共有名義不動産の住宅ローンを払い終えたあなたが次に行うべき『抵当権の抹消』。
共有名義であるがゆえに、自分一人でも抹消はできるのだろうか?
共有者全員の住所氏名は必要なのか?
そもそもどうやって手続きを済ませたら良いのか?
さまざまな疑問がお有りかと思います。
まず、抵当権抹消は、共有者の1人からでも抹消登記の申請ができます。
しかし、『共有者全員の名前』は登記申請書に記載する必要があります。
抵当権抹消登記申請書(法務局で取得可能)のほか、ローンの完済時に金融機関から送られてくる3種の書類が必要です。
この記事では、上記内容について詳しく解説しながら、抵当権抹消手続きにかかる具体的費用や時間、手順などについても説明しています。
記事を参考にすることで、あなたの抵当権抹消手続きに対する不安が解消されることでしょう。ご一読ください。
目次
1.共有名義不動産の抵当権抹消とは
抵当権抹消登記とは、金融機関から融資を受けるときに不動産を担保に設定された『抵当権』を不動産登記簿から抹消することを指します。この登記を行うことで、抵当権を抹消することができます。
1-1.共有名義不動産でも必要に応じて抵当権抹消の登記が必要
共有名義の不動産に関しても、抵当権抹消の登記は必要になります。
抵当権抹消登記をせずに放置すると、登記名義人の住所変更や融資を受けていた金融機関の合併などにより、抹消手続きが複雑化して難しくなってしまう可能性があります。また、抵当権抹消のための登記を行わないと、既にローンは払い終えているのに、その不動産を担保にしたり売却したりすることがしづらくなります。抵当権が抹消されていないまま不動産を放置しないようにしてください。
1-2.共有名義不動産の抵当権の抹消は共有者一人から可能
共有名義の不動産に設定された抵当権の抹消は、全ての共有者が共同して手続きをする必要はなく、共有者のうちの一人で申請手続をすることができます。
この場合、他の共有者の同意を得る必要はありませんが、手続きの際には必要書類を揃える必要があります。また、申請人にならない他の共有者ら全員についても、その住所氏名を記載する必要はあります。
2.共有名義不動産の抵当権抹消の必要があるのはどういうケースなのか
2-1.ローンなど債務を完済したあと
抵当権の抹消が必要になる最も一般的なケースは、住宅ローンなどの債務を全額返済した後です。この場合、抵当権を抹消しないままにしておくと、将来不動産を売却する際に問題が生じる可能性があります。詳しくは1-1をご確認ください。
2-2.ローンを借り換えしたい場合
現在のローンを他の金融機関に借り換える場合も、既存の抵当権を抹消する必要があります。この手続きを行わないと、新たな金融機関が不動産に対して抵当権を設定することをためらうからです。また、不動産を売却したい際にも、ローンが残っていれば借り換えによる抵当権抹消手続きは必要になります。
借り換え、売却により抵当権の抹消登記を行う場合には、「2-1ローン完済時」の抵当権の抹消登記のやり方とは、やり方の大筋が異なります。不動産決済には時間的制約があり、また、登記と同時に多額の金銭の動きがあるため、間違った登記をしないように、抵当権の抹消登記を、不動産の売却や新たな抵当権設定に伴う他の登記(所有権移転登記など)と同時に、専門家がまとめて行った方がスムーズに進むからです。
以降の記事では、「2‐2. ローンを借り換えしたい場合」以外の「2-1のローン完済時」にフォーカスして、共有名義不動産の抵当権抹消について記載します。
3.抵当権抹消のために必要な書類は5つ
抵当権抹消の手続きを進めるためには、以下の5つの書類が必要です。
うち、3-2から3-5の4つは、ご自身で手続きする必要はなく、ローン完済時に金融機関が司法書士を通すなどして送ってくれますので、届くのを待っていれば大丈夫です。
3-1.抵当権抹消登記申請書
抹消登記申請書は、ご自身で法務局から取得して記入する必要のある書類です。不備がないように正確に記入する必要があります。
記入の仕方については、6章で例を交えて紹介いたします。
3-2.登記原因証明情報
