車検代の勘定科目を解説!経費処理する場合の注意点とは?

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監修者 宇都宮健太

事業で車を使用している場合、欠かせないのが車検です。
その車検代の勘定科目は、仕訳が複雑になっているのは、ご存じでしょうか?

車検時に支払いが必要なのは、車の点検料だけではありません。自賠責保険や税金を支払う必要があることから、勘定科目を細かく分け、正確に仕訳することが必要なのです。

本記事では、車検代の勘定科目の仕訳方法や経費として計上する場合の注意点について、解説していきます。


1.車検代に用いる勘定科目とは?

事業で使用している車の車検代は、主に車両費、支払手数料、保険料、租税公課の4つの勘定科目に仕訳します。

整備点検費用
車両費車検基本料、整備修理費用、法定点検料課税取引
支払手数料車検代行手数料課税取引
法定費用
保険料自賠責保険料非課税取引
租税公課自動車重量税、印紙・証紙代不課税取引
それぞれの勘定科目について解説していきましょう。

1-1.車を維持・管理するための費用は【車両費】

車検で支払った費用のうち、車を維持・管理するために必要となる車検基本料(手数料をのぞく)、法定点検料、整備修理費用は、車両費に仕分けします。

車両費は、車両全般に関する費用を計上する勘定科目です。

なお、オイル交換やタイヤなどの消耗品の交換や修理にかかった費用は、消耗品費のほか、車も含めて固定資産と考える場合は、修繕費として仕訳することもできます。

<仕訳例>
車検費用として、車検基本料、整備修理費用、法定点検料の合計で、66,000円支払った場合。

借方貸方
車両費66,000現金66,000

1-2.車検代行手数料は【支払手数料】

車検代行手数料を支払った場合は、支払手数料の勘定科目を使います。

車検代行手数料は、業者に車検代行を依頼するときに必要となる費用です。所有者が車検を行うユーザー車検を行った場合は発生しません。

<仕訳例>
車検代行手数料が22,000円だった場合。

借方貸方
支払手数料22,000現金22,000

1-3.自賠責保険は【保険料】

車検で支払う自賠責保険料の勘定科目は、保険料です。

自賠責保険料は、法律で加入が義務付けられる強制保険です。次回の車検までの期間の2年分をまとめて支払います。

本来、保険料の勘定科目では、保険料の1年を超える部分に関しては、前払費用として処理することが必要です。しかし、自賠責保険は、強制保険であるため、2年分をまとめて処理することができるルールになっています。

<仕訳例>
自賠責保険が17,650円(2年間)を支払った場合。

借方貸方
保険料17,650現金17,650

1-4.税金や印紙は【租税公課】

車検の際に負担する自動車重量税と印紙、証紙代の勘定科目は、租税公課使います。

自動車重量税は、自動車の重量や車種、経過年数などに応じて課税される国税で、車検や新規登録時に車検証の有効期限分をまとめて納付します。

<仕訳例>
自動車重量税として24,600円、印紙、証紙代として1,800円を支払った場合。

借方貸方
租税公課26,400現金26,400

2.車検代の経費計上で注意が必要な場合

車検代を経費計上する際、以下の3つに該当する場合は、勘定科目の仕訳に注意が必要です。

  • 消費税を税抜処理する場合
  • 車を事業とプライベートの両方で使用している場合
  • リース車両の車検代

2-1.車検代を消費税を税抜処理する場合の勘定科目

消費税課税事業者で税抜処理を行っている場合、発生する消費税を別立てで仕訳することが必要です。

消費税分は、「仮払消費税等」として仕訳します。
税抜処理で仕訳する際、法定費用には消費税が発生しないことに注意しましょう。

整備点検費用
車両費車検基本料、整備修理費用、法定点検料​​​​課税取引
支払手数料車検代行手数料課税取引
法定費用
保険料自賠責保険料非課税取引
租税公課自動車重量税、印紙・証紙代不課税取引

第1章の「車検代に用いる勘定科目とは?」の仕訳例を税抜き処理で仕訳すると、以下のようになります。

<仕訳例>

借方貸方
車両費60,000現金132,050
支払手数料20,000
保険料17,650
租税公課26,400
仮払消費税等8,000

2-2.事業とプライベートで車を使用した場合の車検代

事業で使用している車をプライベートで使用した場合、その扱いは法人と個人事業主で大きく異なります。

2-1-1.法人が所有する車をプライベートで使用するケース

法人名義の車が車検を受けた場合、すべての費用が経費になります。基本的にはプライベートでの利用は認められていません。

そのため、役員や従業員がプライベートで使用した場合は、使用料を徴収するルールを定めるなど、勘定科目の仕訳とは異なる対応が必要です。

プライベートでの使用が多い場合は、社用車とは認められず、税務調査で指摘を受ける可能性があるので、注意しましょう。

2-1-2.個人事業主が事業とプライベートで車を使用するケース

車を事業とプライベートの両方で利用している場合、その利用割合によって家事按分(割合に応じて分ける)が必要です。

たとえば、事業使用が60%、プライベートでの使用が40%だった場合は、車検代も60%:40%にわけます。
プライベートで使用した分の勘定科目は、事業主貸として仕訳しましょう。

家事按分の基準は、走行距離や利用時間などの数値に基づいて根拠を明確にします。
税務調査対策として、按分の根拠となる記録や日報など、業務の記録を残しておくことも大切です。

第1章「車検代に用いる勘定科目とは?」で解説した勘定科目を事業での使用が60%、プライベートでの使用を40%とした場合の勘定科目は以下のとおりです。

<仕訳例>

借方貸方
車両費39,600現金132,050
支払手数料13,200
保険料10,590
租税公課15,840
事業主貸52,820

2-3.リース車両の車検代を経費計上する場合

契約中のリース車両に車検代が発生した場合でも、自社が所有している車と同様の勘定科目で仕訳します

リース契約している車の車検代は、契約により3つのパターンにわかれます。

  • ・車検に関するすべての費用がリース代に含まれている。
  • ・法定費用のみ、リース代に含まれている。
  • ・車検に関するすべての費用を契約者が負担する。

リース契約の内容により、負担する費用は異なりますが、第1章「車検代に用いる勘定科目とは?」で解説した勘定科目と同様に仕訳しましょう。
なお、リース代に車検代が含まれている場合は、車検代を分けて計上することはできません。車検代もまとめてリース代として処理することが必要です。


3.まとめ

本記事では、車検代の勘定科目について解説しました。

意外にも車検代の勘定科目が複雑であることに驚かれた方もいるかもしれません。
ひとくくりに車検といっても、事業用の車の勘定科目は、細かい仕訳が必要です。

特に個人事業主の方は、事業とプライベートの両方で車を使用していることも多く、適切な記録を残しておくことが、税務調査対策としては欠かせないでしょう。

勘定科目の仕訳など、税務に悩まれた場合は、辻・本郷 税理士法人をはじめとする専門家にご相談ください。