固定資産税をどの勘定科目に分類すべきか、お悩みではありませんか?
結論から申し上げると、固定資産税は「租税交課」に該当します。
また、固定資産税は経費として計上することができます。
これらを把握して、適切に経理処理を行うことは、税務上、また経営管理上においても非常に重要です。しかし、初めて固定資産税を処理する場合や、経理の初心者にとって、勘定科目や仕訳方法に関しては不安が大きいのではないでしょうか。
この記事をお読みいただければ、固定資産税の勘定科目の正しい分類方法や仕訳方法について、個人事業主の方も法人経営者の方も、必ず理解が深まります。
ぜひご一読ください。
目次
1.固定資産税の勘定科目は「租税公課」
固定資産税の勘定科目は「租税公課」に分類されます。
租税公課とは、企業や事業主が支払う税金や公的な費用に関する勘定科目です。一般的に、固定資産税や印紙税、自動車税などの公的な支出が含まれます。
固定資産税は経費として扱えるため、万が一にも脱税を疑われてしまわないように、正しい勘定科目に分類し、適切に経理処理を行うことが、より一層必要となります。
2.固定資産税の経費算入のタイミング
固定資産税を経費として算入するタイミングには、主に「固定資産税を納めた日」と「固定資産税の金額が確定した日」の2つがあります。経費処理のタイミングは、会計処理の基準(現金主義または発生主義)によって異なります。
複式簿記が必須となる法人や、個人事業主が青色申告を行う場合(65万円控除の適用を受ける場合)では、発生主義で計上します。それ以外であればどちらを選んでも問題はありませんが、必ずどちらか片方のタイミングを一貫させるようにしてください。
ここでは、それぞれのタイミングの特徴やメリット、デメリットについて詳しく解説します。
2-1.納めた日に経費算入
固定資産税の納付日を基準に経費として計上する方法です。この方法は「現金主義」と呼ばれる会計基準に基づき、実際に現金が支払われたタイミングで経費を記録します。個人事業主や小規模事業者に多く採用されており、支払いの事実をもって経費計上するシンプルな方法です。
特徴 | メリット | デメリット |
支払いの事実を経費の計上タイミングとする | 支払いと経費計上が一致するため、特別な記録管理を行う必要がなく、手間が少ない | 経営成績にズレが生じる可能性がある(例えば、会計年度末に未払金がある場合、翌年度に支払った金額がその年度の経費として反映されるため、実際の負担と経費の発生時期にズレが生じることがある) |
実際にお金が動いた時点で経費を記録する | 収支の動きに基づいているため、シンプルで現金収支の管理がしやすい |
2-2.金額が確定した日に経費算入
固定資産税の納付額が確定した時点で経費として計上する方法です。こちらは「発生主義」に基づいた会計処理で、特に法人会計で採用されることが多い方法です。
発生主義では、支払いが完了していなくても、税額が確定した時点で経費として計上するため、正確な経営成績が反映されやすいという特徴があります。
特徴 | メリット | デメリット |
金額が確定した時点で経費として計上するため、費用発生の事実をもとにした経費計上が可能 | 支払いタイミングに左右されず、実際に発生した費用を経費に計上できる | 支払い前に経費を計上することが求められ、未払金の管理などの手間が増える |
支払いが未完了でも経費を記録する | 決算時に未払金があっても、翌年度に支払う分をあらかじめ計上でき、経営成績や財務状態をリアルタイムに把握できる | 実際の支出は翌期になる場合があり、現金流出と状況が一致しないことがある |
現金主義・発生主義のどちらを選ぶかは、事業規模や会計ポリシーに応じて異なります。小規模事業者ではシンプルな現金主義を、財務状況の正確な把握が求められる法人では発生主義を採用するのが一般的です。
3.固定資産税の仕訳例
3-1.納めた日に経費算入した場合
納付日に計上する場合の仕訳例は以下の通りです。
借方 | 貸方 |
租税公課 ○○円 | 現金 ○○円 |
また、固定資産税を分割で納めた場合には、分割納付した日ごとに、上記仕訳例に則って、分割した金額分を仕訳します。
3-2.金額が確定した日に経費算入した場合
金額確定日に経費計上する場合の仕訳例です。この場合には固定資産税はまだ実際には納付していないため、貸方は未払金で処理します。
借方 | 貸方 |
租税公課 ○○円 | 未払金 ○○円 |
上記のように、金額確定時には借方に租税公課、貸方に未払金を計上して、固定資産税を実際に支払った日になってから、支払い金額に応じて、未払金を借方として計上し、未払金を減らしていくいう処理を進めていきます。
4.法人が固定資産税を納める場合
法人が固定資産税を支払う際には、法人は複式簿記を利用するため、発生主義で計上を行うことが原則となります。そのため、基本的に固定資産税の一部を未払金として計上する必要があります。
例えば、9月に固定資産税を納付することになっており、その金額が決定したというケースを見ていきましょう。
この場合、9月分の税額を未払金として処理します。仕訳例は以下のようになります。
借方 | 貸方 |
租税公課 ○○円(9月分) | 未払金 ○○円(9月分) |
このように、法人の場合には原則的に、固定資産税の金額確定日に計上する必要があります。
5.個人事業主は家事按分をして、一部を経費計上する
個人事業主の場合、自宅を仕事場として使っているときには注意が必要です。
固定資産税を必要経費とするためには、自宅の中で「業務使用の範囲(事業割合)」と「プライベートの範囲」に分け、事業割合のみにかかる固定資産税だけを経費計上しなければなりません。自宅の床面積のうち仕事で使っている面積分を求めるか、自宅で仕事に費やしている時間や日数を求めることで事業割合を算出できます。
これを家事按分といいます。
このように、個人事業主が自宅を仕事場としている場合には、家事按分(家庭と事業の按分)を考慮し、固定資産税の一部のみを経費計上する必要があります。
5-1.白色・青色申告の違い
白色申告者の場合、自宅の全体のうち50%を超える部分が業務用である場合のみ、家事按分して費用として計上することができます。ただし、白色申告でも、ケースによっては制限なく家事按分が認められる場合もあります。ご自身の場合がどうなるのか知りたい方は、ぜひ税理士へのご相談をご検討ください。
青色申告者の場合、白色申告のように家事按分に関する制限はありません。業務上かかった経費は割合に関わらずに家事按分できます。
5-2.家事に関連する費用分は「事業主貸」として処理
個人事業主が固定資産税を家事按分して、業務用ではなくプライベートな範囲分についての費用を仕訳する際には「事業主貸」として計上します。
5-3.家事按分をした場合の仕訳例
例えば、固定資産税が10万円だとして、そのうち50%を事業用として計上する場合の仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 |
租税公課 50,000円(50%の金額) | 現金 100,000円 |
事業主貸 50,000円(50%の金額) |
6.勘定科目に関するご相談は辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスにお任せ
適切な経費計上を行うことで、税務面でのリスクを軽減し、事業管理の効率化にもつながります。
辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスでは、経費処理に関するお悩みにももちろん対応しています。専門家にご相談いただくことで、より確実な経理処理が実現します。
ぜひ、ご相談ください。
7.まとめ
固定資産税は「租税公課」として経費計上可能な項目です。
納付日、もしくは金額確定日のタイミングで経費に計上することができます。
それぞれの仕訳方法や、法人や個人事業主での処理方法の違いに注意し、正確な経理処理を心がけましょう。