この書類は、抵当権の解除の原因を証明するもので、金融機関がローン完済後に発行します。「解除証書」、「弁済証書」、「解約証書」などが該当します。
3-3.登記済証もしくは登記識別情報
これも3-2同様、金融機関が提供する書類です。抵当権の設定時に発行された書類です。
3-4.金融機関の委任状
金融機関が司法書士に手続きを委任する場合に必要な書類です。金融機関が司法書士に手続きを委任していれば金融機関から送られてきますが、金融機関が司法書士に委任していない場合(金融機関が自ら手続きをしている場合)は送られてきません。
3-5.金融機関の会社等法人番号か会社の法人登記簿
金融機関(会社)名義の抵当権を抹消したいという場合、この書類が必要です。3-1から3-4同様、金融機関から送られてきます。
4.抵当権抹消にかかる費用
抵当権抹消登記は、自分で行う場合と、司法書士に依頼して行う場合で費用が異なります。
4-1.自分で手続きを行う際の費用概算
自身で手続きを行う場合の費用は、不動産一筆あたり約3,000円です。
4-2.司法書士に代行依頼をする際の費用概算
司法書士に依頼する場合の費用は、一筆あたり約20,000円前後となります。
5. 抵当権抹消にかかる時間は約10〜20日程度かかる
抵当権抹消登記にかかる時間は、通常10〜20日程度です。
書類の準備のための時間と金融機関の手続きにかかる1〜2週間程度が主に時間を要するポイントとなります。ただし、金融機関の対応速度によってはこれ以上かかる場合もあります。
また、法務局での処理にも、登記が完了するまで約1〜2週間かかります。法務局の混雑状況や書類の内容により多少の前後があります。
これらの手続きを迅速に行うためには、事前に必要書類を確認し、金融機関に早めに連絡を取ることが重要です。さらに、法務局への申請を早めに行うことで、全体の手続き時間を短縮することができます。
オンラインでの申請も可能ですが、紙での手続きと比較して大幅に時間が短縮されるわけではありません。
6.抵当権抹消登記申請書の各項目の書き方
抵当権抹消登記のために作成が必要な申請書の様式は、このURLをクリックすることでダウンロードできます。
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001365919.doc
このURLには法務局による『抵当権の登記を抹消する場合の申請書の様式・記載例』がまとめられています。この記載例に沿って書いていきましょう。
各要項について説明していきます。
6-1.登記目的
ここには「抵当権抹消(順位1番)」 と記入します。 順位番号に関しては、3-3で示した登記識別情報通知書等で確認できます。
6-2.原因
抵当権が消滅した日付と、「弁済」や「解除」などの具体的な原因を記入します。
たとえば、令和6年4月1日の解除により抵当権が消滅した場合は 「令和6年4月1日解除」 と記載します。
この情報は3-2で示した登記原因証明情報にも記載されています。
6-3.権利者
不動産所有者の、登記簿上の住所と名前を記入します。
たとえば「東京都○○区○○町○○○番地 氏名 ○○○○」のように書いてください。
引っ越しや結婚などによって住所や名前が変わったという場合には、住所・氏名変更登記手続きが別途必要になるので、注意しましょう。
6-4.義務者
義務者とは、抵当権者を指します。通常金融機関などが該当します。
住所、社名、法人番号、代表者氏名を記入する必要があります。
たとえば「○○市○○町二丁目12番地 株式会社○○銀行 会社法人等番号 1234-56-789012 代表取締役 ○○○○」と記載しましょう。
6-5.添付情報
必要な添付書類をリストアップします。3-2から3-5までの、登記識別情報、登記原因証明情報、会社法人等番号、金融機関の委任状などが必要な添付書類です。住宅ローンを返済すると金融機関から渡されますので、確認してください。
6-6.申請年月日と申請する法務局
申請日と申請を行う法務局の名前を記入します。
たとえば「令和6年4月1日申請 ○○ 法 務 局(又は地方法務局) ○○支局(又は出張所)」のように記載しましょう。
6-7.申請人兼義務代理人
