パソコンの勘定科目は購入金額で変わる!仕訳方法をわかりやすく解説

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監修者 宇都宮健太

「パソコンの購入にかかる費用は経費に計上できる?」「周辺機器はパソコンと同じ扱い?」

自社のパソコンを購入する際には、パソコン自体が高額なため、このような疑問を持つ経理担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。

結論から言いますと、10万円未満のパソコンの購入にかかる費用は全額経費計上でき、10万円以上のパソコンの購入にかかる費用は、購入金額によって会計処理が異なります。またパソコン購入時に必要な付随費用にも、含められるものと含められないものがあります。

この記事では、パソコンの購入金額による会計処理方法の違いや仕訳例、パソコン購入時に必要な付随費用に含められるもの、パソコンの購入パターンごとの仕訳例、パソコンをリース契約した場合の仕訳例など、わかりやすく解説していきます。

目次

1.パソコン購入時に使える勘定科目は購入金額によって主に4つ

パソコンを購入した際には、購入金額によって扱いが異なります。購入金額が10万円未満の場合、パソコンは消耗品として扱われるため、購入時に全額を経費として計上できます。購入金額が10万円以上のパソコンは資産として扱われるため、耐用年数に合わせ減価償却を計上することになります。まずはパソコンの購入金額ごとに仕訳で使う勘定科目を一覧で見てみましょう。

購入条件勘定科目
  • 購入金額が10万円未満

もしくは使用可能期間が1年未満

消耗品費(事務用品費)
購入金額が10万円以上20万円未満工具器具備品
一括償却資産
少額減価償却資産
(中小企業や個人事業主で青色申告を行う場合)
購入金額が20万円以上30万円未満工具器具備品
少額減価償却資産
(中小企業や個人事業主で青色申告を行う場合)
購入金額が30万円以上工具器具備品

2.10万円未満のパソコンは全額を一括経費計上できる

パソコンの購入金額が10万円未満の場合、パソコンは消耗品として扱います。勘定科目は消耗品費か事務用品費で一括で計上します。どちらの勘定科目で計上しても問題はありません。 

では実際に仕訳をしてみましょう。
90,000円のパソコンを現金で購入した場合の仕訳例です。

借方貸方
消耗品費90,000現金90,000

3.10万円以上20万円未満のパソコンの経費計上方法は3つ

パソコンの購入金額が10万円以上20万円未満の場合はパソコンは資産として扱います。一括での経費計上はできないため、耐用年数で減価償却する処理、一括償却資産としての処理、少額減価償却制度を活用しての処理の3パターンが考えられます。それぞれ見ていきましょう。

3-1.耐用年数で減価償却する場合の仕訳例

パソコンを資産として扱う場合、基本的に勘定科目は工具器具備品で計上します工具器具備品は事業用として長期間にわたって使用する資産に対する勘定科目です。

パソコンの固定資産としての耐用年数は、サーバーで使用するパソコンは5年、それ以外のパソコンは4年省令で定められており、耐用年数4年の資産償却率は0.25になります。パソコンの価額×償却率×(その年の使用月数/12)で減価償却を計算していきます。

では実際に仕訳をしてみましょう。
180,000円のパソコンを7月に現金で購入した場合の仕訳例です。

・パソコン購入時

借方貸方
工具器具備品180,000現金180,000

・パソコン購入年、12月の決算処理で7月~12月までの6ヶ月分の減価償却22,500を計上

借方貸方
減価償却費22,500工具器具備品22,500

・パソコン購入2~4年目、12月の決算処理で1年40,000の減価償却を計上

借方貸方
減価償却費45,000工具器具備品45,000

・パソコン購入5年目、12月の決算処理で、残り6ヶ月分22,500の減価償却を計上

借方貸方
減価償却費22,500工具器具備品22,500

3-2.一括償却資産として処理する場合の仕訳例

パソコンの購入金額が10万円以上20万円未満の場合は、本来の耐用年数にかかわらず3年で減価償却できる一括償却資産としての処理をすることもできます。パソコンを一括償却資産として処理する場合は、パソコンを一会計期間の途中で購入した場合でも、通常の減価償却のように使用月数で割ることなく3年均等償却することができます。一括償却資産の3年均等償却を行っている資産は、売却や除却をしても減価償却を打ちることはできません。

一括償却資産とは

取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産(国外リース資産やリース資産、少額な減価償却資産を除く)については個別の減価償却をせず、使用を開始した年から3年間、一括減価償却資産に計上した減価償却資産の取得価額合計額の3分の1の金額を必要経費にすることができるもの

