還付金の勘定科目は主に4つ!種類ごとの違いや注意点を紹介

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監修者 宇都宮健太

還付金の勘定科目は「未収金」を使用することが多いですが、それ以外の勘定科目もあることをご存知でしょうか。
還付金を受け取ったら正しい勘定科目で仕訳をしなければなりませんが、還付金が発生する機会はそう多くありません。そのため、正しい勘定科目が何が迷いがちです。
そこで本記事では代表的な還付金の勘定科目4つを紹介します。また、代表的な仕訳例についても見ていきます。還付金が発生した時に、迷わず正しい処理ができるようにしましょう。

1.還付金とは、納めすぎていた税金の返還

還付金とは、納めすぎた税金が戻ってくることです。代表的な例が法人税と消費税を納めすぎたときです。具体的なシーンを紹介します。

1-1.法人税の還付金が発生するシーン

法人税の中間納付を行ったが、最終的に納付すべき税額が中間納付額よりも少なかった場合は納付しすぎた分が還付されます。例えば、次のようなケースです。

  • 中間納付後に業績が悪くなり、期末で最終的な納付額が減った
  • 期末にて、過去の赤字による繰越欠損金の適用を行った

1-2.消費税の還付金が発生するシーン

自社が支払った消費税額が、受け取った消費税を上回った場合に還付金が発生します。例えば、次のようなシーンです。

  • 新店舗や工場の建設・設備投資など大きな支出があり、消費税額を多く支払った。しかし、売り上げの計上は来期になるので受取消費税が少ない
  • 消費税が免除される輸出取引が多いが、仕入れは国内(課税仕入れ)で行っている。結果的に支払った消費税が多い

このほか、個人事業主が確定申告で所得税の還付を受けるケースもあります。本記事では法人の場合を中心に還付金の処理をお伝えしていきますが、個人事業主の場合についても触れていきます。

2.還付金の勘定科目3つ

還付金の具体的な勘定科目を3つ見ていきます。

2-1.未収金

未収金のうち、「未収法人税等」「未収消費税等」などが該当します。未収法人税・未収消費税は期末に納税額が確定して払いすぎた法人税/消費税がある分かったとき、還付を見込んで計上する勘定科目です。

<未収金とは>

未収金(未収入金)は、商品やサービスを提供したにもかかわらず、対価をまだ受け取っていない場合に使用する勘定科目です。本業以外の単発的な金銭債権に対して使われます。

2-2.雑収入

本業以外の収入である、雑収入で計上することも可能です。ただし、雑収入はいろいろな収入がまとまって計上されてしまうため、内訳が分からなくなりがちです。
他の雑収入と一緒になってしまい、お金の流れが見なくなってしまうのは経営上あまりよくありません。できることなら、還付金であることが分かる勘定科目を使用しましょう。

2-3.反対仕訳

過払いしてしまった税金がその期のうちに還付された場合は、反対仕訳をする方法もあります。例えば、自動車税を誤って二重に納めてしまったときや、社用車が不要になったので車検有効期間内に登録抹消した場合などの還付金に対して使用可能です。

3.還付金の仕訳例3つ

還付金の一般的な仕訳例を紹介します。

3-1.法人税の還付金

中間納付で支払った法人税が多かったことが期末に確定し、次期に還付金が支払われたケースの仕訳例です。

  • 中間納付時
    法人税の中間納付により、200万円を納付
借方貸方
仮払法人税等2,000,000 普通預金2,000,000
  • 期末時
    決算により、法人税額が150万円と確定
借方貸方
法人税等1,500,000仮払法人税等2,000,000
未収還付法人税等500,000

摘要欄には「中間納付の還付」などと書いておくといいでしょう。

  • 還付時
    還付金が銀行口座に振り込まれた
借方貸方
普通預金500,000 未収還付法人税等500,000
  • 摘要欄は「法人税還付金」としておくといいでしょう。

なお、還付加算金が一緒に振り込まれることもありますが、還付加算金については第4章で述べます。

3-2.消費税の還付金

一般課税の事業者が消費税の還付金が生じたときの仕訳は、経理処理の方法が「税抜経理方式」「税込経理方式」かによって異なります。なお、税抜経理方式と税込経理方式のどちらを選択するかは事業者の任意です。

