不動産の共有持分を所有している方は多く、その取り扱いに悩むことも少なくありません。
共有持分とは、複数人が共同で不動産を所有する形態(共有名義)での、一人ひとりが所有している分の権利割合のことです。
例えば、両親が亡くなり兄弟姉妹で一つの土地を相続した場合、この土地は兄弟姉妹の共有名義の共有土地として共有されます。
兄弟姉妹の各々は土地の共有持分を所有することになりますが、この共有持分をどう扱うかは共有者同士の関係性によって複雑になってしまいます。
このような場合、共有持分について詳しく知ることで、不要なトラブルを避けることができるようになります。
この記事では、共有持分の基本的な概念から、共有不動産・共有持分の売却や利活用に存在する条件、そしてトラブル回避のために共有持分をどうすべきか、詳しく解説します。
記事を読むことで、不動産の共有持分をどのように取り扱うべきか、自信を持って判断できるようになります。共有持分に悩む方々の情報源としてご活用ください。
目次
1. 共有持分とは?
共有持分とは、複数人が共有名義で不動産を所有する場合に、それぞれの所有権の割合を示す用語です。
たとえば親から相続した土地を兄弟で共有する場合、兄弟の各人はその土地を所有する権利の一部を持つことになります。その割合が共有持分です。
共有持分の割合については、一般的には、不動産を取得する際に支払った資金額の割合と同等にされます。
たとえば「二人で同額を出し合って、その土地を購入した」という場合には、その二人が共有土地の共有持分2分の1ずつを持つと設定されていることが一般的です。
「自分がお金を出して購入した不動産ではなく相続した不動産だから共有持分の割合がどうなっているのか、分からない」という場合には「固定資産税通知書」や「登記事項証明書」で確認することができます。
「固定資産税通知書」は、毎年4月から6月ごろに、共有者の中の代表者宛てに各市区町村から交付されます。代表者以外の方は、法務局で誰でも取得できる「登記事項証明書」にて確認しましょう。
2.共有持分を所有し続けるリスクが表出される5つの場面
共有状態を解消せず共有持分を所有し続けた場合、他の共有者との兼ね合いが必要である点が大きなリスクであると言えます。
不動産の共有者が存在すると、不動産を売却などしたい際や固定資産税を支払う際など、要所要所で他の共有者との意見調整が必要となります。特に、共有不動産に関する重要な決定をする際には、全員の同意が求められることが多く、合意形成に時間がかかることがあります。
(たとえば、建築物の増改築や、畑を宅地に造成するといった変更行為、譲渡したり担保設定したりする処分行為には共有者全員の合意が必要です。
建物の改装や宅地の整地といった管理行為には、持分割合の過半数の同意が必要です。
また、共有不動産の固定資産税については、共有者全員に連帯の納付義務があります。実際に支払うのは代表者一名ですが、一般的には、共有者全員が話し合って代表者に支払いを行うことが求められます。さらに、代表者が支払わなかった場合には、他の共有者に支払い義務が回ってきます。)
以上のように、共有持分を所有し続けていると、他共有者との話し合いや配慮を多分に求められます。
こうしたリスクが表出してくる場面を5つ、この章でご紹介します。
2-1.相続により共有者が増え続ける場面
共有者が死亡すると、その持分は相続人に引き継がれます。
相続人には子どもだけでなく配偶者も含まれます。そのため、共有者が離婚や再婚などをしていれば、相続の発生後に、どんどん自分とは面識のない共有者が増えてしまうということもあります。共有者が増えるにつれて、共有持分の扱いについての話し合いが難しくなるリスクが生じてしまいます。
2-2.共有者が認知症になる場面
共有者が認知症になってしまうと、その共有者が管理に関わっていたり、共有名義を解消したくなった場合にも話し合いが難しくなるといったリスクが生まれます。
その場合、認知症になってしまった共有者の成年後見人を立てて交渉を進める必要があるのですが、この成年後見人を立てる手続きも複雑になることがあります。
2-3.共有者が行方不明になる場面
縁遠い共有者が増えると、所在が不明な共有者が出てくることがあります。
共有者と連絡が取れないと、話し合いができず、共有不動産の売却などができなくなるリスクが生じます。
令和5年4月から施行された改正民法(所有者不明土地等関係)では、相続開始から10年経過したときに限り、所在不明の相続人との共有関係を解消できるようになりました。しかし、解消するためには裁判所の決定を得る必要がある等、手続きは複雑で難しくなる可能性があります。
民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について(法務省)
2-4.第三者が共有者になる場面
共有不動産について、他の共有者が不動産業者に自身の共有持分のみを売ってしまう可能性もあります。
不動産業者は買い取った共有持分の買い手を探し、共有者に持分を買い取らないか持ち掛けてくるか、又は、第三者に共有持分を売却してしまいます。
そのため、業者と交渉がうまくできなければ、第三者が共有者になってしまう可能性があり、そのような場面では、面識のない第三者である他共有者との合意形成などはさらに難しくなるリスクがあります。
2-5.共有持分だけを売却したい場面
ご自身の共有持分のみを売却する場合、共有者が全員で合意して不動産を売却した場合の一人あたりの分配額や単独名義の不動産の価値に比べて低い評価がされることが多いです。これは、共有持分の買い手が限定されるため、市場価値が下がるからです。
よって、共有持分だけで売却したいという場面では、ご自身が比較的少額な利益しか得ることができないリスクがありますし、また、他の共有者から見ると「2-4」の状況になるため、他の共有者から不満を持たれるリスクが生じやすいです。
3.共有持分を所有することにはデメリットも大きい
共有持分を所有していることは、3章のデメリットを考慮すると、長期的に見て不利益を生じると言えます。共有名義を解消する(それぞれの単独名義にする・全部の持分を取得する・共有持分を手放す等)ことで、相続や売却などの際にトラブルを回避し、資産を有効に活用することが可能となります。
4.共有名義を解消する方法
上記の表の通り、共有持分を手放して、共有名義を解消する方法としては、大きく分けて7つの選択肢があります。売却など一つの方法に限定するのではなく、自分の状況にあった選択肢を取るといいでしょう。
詳しくは以下のURLのページでご確認ください。
https://www.ht-tax.or.jp/sozoku-guide/joint-names-resolution
5.共有名義でお困りの方は弁護士にご相談を
共有持分に関する問題は法律的に複雑なケースが多いため、専門家の助言が必要です。弁護士に相談することで、最適な解決策を見つけることができ、円滑に手続きを進めることが可能です。
共有名義についてお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。
共有名義状態には、土地の資産価値を著しく下げてしまう、相続時のトラブルを招くなどのリスクがあります。
できることなら共有名義を避け、それぞれが単独名義で相続できる遺産分割がのぞましいでしょう。
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6.まとめ
共有持分とは、複数人が共有名義で不動産を所有する場合に、それぞれの所有権の割合を示す用語です。
持分割合については「固定資産税通知書」や「登記事項証明書」にて確認しましょう。
共有持分の固定資産税については、共有者全員が連帯で納付義務があります。支払うのは代表者一名ですが、代表者が支払わない場合には、他の共有者に支払い義務が回ってきます。注意しましょう。
共有持分の不動産を所有することには、メリットもデメリットも存在します。特にデメリットが大きい場合は、共有名義を解消することを検討するのが賢明です。
共有名義を解消する方法を知り、必要な場合には専門家に相談することで、適切な対応を取ることができます。共有持分に関する悩みを解消し、資産を有効に活用するための第一歩として、ぜひこの記事を役立ててください。