経営セーフティ共済とは?制度の概要と2024年の改正内容まとめ

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監修者 宇都宮健太

「経営セーフティ共済」は、中小企業が抱える経営リスクに備えるための強力な制度として注目されています。

取引先の倒産や売掛金の回収不能といった予期せぬトラブルが発生した際、資金繰りの危機に直面する企業は少なくありません。

経営セーフティ共済では、取引先が倒産した際などに無利子で資金調達ができるため、予期せぬ資金繰りの危機に対処することができます。

このように、リスクに対処し、経営の安定を図るために、経営セーフティ共済を活用することは非常に効果的です。この記事では、その仕組みやメリット、2024年10月になされた制度改正について詳しく解説し、あなたの企業に最適なのかどうか考えるお手伝いをいたします。

目次

1.経営セーフティ共済の概要

取引先の倒産による連鎖倒産から中小企業、事業主を守るための制度が、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)です。

国が運営するこの制度は、取引先が倒産した際に事業資金を借り入れることができる、主に中小企業経営者のための相互扶助制度となっています。この章では、経営セーフティ共済の概要について解説していきます。

1-1.取引先企業が倒産したときに共済金の借入が受けられる中小企業向けの共済制度である

経営セーフティ共済は、取引先が倒産した場合に資金繰りのリスクを軽減するために、中小企業向けに設計された共済制度です。

掛金を積み立てていくことで、いざという時に共済金を借り入れられる仕組みになっています。

例えば、取引先が倒産して売掛金が回収できなくなった場合、無利子で掛金の最大10倍(最高8,000万円)まで借入できるため、企業の財務安定に寄与します。

1-2.独立行政法人が主体となって運営しているため、国が全額出資している

経営セーフティ共済は、国が設立した独立行政法人「中小企業基盤整備機構」が運営しています。

これは国が全額出資している制度であり、財政的な安定性や信頼性が高いのが特徴です。

さらに、国が支援する制度であるため、一般の融資などに比べても、格段に利用しやすい条件が整えられています。

1-3.返還期間は貸付金額により5~7年間で毎月均等償還する

借入金の返済期間は、借入金額に応じて5年から7年まで設定されています。この期間内で毎月均等に返済することになっているため、資金計画を立てやすいというメリットもあります。

企業のキャッシュフローに無理がないよう、柔軟な返済スケジュールが提供されています。

共済金を償還期日までに償還しなかったときは、年14.6%の違約金が課されるため、必ず期日は守りましょう。

また、共済金の償還期日から3か月を経過しても共済金の償還または違約金の納付がなかったときには、納付された掛金から支払い予定額分を取り崩して、共済金の償還または違約金の納付にあてる仕組みとなっています。

借入額と償還期間の相関については、以下の表をご覧ください。

借入額償還期間(6か月の据置期間を含む)償還方法
5,000万円未満5年54回均等分割償還
5,000万円以上6,500万円未満6年66回均等分割償還
6,500万円以上8,000万円以下7年78回均等分割償還

 

1-4.借入額の上限は掛金や売掛金によって決まる

経営セーフティ共済の借入額は、掛金総額の10倍(最高8,000万円)または取引先の倒産により発生した売掛金の回収困難額のいずれか低い方と定められています。

このため、掛金を増やすことで、将来の万一の際に備えて借入額を引き上げることも可能です。

2.経営セーフティ共済の貸付制度について

2-1.共済金の貸付

共済金の貸付は、取引先の倒産により売掛金等の回収が困難になった場合に利用できる制度です。

共済金の貸付制度には、以下のような特徴があります。

・無担保・無保証人で借入可能

・掛金総額の10倍まで借入可能(最高8,000万円)

・無利子での借入

・貸付期間は5〜7年(6ヶ月の据置期間含む)

2-2.一時金の貸付

一時金の貸付は、事業資金が一時的に必要になった場合に利用できる制度です。取引先の倒産などの要件を満たさなくとも借入できるため、資金源として活用する事業主の方も少なくありません。