申請を行う人の名前を記入します。不動産の所有者、つまり権利者が行うことが一般的です。
氏名の横に認印を押印します。 電話番号は平日連絡できる電話番号にしましょう。携帯電話の番号でも可能です。
たとえば「東京都世田谷区○○町○○○番地 氏名 ○○○○ 連絡先の電話番号00-0000-0000」のように記載します。
6-8.登録免許税
登録免許税の額を記入します。現金で納付した場合は、領収書または収入印紙を貼り付けた用紙を申請書に貼り付けて、契印してください。
6-9.不動産の表示
不動産の所在地や地番などの詳細を記入します。
不動産の登記事項証明書に記載されている通りに記載してください。
たとえば「不動産番号 1234567898765 所在 ○○区○○町 地番 ○○○番地 地目 宅地 地積 ○○○平方メートル (順位番号 1番)」のように記載してください。
7.よくある質問への回答
7-1.抹消登記は金融機関等が勝手に行ってくれるものではない
抹消登記は不動産の所有者自身で申請を行う必要があります。共有名義の場合は、共有者の一人でも行うことができます。
金融機関が自動的に行うものではありません。
7-2.抹消登記をしないまま放置をすると抹消が難しくなる可能性がある
抹消登記を放置すると、住所変更や金融機関の合併などにより、抹消手続きが複雑化して難しくなってしまう可能性があります。
7-3.抹消登記をしていない不動産は担保に提供したり売却したりできない
抹消登記を行わないと、不動産を担保にしたり売却したりすることができません。抵当権が抹消されていないまま不動産を放置しないようにしましょう。
7-4.必要な印鑑は実印でも認印でも可
抹消登記には実印または認印が必要です。シャチハタなどのスタンプ印は不可なので、注意しておきましょう。
7-5.オンライン申請は可能だが、法務局での手続きの方が簡単である
抵当権の抹消登記はオンライン申請も可能ですが、法務局での手続きの方が簡単でスムーズです。
7-6.必要書類は原本が必ず必要となる
抹消登記の申請には、必要書類の原本の提出が必ず必要です。コピーは認められません。
7-7.必要書類を紛失した場合、金融機関に再発行を依頼すれば良い
必要書類を紛失した場合は、金融機関に連絡し、再発行を依頼することで対応できます。
7-8.共有者が死亡している場合でも抵当権抹消登記は行うことができる
共有者が死亡している場合でも、他の共有者が申請人となることで必要な手続きを踏めば、抵当権の抹消登記を行うことが可能です。
7-9.共有名義でない不動産については抹消登記申請できない
たとえば、土地と建物両方について抵当権の抹消を行いたいが、土地は親の単独名義である場合など、共有名義ではない不動産に関して、名義人でない者(この場合の子)には、単独での抹消登記申請はできません。
8.まとめ
共有名義不動産の抵当権抹消には、共有者一人から手続きが可能であり、5種類の書類が必要です。
うち4種類は金融機関から送られてきます。抹消登記申請書だけは、法務局から取得する必要があります。必ず取得しましょう。
手続きを自力で行う場合の費用は約3,000円、司法書士に依頼する場合は約20,000円となり、手続きには約10〜20日かかります。
抵当権抹消登記を放置すると、後々抹消したくなった際に抹消登記が困難になる可能性があるため、早めの手続きが推奨されます。
9.共有名義でお困りの方は弁護士にご相談を
本記事では、共有名義のトラブルに詳しい弁護士が、共有名義不動産の抵当権抹消に関して解説しました。
これから共有名義にすることをご検討の方や、相続のことでトラブルがあり、共有名義を解消したいという方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。
共有名義状態には、土地の資産価値を著しく下げてしまう、相続時のトラブルを招くなどのリスクがあります。
できることなら共有名義を避け、それぞれが単独名義で相続できる遺産分割がのぞましいでしょう。
辻・本郷グループの遺産分割・共有名義に詳しい弁護士が直接対応いたします。
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