会費の勘定科目はどう選ぶ?それぞれの勘定科目や仕訳例を解説

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監修者 宇都宮健太

同業者団体に加入する際や他社との会合に参加する際など、ビジネスシーンでは「会費」と名のつく支出をする場面がよくあります。
その度に、「この会費はどの勘定科目で処理すればいいのだろう?」と悩んでいる経理担当者の方は多いのではないでしょうか。
正確性が求められる経理業務で、勘定科目の誤りは避けたいミスの一つです。

本記事では、会費に使われる勘定科目やその仕訳例を紹介しています。
この記事を読めば、会費の勘定科目選びはもちろんのこと、経理処理の際のポイントも掴むことができます。


1.会費の勘定科目は主に7パターン

「会費」という名目の支出は、「諸会費」または「会費」として仕訳するケースが多いです。

しかし、それぞれの会費の目的や内容などによって、適切な勘定科目は異なります。

会費の場合、主に7パターンの勘定科目が使われます。

  1. 諸会費・会費
  2. 雑費
  3. 交際費
  4. 支払手数料
  5. 寄付金
  6. 前払費用
  7. 長期前払費用

次から、それぞれの勘定科目が使われるケースを順番に解説していきます。

1-1.諸会費・会費

事業活動にあたって加入が必要な団体に支払う会費は、「諸会費」または「会費」の勘定科目を使用することができます。

「諸会費」または「会費」で仕訳する会費の例
  • 商工会議所や商工会の会費
  • 同業者団体(税理士会、弁護士会など)の会費
  • 自治会の会費

1-2.雑費

上記の「諸会費」や「会費」に当てはまるような支出であっても、年間の支払金額や支払頻度が少ない場合は、勘定科目を新設せず「雑費」として処理することもできます。

ただし、雑費の勘定科目は使い勝手がよく多用されがちなため、経費の内訳が把握しにくくなるデメリットがあります。

今後も継続的に支払う予定のある会費がある場合は、初めから「諸会費」などに勘定科目を分けておくことが望ましいです。

1-3.交際費

事業関係者の接待や慰安などを目的とした懇親会を行ったり、社交目的の団体に加入したりするために会費を支払う場合は、業務と直接的な関係が薄いため、「諸会費」ではなく「交際費」の勘定科目を使う必要があります。

「交際費」で仕訳をする会費の例
  • 事業関係者との親睦・交流を目的としたイベントの会費
  • 取引先を接待するための会食や懇親会の会費
  • 社交団体(ライオンズクラブやロータリークラブなど)の会費

法人が交際費を損金算入する際には、資本金などの額に応じて、損金にできる金額に制限があります。

また、個人事業主についてはそのような制限はありませんが、ロータリークラブの会費については経費にできないと判断された裁判例があります。

1-4.支払手数料

会費が、業務で行う商品やサービスの取引に付随する手数料にあたる場合は「支払手数料」として仕訳します。

「支払手数料」で仕訳をする会費の例
クレジットカードの年会費

クレジットカードの年会費は、クレジットカードを利用したり、カード会員向けの優待サービスなどを受けたりするための手数料としての性質があるため、支払手数料として処理することができます。

1-5.寄付金

会費の支払いが、実質的に見返りのない寄付行為にあたる場合は、「寄付金」の勘定科目を使います。

「寄付金」で仕訳をする会費の例
  • 公益法人やNPO法人などへの賛助会費
  • 政治団体への会費
  • 神社への奉賛会費

法人の場合は、寄付金を損金にできる金額に限りがあることに注意が必要です。

また、個人事業主の場合は、寄付金を必要経費に計上することができません。一方、寄付の相手方によっては、確定申告の時に寄附金控除を受けることができます。

1-6.前払費用

同業者団体などの会費を数年分まとめて支払った場合は、原則としてその年の分だけを「諸会費」などで経費にできます。翌年以降の分は、「前払費用」という勘定科目を使って、資産として処理しなければなりません。

翌年になったら、前払費用として仕訳した会費を、「諸会費」などに振り替えます。

1-7.長期前払費用

会費が「前払費用」に該当する場合のうち、その効果が支払いから複数年にわたる場合は、「長期前払費用」という勘定科目を使用します。この場合、原則として会費を一度に経費処理することができず、いったんは「繰延資産」として資産に計上し、毎年均等に経費にしなければなりません。

法人が同業者団体などに支払う入会金については、繰延資産に該当する場合があります。
その場合は、原則として「長期前払費用」として処理した上で、所定の年数で均等に経費にする必要があります。
ただし、金額が20万円未満の場合は、一度に費用計上することも可能です。