一時金の貸付制度には以下のような特徴があります。

・解約手当金の95%を上限として借入可能

・貸付期間は1年間

・有利子(金融情勢により変動)

・一括返済方式

・借換制度あり(同額・増額・減額)

3.経営セーフティ共済の加入条件

経営セーフティ共済は、中小企業や個人事業主のすべてが加入できるわけではありません。

加入資格は特定の業種に限定されており、例えば製造業、建設業、運輸業、サービス業など、多くの中小企業らが対象とされています。

しかし、業種によって、常時使用する従業員数などの加入条件が異なるため、加入を検討する際には自身の場合は経営セーフティ共済の対象であるかどうかを確認することが必要です。

3-1.業種ごとの加入条件

経営セーフティ共済には、以下の条件を満たす中小企業者が加入できます。

①1年以上事業を継続していること

②業種別の従業員数または資本金の基準を満たすこと

②で述べた業種別の詳細な条件は、以下の通りです。

業種常時使用する従業員数資本金額または出資の総額
製造業、建設業、運輸業、その他の業種300人以下3億円以下
卸売業100人以下1億円以下
サービス業100人以下5,000万円以下
小売業50人以下5,000万円以下
ゴム製品製造業900人以下3億円以下
ソフトウェア業・情報処理サービス業 300人以下3億円以下
旅館業200人以下5,000万円以下

※従業員数か資本金のいずれかの条件を満たせば加入可能です。

3-2.加入できないケースについて

経営セーフティ共済に加入できないケースは複数あります。以下にその一覧を記載してあります。ご一読ください。

 ・医療法人、NPO法人、外国法人

 ・取引先に対して売掛債権等が発生しない業種

 ・開業1年未満の事業

 ・住所や事業の変更を繰り返し行い、継続的な取引が把握できない場合

 ・事業の経理内容が不明な場合

 ・所得税や法人税の滞納がある場合

 ・経営セーフティ共済への重複加入がある場合

 ・既存の借り入れ(共済金および一時金の貸付)を滞納している場合

 ・中小機構からの共済金、一時貸付金、早期償還手当金、解約手当金の返還請求を受けているにもかかわらず、返還がされていない場合

 ・中小機構から共済契約を強制解除された日から1年未満である場合

 ・共済金や一時金の貸付貸付を不正に借り入れようとした日から1年未満である場合

4.経営セーフティ共済の掛金について

経営者を守る重要なセーフティネットである経営セーフティ共済では、月々の掛金を柔軟に設定できます。この章では、税制上の優遇措置も受けられるこの制度の掛金についてご説明します。

4-1.掛金の月額は5,000円から20万円までの範囲(5,000円単位)

経営セーフティ共済の掛金は、以下のような金額に設定ができます。

・最低月額:5,000円

・最高月額:200,000円

・増額単位:5,000円

・任意のタイミングで月額の変更が可能

4-2.掛金の積立限度額は総額800万円まで

経営セーフティ共済の掛金総額が800万円に達すると、それ以上の積立はできません。そのため、800万円に達した時点で掛金の納付は自動的に停止されます。ただし、800万円に達したのちも解約せずに契約を継続することも可能です。

4-3.納付方法は預金口座振替

経営セーフティ共済の掛金の納付方法は預金口座振替となっており、毎月27日(金融機関休業日の場合は翌営業日)に自動引き落としされます。引き落とし口座の変更は随時可能で、前納(最大12ヶ月分)も可能となっています。