では実際に仕訳をしてみましょう。
180,000円のパソコンを7月に現金で購入した場合の仕訳例です。

・パソコン購入時

借方貸方
一括償却資産180,000現金180,000

・パソコン購入年から3年間、12月の決算処理で60,000の減価償却を計上

借方貸方
減価償却費60,000一括償却資産60,000

3-3.少額減価償却資産の特例を活用する場合の仕訳例

パソコンの購入金額が30万円未満の場合は、青色申告を行っている中小企業や個人事業主であれば、少額減価償却資産の特例を活用し一括で減価償却できます。ただし、減価償却資産の合計額は300万円が限度となるため、パソコンを複数台購入する場合には注意が必要です。また少額減価償却資産の特例は、2026年3月末までの制度となります。

中小企業庁|少額減価償却資産の特例

では実際に仕訳をしてみましょう。180,000円のパソコンを7月に現金で購入した場合の仕訳例です。

・パソコン購入時

借方貸方
工具器具備品180,000現金180,000

・パソコン購入年、12月の決算処理で180,000の減価償却を一括で計上

借方貸方
減価償却費180,000工具器具備品180,000

4.20万円以上30万円未満のパソコンの経費計上方法は2つ

パソコンの購入金額が20万円以上30万円未満の場合は、パソコンは資産として扱います。耐用年数で減価償却する処理、少額減価償却制度を活用しての処理の2パターンが考えられます。それぞれ見ていきましょう。

4-1.耐用年数で減価償却する場合の仕訳例

耐用年数で減価償却する場合は、パソコンの購入金額が10万円以上20万円未満の場合と同じように勘定科目は工具器具備品で計上します。

では実際に仕訳をしてみましょう。
240,000円のパソコンを4月に現金で購入した場合の仕訳例です。

パソコンの耐用年数4年、資産償却率0.25、パソコンの価額×償却率×(その年の使用月数/12)で減価償却を計算します。

・パソコン購入時

借方貸方
工具器具備品240,000現金240,000

・パソコン購入年、12月の決算処理で4月~12月までの9ヶ月分の減価償却45,000を計上

借方貸方
減価償却費45,000工具器具備品45,000

・パソコン購入2~4年目、12月の決算処理で1年60,000の減価償却を計上

借方貸方
減価償却費60,000工具器具備品60,000

・パソコン購入5年目、12月の決算処理で残り3ヶ月分15,000の減価償却を計上

借方貸方
減価償却費15,000工具器具備品15,000

4-2.少額減価償却資産の特例を活用する場合の仕訳例

少額減価償却資産の特例を活用する場合は、パソコンの購入金額が10万円以上20万円未満の場合と同じように勘定科目は工具器具備品で計上します。

では実際に仕訳をしてみましょう。240,000円のパソコンを4月に現金で購入した場合の仕訳例です。

・パソコン購入時

借方貸方
工具器具備品240,000現金240,000

・パソコン購入年、12月の決算処理で180,000の減価償却を一括で計上

借方貸方
減価償却費240,000工具器具備品240,000

5.30万円以上のパソコンは原則減価償却で経費計上する

パソコンの購入金額が30万円以上の場合は、パソコンは資産として扱います。一括償却資産や少額減価償却資産の特例の対象外となるため、耐用年数で減価償却する処理を行います勘定科目は工具器具備品で計上します。

では実際に仕訳をしてみましょう。
360,000円のパソコンを4月に現金で購入した場合の仕訳例です。

パソコンの耐用年数4年、資産償却率0.25、パソコンの価額×償却率×(その年の使用月数/12)で減価償却を計算します。

・パソコン購入時

借方貸方
工具器具備品360,000現金360,000

・パソコン購入年、12月の決算処理で4月~12月までの9ヶ月分の減価償却67,500を計上

借方貸方
減価償却費67,500工具器具備品67,500

・パソコン購入2~4年目、12月の決算処理で1年60,000の減価償却を計上

借方貸方
減価償却費90,000工具器具備品90,000

・パソコン購入5年目、12月の決算処理で残り3ヶ月分15,000の減価償却を計上

借方貸方
減価償却費22,500工具器具備品22,500

6.パソコン購入時の購入価額には付随費用も含まれる

パソコン購入時の購入金額には、パソコン本体だけではなく、パソコン購入時に必要な付随費用も含められます。以下のようなパソコンを動作させるために必要なものはすべて付随費用に含められます。例えばパソコン本体とディスプレイなどを同時購入した場合、パソコン本体とディスプレイは一式として扱います。