2.さまざまな会費の仕訳例

次から、ビジネスの場でよくある「会費」の仕訳例をご紹介します。

2-1.商工会議所に年会費を口座振込で支払った場合

商工会議所に対して、年会費20,000円を普通預金口座から振り込んだ場合は、次のように仕訳します。

借方貸方
諸会費20,000普通預金20,000

2-2.ビジネス交流会の会費を現金で支払った場合

会社の役員が業務の一環でビジネス交流会に参加した場合、会費5,000円を現金で支払った時は「諸会費」で仕訳します。

借方貸方
諸会費5,000現金 5,000

一方、個人事業主が事業目的でビジネス交流会に参加した場合、会費4,000円を現金で支払った時は「交際費」で仕訳します。

借方貸方
交際費4,000現金4,000

法人の場合、「ビジネス交流会」の名目であっても、実態が社交目的である場合は交際費として処理する必要があります。

また、個人事業主の場合、事業と関係がないビジネス交流会の会費は、経費にすることができません。

2-3.クレジットカードの年会費を口座振替で支払った場合

事業で使用するクレジットカードの年会費10,000円を普通預金口座から支払った時は、次のように「支払手数料」として処理するのが一般的です。

借方貸方
支払手数料10,000普通預金10,000

なお、クレジットカードの年会費は、カード会員になるための会費でもあることから、「諸会費」や「雑費」として処理することもできます。

2-4.法人が業界団体への入会金を口座振込で支払った場合

法人が同業者団体に対し、入会金250,000円を普通預金口座から支払うとともに、その入会金を5年で償却する場合は次のように仕訳します。

【入会金を支払った時】

借方貸方
長期前払費用250,000普通預金250,000

【決算の時】

借方貸方
長期前払費用償却50,000長期前払費用50,000

3.個人事業主によるプライベート目的の会費は経費にできない

個人事業主がもっぱらプライベート目的で支払った会費は、経費にすることができません。個人事業主の経費は、事業に関連するものに限られるためです。

ただし、事業とプライベート両方の目的で支払った会費は、事業とプライベートそれぞれの割合で按分して、事業目的の分だけを経費に計上することができます。


4.会費に対価性がある場合は消費税の課税対象にな

会費の支払いに対して、物品やサービスなどの明らかな対価を得られるような場合は、会費が消費税の課税対象になる可能性があります。

消費税が課税される会費の例
  • クレジットカードの年会費
  • 各種講座やセミナーに参加する際の会費
  • 書籍の定期購読代金としての会費
消費税が不課税となる会費の例
  • 同業者団体や商工会議所の年会費
  • 公益団体などへの寄付金

消費税が課税されるケースでは、クレジットカードを利用したり、講座やセミナーを受講したりするために会費が支払われており、明らかに対価性があります。

一方、消費税が不課税となるケースでは、会費の対価性が認められません。
例えば、同業者団体などへの年会費は、団体の運営費用に充てられるものであり、一般的には対価性がないと考えられています。


5.1つの会費に複数の用途が含まれる場合は内訳に応じて仕訳する

1つの会費に、勘定科目が異なる複数の用途が含まれている場合は、それぞれの用途ごとに勘定科目を分けて処理なければなりません。会費の請求書等を確認したり、支払先に問い合わせたりするなどして、会費の内訳を把握することが必要です。

ただし、内訳の金額がはっきりしていない場合は、合理的な割合で各勘定科目に分けて仕訳をするようにします。合理的な割合の判断が難しい場合は、税理士のような専門家に相談してみましょう。


6.勘定科目についてのお悩みは辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスにご相談を

日々の経理業務では、会費のように勘定科目の使い分けが悩ましい支出を処理しなければならない場面が多々あります。

辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスを利用すれば、気兼ねなく税務のプロフェッショナルに相談することができます。

勘定科目の判断に不安がある場合は、専門家のアドバイスを受けながら処理を行うのが確実です。


7.まとめ

「会費」名目の支出を処理する際には、次のようなポイントに留意する必要があります。

  • 会費の勘定科目は「諸会費」や「会費」とは限らず、ケースバイケースで判断が必要
  • 個人事業主が支払うプライベート目的の会費は経費にできない
  • 会費に対価性がある場合は消費税が課税される
  • 一つの会費に複数の用途が含まれる場合は、内訳に応じて複数の勘定科目で仕訳する

会費、と一口に言っても実態はさまざまであり、処理方法に迷うケースが少なくありません。

会費の経理に自信がない時は、辻・本郷 税理士法人など、信頼できるプロフェッショナルに相談しながら着実に処理を進めましょう。