4-4.掛金は法人の場合は損金、個人の場合は経費に算入が可能

経営セーフティ共済の掛金は、全額を損金または必要経費として計上可能です。

確定申告時には納付証明書の添付が必要となりますのでご注意ください。

ただし、2024年10月からの制度改正により、解約後2年以内の再加入時は損金算入制限が科せられるようになりました。詳しくは10章をご一読ください。

4-5.掛金の払い込みを止められるケース

①共済金の貸付を利用した場合

②掛金総額が掛金月額の40倍以上に達した場合

上記①、②のようなケースでは、いずれの場合も6ヶ月間、掛金の払い込みを停止できます。停止期間終了後は自動的に払い込みが再開されます。

5.経営セーフティ共済に加入する方法

経営セーフティ共済への加入を検討されている経営者の方々にとって、手続きの流れや必要書類を事前に把握しておくことは重要です。

この章では、加入手続きの窓口具体的な流れ、また、準備すべき書類について、分かりやすく解説していきます。

5-1.加入の手続きの窓口

経営セーフティ共済の加入についての窓口となるのは、中小機構と業務委託契約を締結している団体等(委託団体)、または金融機関の本支店(代理店)です。

具体的には、以下の例のような機関で手続きが可能です。

・商工会議所

・商工会

・中小企業団体中央会

・中小企業の組合

・損害保険ジャパン株式会社

・金融機関(銀行、信用金庫など)

5-2.加入までの流れ

経営セーフティ共済に加入するまでには、大きく分けて4つのステップがあります。

STEP①必要書類を入手する

窓口で直接受け取るか、中小機構のウェブサイトからダウンロードする方法があります。

以下のURLからダウンロードできます。

経営セーフティ共済 様式一覧

STEP②書類に記入する

必要事項を漏れなく記入しましょう。押印が必要な箇所も確認しておいてください。

STEP③窓口での手続きを行う

必要書類の提出と、申込内容の確認を行います。

STEP④中小機構からの書類を受け取る(約2ヶ月後)

共済契約締結証書と加入者必携、その他の関係書類が約2ヶ月後に送付されてきます。

5-3.必要書類

加入する窓口によって必要な書類は異なりますが、ほとんどの窓口で求められる基本的な必要書類は以下の通りです。

・契約申込書

・掛金預金口座振替申出書

・重要事項確認書兼反社会的勢力の排除に関する同意書

また、窓口により追加で必要となる可能性のある書類として、以下のようなものがあります。

・本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)

・印鑑証明書

・登記事項証明書(法人の場合)

・決算書類

・事業税の納税証明書

・所得税や法人税の確定申告書

具体的にどの書類が必要になるかは、窓口に事前に確認することをおすすめいたします。

6.経営セーフティ共済の5つのメリット

経営セーフティ共済は中小企業、事業主の方にとって多くのメリットを提供しています。倒産時などの企業安定化のために活用する前に、その5つのメリットについて知っておきましょう。

6-1.無担保・無保証人・無利子で掛金の10倍まで借入ができる

経営セーフティ共済では、無担保・無保証人・無利子で最大掛金の10倍まで借入が可能です。これは、一般の金融機関の融資に比べてもリスクが低く、いざというときの資金調達がしやすいという大きなメリットになります。

特に資金繰りが急を要する場合でも、スムーズに借入ができるため、企業経営を安定させるのに役立ちます。

6-2.取引先が倒産した後に借入できる

取引先が倒産した場合、即座に借入手続きが可能です。通常の融資であれば、審査や手続きに時間がかかることも多いですが、経営セーフティ共済なら迅速に資金が調達でき、倒産の影響を最小限に抑えることができます。

6-3.掛金を経費算入することができる

毎月の掛金は経費として(法人であれば損金として)算入可能なため、節税効果が期待できます。

※ただし、4章で後述しますが、節税のために経営セーフティ共済に加入して、解約して再加入を繰り返す事業者が多く見られたため、経営セーフティ共済では2024年10月に再加入に関する制度の改正が為されています。あくまで共済の本来の用途から外れない範疇での節税を行うようにしてください。

掛金を積み立てながら経営安定のための備えを行い、同時に税務上のメリットも得ることができます。

6-4.解約の際には解約手当金が受け取れる

経営セーフティ共済の解約時には掛金の一部が解約手当金として支払われます

解約手当金の額は、掛金の納付月数に応じて、掛金総額に各月数の支給率を乗じた金額となります。

支給率は以下の表の通りです。

掛金納付月数任意解約の場合の支給率みなし解約の場合の支給率機構解約の場合の支給率
111ヶ月0%0%0%
1223ヶ月80%85%75%
2429ヶ月85%90%80%
3035ヶ月90%95%85%
3639ヶ月95%100%90%
40ヶ月以上100%100%95%

