
協賛金の処理を求められたときに困ったことはありませんか?イベント支援や地域貢献活動など、ビジネスの現場では様々な形で協賛金の話が持ち上がります。しかし特に中小企業の経理担当者にとって、普段の取引には登場しない仕訳の処理は頭を悩ませる課題の一つとなっています。この記事では、協賛金の勘定科目の詳しい説明、具体的な仕訳例、注意点を解説します。この記事を読むことで協賛金の仕訳に自信を持てるようになりましょう。
目次
1.協賛金とはイベントや活動を支援するための金銭のこと
協賛金とは、イベントや活動を支援するために提供される金銭のことを指します。企業や個人が主催者に対して協賛金を提供することで、その活動の運営や成功をサポートします。
また協賛金を支払うことにより、企業名を周知したりイメージを高めたりすることもできます。逆に受け取る側は資金調達が容易になり、イベント規模の拡大や質の向上をすることができます。
なお、協賛金を支払う企業は適切な会計処理を行うことで、企業の経費として認められる可能性があり、その場合は支払う税金を減らすことができます。
2.協賛金を支払った場合の勘定科目
協賛金を支払う場合、その内容や目的に応じて適切な勘定科目を選びます。協賛金を支払う場合の勘定科目は以下の勘定科目に分かれます。それぞれを詳しく解説します。
1.広告宣伝費
2.接待交際費
3.寄付金
4.諸会費
2-1.広告宣伝費
広告宣伝費は、商品やサービスを広く知ってもらうための費用であり、全額を損金算入することができます。
2-1-1.広告宣伝費は商品やサービスの宣伝を目的とした支出
広告宣伝費とは、商品やサービスの認知度を高めるために広告掲載やキャンペーンなどにかかる費用を指します。例えば企業名をイベントのパンフレットや看板に掲載してもらうために支払った協賛金がこれに該当します。
2-1-2.広告宣伝費は全額損金算入が可能
広告宣伝費は、全額を損金算入することが可能です。広告宣伝費は収益を得るための支出とみなされるため、全額を課税所得から控除することが認められています。
2-2.接待交際費
接待交際費は、取引先との関係を維持・強化するために支出する費用です。接待交際費は、その税務上の取り扱いに一定の制限がある点に注意が必要です。
2-2-1.接待交際費は取引先との関係維持のための支出
協賛金が接待交際費に該当するのは、取引先との良好な関係を保つことを目的として支払われる場合です。例えば取引先が主催するイベントに協賛金を支払い、企業間の関係強化を図る場合がこれに該当します。
2-2-2.接待交際費は一部のみ損金算入が可能
接待交際費は税務上、一部のみ損金算入が認められる費用です。税法では、交際費が過度に利用されることを防ぐため、全額損金算入を認めず、一定の制限を設けています。以下の表のようになります。
中小企業(資本金1億円以下) | 年間800万円もしくは飲食費の50%までのいずれかが損金算入可能 |
個人事業主 | 制限なし |
大企業(資本金1億円を超える) | 飲食費の50%までが損金算入可能 |
例えば中小企業の場合、年間800万円までの接待交際費は損金算入が可能です。一方、大企業では飲食費の50%といった限定的な範囲でのみ損金算入が認められています。
2-3.寄付金
協賛金が対価を伴わない支出として提供された場合、「寄付金」として扱われます。寄付金には税務上の取り扱いに制限がある点に注意が必要です。
2-3-1.寄付金は対価性のない金銭や物品の提供
寄付金は対価を求めずに金銭や物品を提供する支出を指します。寄付金は受益者や公益のために無償で支出されるものであり、企業が直接的な利益や見返りを得ないことが特徴です。例えば、災害被災地への義援金や地域活動を支援するための金銭の寄付は、対価性がないため寄付金として扱われます。
2-3-2.寄付金は制限付きで損金算入になる
寄付金は税務上、全額ではなく一部のみ損金算入が認められます。寄付金は公益性のある支出であっても、税務上の全額控除は認められていません。税法で定められた計算式に基づき、企業の資本金や所得に応じた限度額まで損金算入することができます。この制限は、企業が過度に寄付金を利用しないようにするためです。
寄付金は以下のように4種類に分けられ、損金算入についても制限されます。
寄付をする場所 | 損金算入可能か |
国や地方公共団体 | 全額損金算入可能 |
指定寄付金 (国家政策に基づく重要な寄付先) | 全額損金算入可能 |
特定公益増進法人 (学校法人、公益法人など) | 計算に基づき一定の限度額まで損金算入可能 |
一般の団体や組織 | 計算に基づき少額のみ損金算入可能 |
寄付金の種類に応じて、損金算入の範囲が全額から限定的な範囲まで指定されており、国や公益性の高い団体への寄付が特に優遇されているのが特徴です。このように寄付金は制限付きで損金算入可能なため、種類や限度額を正確に把握する必要があります。
2-4.諸会費
諸会費は企業や個人が団体に加入したり、会員資格を維持したりするための費用を指します。この費用は基本的に損金算入が認められる点が特徴です。
2-4-1.諸会費は団体への加入や会費継続のための支出
諸会費とは、企業や商工会議所や業界団体、同業組合などに所属する際に支払う費用です。これには入会時の初期費用や年会費が含まれ、団体との関係維持や情報収集、交流のために支出されるものです。
2-4-2.諸会費は原則として損金算入が可能