パソコン本体、ディスプレイ、OSソフト、メモリ増設費用、購入手数料、配送料、設置サービス費用、データ移行サービス費用など

パソコンとは別に購入した周辺機器や、パソコンの動作に必要ないUSBメモリやOS以外のソフトなどは付随費用に含まれません。

7.パソコンを複数台購入した場合の勘定科目と仕訳例

パソコンを複数台同時に購入した場合は、総額ではなく1台の金額で会計処理を行います。1台80,000円のパソコンを5台購入した場合総額は400,000円ですが、会計処理は1台の金額で行うため、消耗品費で一括計上します。

では実際に仕訳をしてみましょう。
80,000円のパソコンを現金で購入した場合の仕訳例です。

借方貸方
消耗品費80,000現金80,000

8.パソコンを分割払いで購入した時の勘定科目と仕訳例 

パソコンを分割払いで購入した場合貸方の勘定科目は未払金で処理します。分割払いの支払い時に未払金を借方に計上して取り消していく処理をします。

では実際に仕訳をしてみましょう。
240,000円のパソコンを4月に月々80,000円の分割払いで購入した場合の仕訳例です。

少額減価償却資産の特例を活用し、一括で減価償却します。

・パソコン購入時

借方貸方
工具器具備品240,000未払金240,000

・分割払いで購入したパソコンの分割払い代金80,000円の口座引き落とし時(分割手数料は考慮していません)

借方貸方
未払金80,000普通預金80,000

パソコン購入年、12月の決算処理で240,000の減価償却を一括で計上

借方貸方
減価償却費240,000工具器具備品240,000

 

9.パソコンをリース契約で取得した時の勘定科目と仕訳例

パソコンをリース契約で取得した場合には、次の3パターンのリース取引形態が考えられます。ひとつずつ見ていきましょう。

9-1.所有権移転ファイナンスリース契約の場合

ファイナンスリース契約とは、リース期間中解約不能でリース物件の使用により実質的に利益を得ることができ、リース物件の使用にともなう実質的なコストを負担するフルペイアウトの取引です。

所有権移転ファイナンス・リース取引でパソコンをリース契約した場合の処理は、リース期間が終了した後、リース資産の所有権が借手に移転するため、ローンによる資産の購入と同様の会計処理となります。勘定科目はリース負債で計上します。

では実際に仕訳をしてみましょう。
パソコンを月額リース料7,000円、支払利息500円、1月から3年契約した場合の仕訳例です。

パソコンの耐用年数4年、資産償却率0.25、パソコンの価額×償却率×(その年の使用月数/12)で減価償却を計算します。

・パソコンリース契約時

借方貸方
リース資産270,000リース負債270,000

・毎月のリース料金支払い時

借方貸方
リース負債7,000普通預金7,500
支払利息500

・決算時

借方貸方
減価償却費67,500リース資産67,500

9-2.所有権移転外ファイナンスリース契約の場合

所有権移転外ファイナンス・リース取引でパソコンをリース契約した場合の処理は、基本的には所有権移転ファイナンス・リース取引と同様ですが、リース期間が終了した後、リース資産の所有権は借手に移転しないため、減価償却費の計算方法が異なります。所有権移転外ファイナンス・リース取引の減価償却費は、リース資産の取得価額をリース期間の月数で割ってその年のリース期間の月数をかけるリース期間定額法で計算された金額で経費処理されます。勘定科目はリース負債もしくはリース料で計上します。

では実際に仕訳をしてみましょう。
パソコンを月額リース料7,000円、支払利息500円、1月から3年契約した場合の仕訳例です。

減価償却の計算をリース期間定額法で行い、リース資産の取得価額270,000÷リース期間の月数36×その年のリース期間の月数12=90,000を減価償却します。

・パソコンリース契約時

借方貸方
リース資産270,000リース負債270,000

・毎月のリース料金支払い時

借方貸方
リース負債7,000普通預金7,500
支払利息500

・決算時

借方貸方
減価償却費90,000リース資産90,000

9-3.オペレーティングリース契約の場合

オペレーティングリース取引とは、ファイナンス・リース取引に該当しないリース取引です。オペレーティングリース取引でパソコンをリース契約した場合の処理は、全て賃貸借により仕訳します。 勘定科目はリース料で計上します。

では実際に仕訳をしてみましょう。
パソコンを月額リース料7,000円、1月から3年契約した場合の仕訳例です。

・毎月のリース料金支払い時

借方貸方
リース料7,000普通預金7,000

9-4.2027年4月以降開始される事業年度から適用の新リース会計基準の影響は?