掛金を前納している場合、前納した額にあたる月がまだ来ていない期間分については、掛金納付月数には含まれない。

掛金総額とは、納付した掛金から①共済金貸付額の10分の1に相当する額、②共済金または一時貸付金の償還を怠ったためにこれらの償還または違約金の納付に充てられた額、の2つを差し引いた額にあたる。

解約手当金の存在は企業の将来的な資金需要に対応するための資金確保手段としても役立つため、長期的な経営安定の一助となります。

6-5.一時貸付金制度が存在している

経営セーフティ共済における一時貸付金制度とは、取引先事業者が倒産していない場合でも、共済契約者が臨時に事業資金を必要とする場合には、機構解約時の場合に支給される解約手当金の95%を上限として借入れできる制度です。

※機構解約:共済契約者が12ヶ月分以上の掛金の滞納をしたときなどに中小機構が行う解約

一時貸付金の借入期間は1年間で、返済方法は一括返済(期限一括償還)となります。

ただし、同額借換、減額借換、増額借換の申込手続きを行うことで、各制度に該当する利息を支払う代わりに、借入金額を返済せず、新たに借入をすることができます。

一時貸付金の利率に関しては金融情勢などにより変動するので、利用したいタイミングで問い合わせてみてください。

令和6年4月1日時点での利率は年 0.9%です。

一時貸付金にももちろん違約金(延滞利息)が存在し、年 14.6%となっています。

7.経営セーフティ共済の7つのデメリット

経営セーフティ共済は中小企業や事業主にとって多くのメリットを提供していますが、利用に際して注意すべきデメリットも存在します。

安定した事業の運営のための選択をするためには、デメリットについても事前に理解しておくことが重要です。

7-1.共済金の借入を受けると共済金借入額の10分の1に相当する掛金の権利が消滅する

共済金を借入した際、その借入額の10分の1に相当する掛金の権利が消滅します。

このように、無利子で資金調達の手段として非常に便利に活用できるものの、実質的には一部掛金の権利を失うことに関しては経営者にとって慎重に考慮すべき要素となるでしょう。

7-2.取引先が「夜逃げ」や「内整理」などをした場合は借入できない

取引先の「夜逃げ」や「内整理」といった特定のケースでは共済金の借入が認められません。

例えば、取引先が事業を継続できない状態にある場合でも、法的手続きを踏まずに逃げるようなケースでは共済金を借り入れられないため、急な資金不足に陥る可能性があります。

このように、経営セーフティ共済はすべての倒産関連のリスクに対応している訳ではありません。経営者は他の資金調達手段やリスクヘッジ策も併せて検討することが求められます。

7-3.起業後1年以上経っていないと加入できない

新規創業者は、事業開始から1年以上経過していないと経営セーフティ共済には加入できません。これは、事業の安定性や継続性を確認するための要件ですが、創業間もない企業にとってはデメリットとなります。

ただし、法人として1年未満でも、それ以前に同一事業を個人事業主として計1年以上行っている場合は加入できます。

7-4.掛金納付月数が12ヶ月未満だと掛け捨てになる

掛金納付期間が12ヶ月未満で解約する場合、解約手当金が支給されませんつまり、納付した掛金が全て掛け捨てとなってしまいます。ご注意ください。

7-5.掛金納付月数が40ヵ月以下だと元本割れになる

掛金納付月数が40ヶ月以下の場合、解約手当金の支給率が100%未満となるため、納付した掛金の総額より少ない金額しか戻ってきません。

7-6.解約手当金は課税対象になる

解約手当金は、法人の場合は益金として、個人事業主の場合は事業所得として課税対象となります。このため、受け取った解約手当金の一部は税金として納付することになります。