3-2-1.税抜経理方式の仕訳例

税抜経理方式とは、仕入れや売上の取引金額と消費税額を分けて計上する処理方法です。税抜経理方式では取引のたびに、仕入れにかかった支払い消費税を「仮払消費税」、売上の際に受け取った消費税を「仮受消費税」として仕訳します。
取引金額のうち消費税を区分して計上するため経理処理が煩雑かもしれませんが、お金の状態をより正確に把握できます。

  • 期末時
    決算時には仮払消費税と仮受消費税を相殺させ、払いすぎた消費税額を「未払消費税等」として仕訳
借方貸方
仮受消費税1,000,000仮払消費税1,500,000
未収消費税等500,000
  • 還付時
    普通預金に還付金が振り込まれたときの仕訳
借方貸方
普通預金500,000未収消費税等500,000

3-2-2.税込経理方式の仕訳例

税込経理方式は仕入れ時に支払った代金と、商品やサービスを提供して受け取った売上金等に、消費税を含めて計上する処理方式です。仕入れにかかる消費税は仕入金額に、売上にかかる消費税は売上金額に含めて計上します。期中のお金の状態は把握しにくくいですが、日々の仕訳の手間は省けます。

  • 期末時
    決算時に払いすぎた消費税を「未収消費税」として仕訳
借方貸方
未収消費税等  500,000雑収入500,000
  •  還付時
    普通預金に還付金が振り込まれたときの仕訳
借方貸方
普通預金  500,000未収消費税等 500,000

3-3.反対仕訳

反対仕訳は、当初の仕訳に応じて反対の処理をすることです。例えば、租税公課で計上した自動車税が誤って多く納付したことがわかり、還付金がきるようなケースです。このケースの仕訳は次の通りです。

  • 納付時
    50,000円を現金で納付し、租税公課で計上した
借方貸方
租税公課  50,000現金50,000
  • 還付時
    本来の納付金は45,000円だったことが分かり、過払い分の5,000円が普通預金に振り込まれた
借方貸方
普通預金 5,000租税公課5,000

4.還付金を経理処理する際の注意点

還付金は原則として益金不算入です。本来支払う必要のない金額が返還されたものであり、事業収益ではないからです。ただし、例外もあります。

4-1.還付加算金は益金算入

還付金に「還付加算金」が追加されるときは、益金算入となるので注意します。

  • 還付加算金とは
    還付金は払いすぎた額が還付金として返還されるだけでなく、還付金に利息がつくことがあります。その利息相当分が「還付加算金」です。
  • 還付加算金の勘定科目は雑収入
    還付加算金は雑収入として益金に算入します。例えば、還付金100,000円と還付加算金が5,000円一緒に振り込まれた場合の仕訳例は次の通りです。
借方貸方
普通預金105,000未収還付法人税等100,000
雑収入5,000

4-2.税金は益金算入と益金不算入がある

税金については個別に取り扱いが異なります。法人の主な税金については次の通りです。

国税・法人税の還付金 益金不算入
地方税

・法人事業税 益金算入
・法人住民税の還付金 益金不算入

法人税や法人住民税は発生時に損金不算入となるため、還付金も益金には算入されません。一方で、法人事業税は発生時に損金に算入するため、還付時も益金算入とします。

消費税益金算入                    

消費税を税込経理で処理している場合、期末に払いすぎた消費税を「未収消費税等」として処理した場合も、還付の際に益金に算入します。

詳細 国税庁「No.6901 納付税額又は還付税額の経理処理

5.還付金の勘定科目に迷ったときは顧問税理士へ相談するのがベスト

還付金の勘定科目は複数あります。また、基本的に納付時と還付時で処理が必要です。還付金の処理が曖昧だと、いくら納税したかも曖昧になってしまうため、正確に行わなければなりません。

勘定科目は一旦これと決めたら、その後も同じものを使います。そのため迷ったときは、顧問弁護士に相談して今後もスムーズに経理処理ができるようにしましょう。

6.まとめ 還付金の勘定科目を理解しよう

法人税や消費税等の還付金を受け取る機会はそう多くないかもしれません。だからこそ勘定科目と仕訳を理解し、還付金が発生しても慌てず処理できるようにしたいものです。それによって経理のエキスパートに近づけることでしょう。