
加害者から高額すぎる見舞金を受け取った場合や、実質的に収入等の対価として受け取った場合は、1.と同様の性質から、課税されます。
▪心身に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金
非課税となる見舞金は、社会通念上それにふさわしい金額のものに限られます。また、収入金額に代わる性質を持つものや役務の対価となる性質を持つものは、非課税所得から除かれます。
参照:国税庁タックスアンサー No.1700「加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき」
パターン2:交通死亡事故により遺族が損害賠償金を受け取ったら?
死亡事故により遺族が加害者から損害賠償金を受け取ったときはどうなるのでしょうか。
この損害賠償金は、遺族の方の所得として扱われますが、特別な事情に配慮して所得税は非課税とされており、税金はかかりません。
なお、被害者である故人の固有の財産とはならないため、相続税の対象にもなりません。
被害者が死亡したことに対して支払われる損害賠償金は相続税の対象とはなりません。
この損害賠償金は遺族の所得になりますが、所得税法上非課税規定がありますので、原則として税金はかかりません。
参照:国税庁タックスアンサー No.1705「遺族の方が損害賠償金を受け取ったとき」
パターン3:損害賠償金を受け取らないうちに被害者が亡くなったら?
最後に、損害賠償金を受け取らないうちに被害者が亡くなった場合は、どうなるのでしょうか。
パターン1や2に比べて、事例がそれほど多くはないケースですが確認していきましょう。
損害賠償金を受け取ることが決まっていたものの、受け取る前に被害者が事故以外の原因で亡くなられたときは、被害者が本来受け取るべきだった財産にあたるので、被害者である被相続人の相続財産となり、相続税の対象となります。
被相続人が損害賠償金を受け取ることに生存中決まっていたものの、受け取らないうちに死亡してしまった場合には、その損害賠償金を受け取る権利すなわち債権が相続財産となり、相続税の対象となります。
参照:国税庁タックスアンサー No.4111「交通事故の損害賠償金」
一方で、生前には受け取りが決まっていなかった、あるいは事故を原因とする死因であった場合などは、パターン2と同様の取り扱いになると考えられ、個別の状況・事情等が考慮されます。
おわりに
以上、3つのパターン別に課税の有無を確認しました。
実際には個別の事情があり、判断が難しいこともあります。交通事故の損害賠償金の取り扱いについて判断にお困りの際には、辻・本郷 相続センターまでお気軽にお問い合わせください。