7-7.一時貸付金による借入は有利子である

一時貸付金は共済金と異なり有利子での借入となります。金利は金融情勢により変動するため、借入時の金利確認が必要です。

8.経営セーフティ共済が節税効果が高いと言われる2つの理由

経営セーフティ共済には節税効果があるとよく言われていますが、その理由は以下に記載するように、主に2つあります。

8-1.解約金を退職金にすることで税率をぐんと下げられる

法人の経営者が退職などする際に、解約手当金を退職所得として申告することで、通常の事業所得より有利な課税を受けることができます。

経営者による事業廃止や、経営者自身の退職や事業承継のタイミングに経営セーフティ共済の解約をして、解約金を退職所得にすることで、解約金自体の所得税が下がり、まず経営者側としてもお得な効果が見込めます。

さらに、残される法人側としても、解約金が入ってきても退職金(経費)として計上できるので、経費が多いタイミングの年度に解約したことになるため、税金の負担が比較的かからないことになり、二倍お得な結果となるのです。

このように、退職所得控除の適用による実質的な税負担の軽減ができる可能性があります。

8-2.掛け金を経費算入することができる

毎月の掛金は、法人の場合は損金として、個人事業主の場合は必要経費として算入できます。

これにより、課税所得を減らすことができ、節税効果が得られます。ただし、2024年10月からの制度改正により、解約後2年以内の再加入については、この経費算入が制限されることとなりました。詳しくは10章をご一読ください。

9.経営セーフティ共済にまつわる『裏ワザ』の実態|税の専門家の観点から述べる

従来、経営セーフティ共済を利用した節税方法として、以下のような手法が広く知られていました。

以下に記載する3つのステップのうち、STEP③にあたる部分が、世間でよく流通している『裏ワザ』に該当します。

STEP① : 利益が大きい年に掛金を積み立てて損金算入

STEP② : 経費(損金)が大きい年(利益が少ない年)に解約

STEP③ : 再加入による節税効果、の繰り返し ←ここが裏ワザ!

ただし、2024年10月の制度改正により、こうした方法は制限されることとなりました。

ここでは、裏ワザについての簡単な解説と、今後のその扱いについて説明していきます。

まず、各ステップのねらいを順番に見ていきましょう。

STEP①:利益が大きい年に掛金を積み立てて損金算入

STEP①で行っていることは、事業年度の利益が大きい時期に掛金を積み立てし、掛金は全額損金(経費)算入が可能なため、一時的な節税効果をねらったものとなります。

STEP②:経費(損金)が大きい年(利益が少ない年)に解約

STEP②では、上記した通り、解約手当金は課税対象なので、少しでも税負担の少ない年度をねらって解約をしています。

上記2つのステップによる節税効果が、経営セーフティ共済には見込まれます。そして、​STEP③の再加入の繰り返しを活用することにより、節税効果をさらに高めようとしたものがいわゆる『裏ワザ』となります。​

STEP③:再加入による節税効果の繰り返し

このステップでは、解約後に再度加入し、同様の節税効果を得ることをねらいとしています。

ただし、これまでは制限がなかったため、繰り返し実施可能でしたが、もちろん本来の、取引先の倒産などにそなえるための共済としての目的と合致していない『裏ワザ』ですので、2024年10月の制度改正で実質的に制限がかかることとなりました。詳しくは10章をご一読ください。

結論として、この『裏ワザ』には損失のリスクも多く存在し、かつ2024年10月以降は制度改正がなされたため、実質的に行うことはできなくなっています。

『裏ワザ』の節税効果を期待して加入を検討している方は、この機会に考え直すことをおすすめいたします。

10.2024年10月からの制度改正について

2024年10月から経営セーフティ共済の制度が改正され、節税目的の不正な解約・再加入を防ぐための規制が強化されました。

具体的には、解約後2年間は再加入しても掛金を損金算入できなくなり、節税を目的とした本来の用途から外れた利用については制限されます。

この改正によって、短期間での解約と再加入を繰り返し、税負担を軽減する行為が難しくなったことで適正な利用が促進され、制度の持続可能性が高まることが期待されています。

詳しくは以下のURLから、中小企業庁による『中小企業倒産防止共済制度の不適切な利用への対応について』の項目をご確認ください。

中小企業庁による中小企業倒産防止共済制度の不適切な利用への対応について

11.よくある4つの質問

ここでは、経営セーフティ共済に関するよくある質問を4つ取り上げます。お悩みの際の一助となれば幸いです。

11-1.掛金を増額したいときはどうしたら良いですか?