リース会計基準とは、日本の企業会計基準委員会(ASBJ)が取り決めた会計基準の一つです。2024年9月ASBJより公表された新リース会計基準では、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引を区分せず、原則として全てのリース取引において、オンバランスでの会計処理に統一するよう定められました。これにより、オペレーティング・リース取引で賃貸借処理のみを行っている企業では、資産と負債を貸借対照表に計上する対義務化されることになります。

なおパソコンは、新会計基準適用の基準となるリース重要性が低い低額リース(300万円以下)にあたるため、オンバランスにせず賃貸借処理することが認められています。

また、新リース会計基準は、公認会計士または監査法人の監査を受ける会社(上場企業など金融商品取引法の適用を受ける会社や会計監査人を設置する会社等)が適用対象となります。そのため、中小企業は「中小企業の会計に関する指針」に従って対応する必要があります。

辻・本郷税理士法人|令和9(2027)年度に適用開始される新リース会計基準とは?
財務会計基準機構|リース取引に関する会計基準の適用指針 少額リース資産及び短期のリース取引に関する簡便的な取扱い
日本税理士連合会|中小企業の会計に関する指針

10.パソコン購入時の消費税は自社が適用している経理処理方式に従う

パソコン購入時の消費税の会計処理方法には、税込経理方式税抜経理方式があります。自社が適用している経理方式に従って処理します。

10-1.税抜経理方式での仕訳例

税抜経理方式を採用している場合、パソコンの購入価額によって会計処理が異なるため、消費税を含まない本体価格で計上します。消費税の勘定科目は仮払消費税で計上します。

では実際に仕訳をしてみましょう。
本体価格93,000円、消費税9,300円のパソコンを現金で購入した場合の仕訳例です。

パソコンの購入金額が消費税を抜いて10万円以下のため、消耗品として計上します。

借方貸方
消耗品費93,000現金102,300
仮払消費税9,300

10-2.税込経理方式での仕訳例

税込経理方式を採用している場合、パソコンの購入価額に消費税も含めて計上します。消費税の免税事業者の場合は税込処理しか認められません。税抜経理方式を選択できるのは課税事業者のみになります。

では実際に仕訳をしてみましょう。
本体価格98,000円、消費税9,800円のパソコンを現金で購入した場合の仕訳例です。

パソコンの購入金額が10万円以上20万円未満のため、一括償却資産として計上します。

・パソコン購入時

借方貸方
一括償却資産102,300現金102,300

・パソコン購入年から3年間、決算処理で34,100の減価償却を計上

借方貸方
減価償却費34,100一括償却資産34,100

11.個人事業主やサラリーマンが副業で使うパソコンも経費計上できる

個人事業主の場合やサラリーマンが副業でパソコンを使用する場合も、パソコンを経費に計上することは可能です。10万円未満であれば消耗品費として、10万円以上の場合は減価償却資産として扱います。法人と同様に一括償却資産や少額減価償却資産の特例での処理も可能です。ただし、パソコンを事業とプライベート兼用で使っている場合には、事業での使用分を算出する家事按分が必要です。算出した事業でのパソコン使用分は経費として計上できます。

12.仕訳業務にお困りの際は辻・本郷 税理士法人にご相談を

日々の取引で発生した売上や経費などを仕訳し記帳する業務は、事業を長く続けていくためにはとても大切です。しかし、パソコンのように購入金額によって異なる仕訳が必要で会計処理が複雑なものは、取引量が多い企業にとっては大きな負担となります。

これらの業務を税理士へアウトソーシングすれば、業務の負担を軽くすることができます。お困りの際は辻・本郷 税理士法人にぜひご相談ください。

13.まとめ

ここまで、パソコン購入時の仕訳について以下のような内容を見てきました。

・パソコンの購入金額による会計処理方法の違いや仕訳例
・パソコン購入時に必要な付随費用に含められるもの
・パソコンの購入パターンごとの仕訳例
・パソコンをリース契約した場合の仕訳例
・パソコン購入時の消費税の処理方法

このようにパソコンの購入時には、パソコンの購入金額によって異なる仕訳と複雑な会計処理が必要になります。この記事がパソコン購入時の仕訳で迷われている方の理解を深める一助となれば幸いです。