相続人が複数人いる場合、遺言がなければ遺産分割協議が必要になります。
その際に「相続」が「争族」になるケースもあり、何年も決着がつかないこともあります。
申告期限までに遺産分割ができない場合の対応についてご説明します。
遺産分割協議が終わらない
相続税の申告期限は、お亡くなりになったことを知った日の翌日から10カ月です。
遺産分割協議自体に法律上の期限はありませんが、分割がされていないことを理由として相続税の申告期限が延長されることはありません。
では、遺産分割協議が申告期限に間に合わなかった場合にはどうすればよいのでしょうか?
遺産分割が未分割の状態で申告する
相続税の申告書の提出期限までに財産の全部または一部が分割されていない場合には、分割が決まっていない財産を法定相続分で按分した金額をもって相続税額の計算をしたうえでいったん申告・納税を行います。
遺産分割が決まらないからといって期限内に申告を行わないと、無申告加算税の対象となるため、避けるべきです。
その後、全財産の分割が決定した際に、更正の請求または修正申告を行います。
最初に申告した時の税額が全財産の分割の決定後の税額より多い場合には、更正の請求(相続税を納め過ぎた場合:税金を払戻す手続き)、少なかった場合には修正申告(納める税金が少なかった場合)を行います。
なお、更正の請求は、全財産の分割が決定した日から4カ月以内に行わなければなりません。
また、修正申告自体に関して期限は存在しませんが、分割が行われた日から4カ月を経過する日または更生通知書を発した日のいずれか早い日までは延滞税がかかりませんので、早めの申告をする必要があります。
特例を受けるには
未分割の状態で申告を行うとき、未分割の財産に対して配偶者の税額の軽減を行うことができません。
また、小規模宅地等の特例に関しても、特例の対象となる土地が1つでも未分割の状態であれば、受けられません。
その場合には、以下を記載した「申告期限後3年以内の分割見込書」を未分割での申告の時に提出し、分割決定の日の翌日から4カ月以内に更正の請求または修正申告を行うことで、上記の特例の適用を受けることができるようになります。
- 分割されていない理由
- 分割の見込みの詳細
- 適用を受けようとする特例等
なお、名前の通り、こちらの特例の適用を受ける場合には申告期限から3年以内に遺産分割協議を確定させる必要があります。
その他、農地の納税猶予は通常の申告期限までに分割することが要件のため未分割の状態では使えません。
農地の納税猶予を受けたい場合、遺言の作成など未分割にならないようにする必要があります。
それでも間に合わない場合
しかし、延長したところで遺産分割協議が必ずしも確定するとは限りません。
この状態で特例を受ける場合には、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を、当初の申告期限の3年後から2カ月以内に提出することで、分割決定時に上記の特例を受けることができるようになります。
この申請書を提出した場合には、判決の確定の日など一定の日の翌日から4カ月以内に分割されたとき、前述した特例の適用を受けることができます。
分割が行われた日の翌日から4カ月以内までに更正の請求を行って適用を受けてください。
ただし、裁判で係争中などの「やむを得ない事由」が必要になります。単純に話し合いが決定しないという理由だけでは申請できません。
もっとも、遺産分割協議が成立しないままでは、被相続人の財産を自由に使うことや、相続登記もできません。
また、その間に相続人が亡くなると更に問題が大きくなることも考えられます。
遺産分割でお困りの際は専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
辻・本郷 相続センターでもご相談を承っておりますので、お問い合わせください。