掛金の増額を希望する場合は、以下の手順で手続きを行います。

①増額申込書の入手(取扱機関または中小機構のウェブサイトから)

②増額理由の記入(事業拡大、取引先増加など)

③必要書類の提出

・掛金月額変更申込書

・口座振替申出書(金融機関届出印の押印が必要)

④承認後、新しい掛金額での引き落としが開始される

11-2.「経営セーフティ共済オンライン手続きポータル」とは何ですか?

経営セーフティ共済オンライン手続きポータルは、以下のようなサービスをオンラインで行える便利なシステムです。

・契約内容の確認

・掛金納付状況の確認

・各種証明書の発行申請

・住所変更などの各種届出

・掛金月額の変更申請

・一時貸付金の申込み

24時間365日利用可能で、スマートフォンからもアクセスできます。

11-3.確定申告の際に経営セーフティ共済の掛金や借入金はどうすればいいですか?

まず、掛金の申告については、法人の場合は損金として計上、個人事業主の場合は必要経費として計上します。ただし、納付証明書の添付が確定申告時には必要となります。

借入金(共済金)の申告については、貸借対照表の負債の部に記載します。無利子のため、支払利息の計上は不要となります。

一時貸付金の申告についても貸借対照表の負債の部に記載しますが、支払利息があるため、支払利息分については経費として計上します。

11-4.解約は任意のタイミングで行えますか?

基本的に、解約は任意のタイミングで可能です。ただし、以下の点に注意が必要です。

①納付月数による解約手当金の違い

・12ヶ月未満:解約手当金なし(掛け捨て)

・12~39ヶ月:掛金総額の一部のみ返還

・40ヶ月以上:掛金総額の100%返還

②税務上の考慮事項

・解約時に返ってくる解約手当金は課税対象

・法人の場合は解約手当金は益金として計上

・個人の場合は解約手当金は事業所得として計上

③解約のタイミング

・事業年度の利益状況を考慮すると良い

・税率の低い時期を選択すると良い

・掛金40ヶ月以上の納付を推奨している(解約手当金が満額受け取れるため)

12.経営上の補償や共済制度について疑問のある方は辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスのご検討を

経営セーフティ共済は、企業経営における重要な安全網の一つですが、その活用方法や税務上の取り扱いについては、専門家のアドバイスを受けることで、より効果的な運用が可能となります。

辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスでは、共済制度の活用に関する相談や、税務戦略の立案と実行支援経営改善のための各種アドバイスその他の補償制度との比較検討制度改正への対応支援サポートなどを提供しています。

専門家による適切なアドバイスを受けることで、より効果的な経営判断が可能となります。

経営に役立つ情報を得たい方は、ぜひご活用をご検討ください。

13.まとめ

経営セーフティ共済は、中小企業にとって取引先倒産にまつわるリスクに備える強力な制度です。

経営セーフティ共済の主なポイントは以下の通りです。

①経営セーフティ共済のメリット

・無担保・無保証人・無利子での借入可能

・掛金の経費算入による節税効果

・解約手当金の受け取りが可能

②経営セーフティ共済に加入する際の注意点

・加入条件の確認

・解約時期の検討

・2024年10月からの制度改正への対応

③経営セーフティ共済の活用のポイント

・計画的な掛金の納付

・適切な解約時期の選択

・専門家への相談などの活用

無利子での借入や節税効果など、経営を安定させるためのメリットが多くありますが、一部のケースでは利用できないなどのデメリットや、2024年10月からの制度改正にも注意が必要です。

経営セーフティ共済は、適切に活用することで企業経営の安定性向上に大きく貢献する制度です。自社の状況に応じた最適な活用方法を検討し、経営の安定化に役立ててください。