
「税務調査が来るかもしれない……」という不安は、経営者、事業主の方なら、誰もが一度は抱くのではないでしょうか。特に、売上が増加傾向にある場合や、確定申告を始めて間もない方は、その不安がより大きくなるものです。
税務調査は、正しく確定申告ができていさえすれば、本来恐れる必要はないものです。ただし、税務調査が行われやすい時期や、適切な準備を行うことで、ことさらに不安を払拭することができるでしょう。
この記事では、税理士監修のもと、税務調査が行われる時期や、来やすいタイミングなどをわかりやすく解説していきます。
「いつ来るかわからない」という不安を「来ても大丈夫」という自信に変えていきましょう。
目次
1.法人の税務調査が入りやすい時期は決算月によって異なる
税務調査には明確な時期の決まりはありませんが、調査官の来る時期にいくつかの傾向は見られます。
例えば、法人の場合、税務調査が入りやすい時期は、決算月がいつあるかによって異なります。
決算月が2〜5月の間にある法人の場合、税務調査の入りやすい時期は7〜12月、決算月が6〜翌年1月の法人の場合、税務調査の入りやすい時期は1〜6月です。この章では、それぞれの理由について解説していきます。
1-1.2〜5月に決算のある法人は、7〜12月に税務調査が入りやすい
決算月が2〜5月にある法人は、7〜12月に税務調査が入りやすく、さらに、調査も厳しくなる傾向があります。
なぜなら、国税の事務年度は7月始まりであるため、税務調査は「7月1日〜翌年6月30日」の期間で行われます。このうち、上期である7〜12月は、2〜5月に決算月のある法人が主に調査対象となるためです。
また、7月10日には税務署の人事異動があり、上期の調査は6月末までには終わらせる必要があるため、上期の場合は対象法人の期間が限られる分、調査の集中度や厳しさが増します。
例えば、3月決算の法人では、7〜12月の上期に税務調査の対象となる可能性が高く、重点的な確認が行われることが多いです。
したがって、2〜5月に決算月のある法人は、7〜12月の税務調査に備え、念入りな準備が必要です。
1-2.6〜翌年1月に決算のある法人は、1〜6月に税務調査が入りやすい
決算月が6〜翌年1月にある法人の場合、税務調査は主に1〜6月(4~6月が特に多い)に行われることが多いです。
なぜなら、繰り返しになりますが、国税の事務年度は7月始まりであるため、税務調査は「7月1日〜翌年6月30日」の期間で行われます。このうち、下期である1~6月は、6~翌年1月に決算月のある法人が主に調査対象となるためです。
(※その中でも、1〜3月は確定申告の時期であり、税務署の人員が確定申告業務に集中するため、税務調査に割ける人員が不足し、税務調査が少なくなるというケースが多いです。)
例えば、6月決算の法人であれば、決算内容を確認する税務調査が1〜6月に集中して行われる傾向があります。
したがって、6〜翌年1月に決算月のある法人は、特に1〜6月に税務調査が入りやすいことを考慮して準備すると良いでしょう。
2.個人事業主の税務調査が入りやすい時期は、確定申告の後など
個人事業主の場合にも、税務調査には明確な時期の決まりはありません。ただし、調査官の来る時期にいくつかの傾向は見られます。
2-1.確定申告が終了した後の4~5月頃は実施が増える傾向がある
個人事業主に対する税務調査は4月から5月にかけて増える傾向があります。
なぜなら、確定申告が終了した直後、税務署は申告内容を精査する段階に入るためです。この時期は、提出された申告書の内容に不備や不自然な点がある事業者が優先的に調査対象となります。
例えば、売上が大幅に増えたにもかかわらず、経費が不自然に多く計上されているケースや、明らかに申告漏れが疑われるような場合です。こうした場合、税務署は申告内容を確認するために税務調査を実施します。
このように、確定申告後の4~5月は、申告内容の精査が進む時期であるため、税務調査が集中するのです。事前に適切な記帳と正確な申告を行うことで、調査リスクを回避する準備をしましょう。
3.法人個人問わず、7〜11月頃に実施が増える傾向がある
また、法人でも個人事業主でも、共通して税務調査が行われやすい時期の傾向が存在します。
税務署や国税局の動向を理解することで、税務調査が実施されやすい時期をある程度把握することができます。
3-1.税務署や国税局の人事異動が終わる7~11月頃は実施が増える傾向がある
税務調査は7月から11月にかけて増加する傾向があります。
なぜなら、税務署や国税局では夏ごろに人事異動が行われ、その後、新しい担当者が着任して調査業務が本格化するためです。この時期は調査活動が活発になるため、特に注意が必要です。
例えば、過去に税務調査を受けたことがない事業者や、申告内容に不自然な点があると判断された事業者が重点的に調査の対象となる場合があります。新しい担当者は不審点を洗い出すため、従来以上に厳しく確認を行うケースもあります。
このように、特に夏以降は税務調査が活発化する時期であるため、正確な申告と記帳を心がけ、調査への備えを整えることが重要です。
4.税務調査が入りやすいタイミング
税務調査が入りやすいタイミングにはいくつかの特徴があります。以下に挙げるようなタイミングでは、調査対象となるリスクが高まります。
4-1.売り上げが急に伸びたタイミング
売上が急激に増加した場合、税務調査の対象となりやすくなります。