諸会費は原則として全額を損金算入することが可能です。会費は、企業が事業を進める上で、必要な情報やネットワークを得るための支出と考えられるからです。そのため、税務上損金算入が認められています。例えば、商工会議所に支払う年会費は、地域の企業同士の交流や、経営に役立つ情報を受け取るための支出です。このような費用は企業活動に貢献するため全額損金算入が認められます。ただし高額なゴルフの会員費など企業活動とは無関係の支出は損金算入できない場合があります。諸会費は事業活動に関係する支出として原則全額損金算入が可能ですが、目的や性質によって例外もあるため注意が必要です。
3.協賛金を支払った場合の仕訳例
協賛金を支払った場合はその性質に応じて「広告宣伝費」「接待交際費」「寄付金」「諸会費」などの勘定科目で仕訳を行います。ここでは具体例を挙げて仕訳を示します。
3-1.広告宣伝費
地域のイベントに協賛し、企業ロゴをパンフレットに掲載してもらって現金10万円支払った場合
借方 | 貸方 | ||
広告宣伝費 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
3-2.接待交際費
取引先が主催するゴルフコンペに協賛金を振り込みで20万円を支払い、関係強化を図った場合
借方 | 貸方 | ||
交際費 | 200,000 | 普通預金 | 200,000 |
3-3.寄付金
災害支援のため、NPO法人に義援金として20万円を振り込みで寄付した場合
借方 | 貸方 | ||
寄付金 | 200,000 | 普通預金 | 200,000 |
3-4.諸会費
商工会議所に年会費として現金5万円を支払った場合
借方 | 貸方 | ||
諸会費 | 50,000 | 普通預金 | 50,000 |
4.協賛金を受け取った場合の勘定科目
協賛金を受け取った場合、その内容や目的に応じて適切な勘定科目を選びます。協賛金を受け取った場合の勘定科目は以下の勘定科目に分かれます。本章では各科目の特徴を示していきます。
1.売上高
2.雑収入
3.協賛金収入
4.寄付金収入
4-1.売上高は主な営業活動から得た収益
売上高は、企業の本業である営業活動から得られる収益を指します。例えば、商品やサービスを提供する対価として受け取った協賛金がこれに該当します。
4-2.雑収入は本業以外から得た小規模な収入
雑収入は、企業の重たる営業活動以外から得られる収益で、金額が比較的小規模な場合に適用されます。例えば、取引先から受け取った少額の協賛金や一時的な支援金がこれに該当します。
4-3.協賛金収入はイベントや活動の協賛で得た収入
協賛金収入は、イベントや活動の運営費用をまかなうために受け取った協賛金を指します。例えば企業が主催するスポーツ大会に賛同して支払われた協賛金はこの勘定科目で処理します。
4-4.寄付金収入は寄付によって受け取った金銭的支援
寄付金収入は、対価を求めずに提供された寄付金を指します。例えば、災害支援のために団体や個人から無償で寄付された金銭は、この勘定科目で処理します。
5.協賛金を受け取った場合の仕訳例
協賛金を受け取った場合はその性質に応じて「売上高」「雑収入」「協賛金収入」「寄付金収入」などの勘定科目で仕訳を行います。ここでは具体例を挙げて仕訳を示します。
5-1.売上高
自社製品の販促イベントで、他者から協賛金20万円を振り込みで受け取った場合
借方 | 貸方 | ||
普通預金 | 200,000 | 売上高 | 200,000 |
5-2.雑収入
自社が開催した社内イベントで、取引先から協賛金を現金で5万円を受け取った場合
借方 | 貸方 | ||
現金 | 50,000 | 雑収入 | 50,000 |
5-3.協賛金収入
地域のスポーツイベントを主催し、企業から協賛金30万円を振り込みで受け取った場合
借方 | 貸方 | ||
普通預金 | 300,000 | 協賛金収入 | 300,000 |
5-4.寄付金収入
災害支援活動を行う団体として、個人から寄付金10万円を振り込みで受け取った場合
借方 | 貸方 | ||
普通預金 | 100,000 | 寄付金収入 | 100,000 |
6.対価性のある場合には消費税が発生する
協賛金が何らかの提供されるサービスや商品の対価としての性質を持つ場合には、消費税が発生することがあります。これは、対価性が生じることで取引が商業的な提供として扱われるためです。例えばこのような場合があります。
広告掲載: 協賛金と引き換えに、イベント会場やパンフレットなどに自社の広告を掲載する場合
商品販売: 協賛金と引き換えに、イベント会場で自社商品を販売する場合
優先席: 協賛金と引き換えに、イベントの優先席を確保する場合
このように協賛金を支払う際には、企業名の掲載やロゴの使用権などの見返りが含まれる場合があります。このような対価性がある場合には消費税も発生するため、支払い時には協賛金額に加えて消費税分も考慮する必要があります。
7.税務処理のサポートはぜひ辻・本郷 税理士法人へ
協賛金の勘定科目の選定にお困りの際は、ぜひ辻・本郷 税理士法人のサポートをご利用ください。勘定科目のっ選定だけでなく、難しい専門用語も分かりやすく丁寧に解説し、効率よく経理処理ができるようアドバイスいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
8.まとめ
協賛金の会計処理は、その目的や性質によって適切な勘定科目を選択することが重要です。協賛金を支払う際は広告宣伝費、接待交際費、寄付金、諸会費などから取引の実態に応じて選択し、協賛金を受け取る際は売上高、雑収入、協賛金収入、寄付金収入などから適切に計上します。また、対価性の有無によって消費税の取り扱いが異なり、損金算入の可否も勘定科目によって異なります。協賛金の正しい勘定科目を選択し、スムーズな経理業務をしていきましょう。