なぜなら、税務署は「何か不正や見落としがあるのではないか」と疑い、申告内容を精査する傾向があるためです。特に、短期間で大幅な売上増加が見られる場合は調査が実施されやすくなります。
例えば、前年の売上が500万円程度だった事業者が、翌年には1,500万円に急増した場合のように、倍以上に売上が伸びているケースは注目されやすいです。この場合、税務署は「経費の過剰計上や売上の一部未申告があるのではないか」と判断し、調査を行う可能性が高まります。
このように、売上の急激な変化は税務署に注目されやすいため、正確な帳簿管理をして、申告の根拠を明確にしておくことが重要です。事前の備えが、調査リスクを軽減するカギとなります。
4-2.利益が不自然に少ないと判断されたタイミング
売上が一定以上あるにもかかわらず、利益が異常に少ない場合、税務調査の対象になりやすくなります。
なぜなら、税務署は「経費の過剰計上や損益調整に不正があるのではないか」と疑い、不自然な点がないかを注視するためです。
例えば、売上が年間1,000万円を超えている事業者が、ほとんど利益を計上していない場合が挙げられます。この場合、税務署は「架空の経費を計上して利益を圧縮しているのではないか」などと考え、申告内容の詳細を調査する可能性があります。
このように、利益が少なすぎる状況になると税務署に注目されやすいため、適切な経費計上と帳簿の整備を徹底することが重要です。
4-3.売上高1,000万円にわずかに届かないタイミング
売上高が消費税課税の対象基準である1,000万円を少しだけ下回る場合、税務調査の対象となりやすいです。
なぜなら、税務署は「消費税課税を回避するために売上を意図的に調整しているのではないか」と疑うためです。
例えば、売上が毎年950万円程度で推移している事業者がいた場合を考えましょう。この場合、税務署は「売上の一部を未申告にして1,000万円を超えないようにしている可能性がある」と判断し、調査を実施することがあります。
このように、売上高が課税基準付近にある事業者は税務署の注目を集めやすいため、適切な申告と正確な帳簿管理を徹底することが重要です。
4-4.確定申告をしなかったタイミング
確定申告を行わなかった場合、税務調査の対象になりやすくなります。
なぜなら、必要であるにもかかわらず確定申告を怠ることは、所得税法や法人税法に反する行為であり、税務署は速やかに対応を求めるためです。未申告の事業者は当然、脱税などの不正を疑われやすく、ペナルティの対象となるリスクも高まります。
例えば、フリーランスや個人事業主が複数年にわたり申告を怠っている場合はよく見られるケースとして挙げられます。この場合、税務署は「意図的に申告を避けているのではないか」と考え、過去の取引記録や銀行口座の入出金履歴を詳細に調査することがあります。
このように、申告を怠ると税務署の注目を集め、重い罰則や追徴課税が科される可能性があるため、期限内の正確な申告をする必要があります。
4-5.長年にわたって税務調査が行われていないタイミング
過去に税務調査を受けたことがない、または長期間調査を受けていない事業者は、税務調査の対象となりやすいです。
なぜなら、税務署は公平性を保つため、未調査の事業者にも定期的に目を向ける方針を持っているためです。
例えば、10年以上にわたり税務調査が行われていない事業者がいた場合が挙げられます。この場合、税務署は「申告内容に不備や見落としが隠れている可能性がある」と考え、取引内容や帳簿を確認するために調査を実施することがあります。
このように、調査対象となるタイミングは公平性の観点から選ばれることがあるため、長期間調査を受けていない事業者も安心せず、常に適切な帳簿管理と申告を行う必要があります。
4-6.三期ほどの推移で見たときに売上、原価率、経費の割合が不自然に増加しているタイミング
税務署は、一般的に三期分ほどの申告内容を照らし合わせ、推移として、売上や原価率、経費の割合が明らかに不自然に増えている場合、税務調査に乗り込むことがあります。
なぜなら、原価率などが三期の間に急増することは、同じ事業を営んでいるのであればほとんどあり得ないためです。
例えば、原価率が30%から次期に50%まで増加し、さらに次期には80%に増加していれば、明らかに不自然だと判断できます。
このように、申告内容の比率が明らかに不自然な推移を遂げているタイミングでは、税務調査が行われやすくなります。
5.税務調査に備えたい方は辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスをご活用ください
税務調査への備えには、日頃の正確な申告と適切な記帳が欠かせません。しかし、それでも税務調査が行われることが決まってしまった場合、税務調査対応に関しては専門知識が求められるため、個人で対応するには限界があります。
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6.まとめ
税務調査には時期の明確な決まりはありませんが、法人の場合は決算月によって調査が入りやすい月が異なっていたり、また、個人事業主の場合には確定申告後や人事異動後などの実施が増えるといった傾向があります。また、売上の急増や利益の異常値、未申告の場合など、特定のタイミングでは調査対象となるリスクが高まります。
万が一に備えて、辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスを利用し、事前準備を徹底しましょう。
適切な対応をすることで、安心して事業を運営することが可能になりますよ。