事業を始める上で、資金調達は最も重要な課題の一つです。
特に初めての起業では、資金不足が大きな壁となることが多いでしょう。
そんな中、国や自治体から提供される「創業補助金」は、起業家にとって大きな助けとなります。この補助金を上手に活用することで、事業のスタートダッシュに大いに役立ちます。
この記事では、創業補助金の基本的な概要から申請方法、注意点を詳しく解説します。
初めて創業補助金について調べる方でも理解しやすい内容となっていますので、ぜひ最後まで読んで、あなたの事業の発展にお役立てください。
目次
1. 創業補助金とは原則的に返済不要で事業者などに交付される補助金
創業補助金は、新たにビジネスを立ち上げる創業時に、企業や個人事業主に対して資金を提供する補助金です。
2018年以降は「地域創造的起業補助金」という名称に変わっています。検索の際には注意してください。
原則的に返済不要なため、融資とは異なります。
しかし、受給にあたっていくつかの注意点があります。
1-1. 創業補助金は政府や地方自治体から支給される
創業補助金は、経済産業省や厚生労働省、地方自治体などが、政策目標に沿った事業を立ち上げる事業者の取り組みに対して資金面でサポートする制度になっています。
目的や趣旨によってさまざまな種類がありますので、自分の事業に合った創業補助金を受けましょう。
これにより、新規事業の立ち上げ時の資金不足を補うことができます。
1-2. 各補助金制度に設けられている条件を満たす必要がある
創業補助金を受けるためには、各補助金制度に設けられている条件を満たす必要があります。
例えば、事業計画の提出や特定の産業分野での創業など、条件は創業補助金の種類によってさまざまです。
補助金の目的は、主に新規事業の起業促進や研究開発などとなっていますので、このように条件が決められています。
1-3. 創業補助金には申請が必要不可欠である
創業補助金を受け取るためには、申請手続きが必要です。
申請には、事業計画書や申請書などの提出が求められ、募集対象に適合する企業かどうかの資格審査が行われます。
創業補助金を受けるために、自分の事業分野において申請可能な補助金を中小企業基盤整備機構や中小企業庁のWebサイトや、自治体への問い合わせによって調べて、申請をする準備から始めましょう。
1-4. 創業補助金は予算や件数に上限が設定されている
創業補助金は、毎年の予算や支給件数に上限が設けられています。4章で解説するように募集期間も決まっており、申請をすれば必ず受給できるものではありません。そのため、自分の受けたい創業補助金について事前に調べ、早めの申請を行うことが重要です。
2. 創業補助金の支給対象は創業補助金募集日以降に新たに創業する会社あるいは個人
創業補助金の支給対象となるのは、補助金募集日以降に新たに創業する会社や個人事業主です。補助事業期間(補助金の交付が決定してから数ヶ月間)の完了日までに、個人開業か会社設立を行う必要があります。
創業補助金は、新たなビジネスの立ち上げを促進し、地域経済の活性化を期待するものであるためです。
その他の条件については、創業補助金の種類によって異なるため、各創業補助金の補助対象要件などを確認してください。
3. 創業補助金の支給金額には限度額がある
創業補助金の支給金額には、上限となる限度額があります。申請枠の種類や企業規模などによって異なりますが、具体的な金額で示されている場合や、対象となる経費の2分の1以内とされている場合もあります。
経費計上すれば全額を創業補助金として受給できるわけではありませんので、覚えておきましょう。
4. 創業補助金の受付期間は毎年春頃に1ヵ月程度
創業補助金の受付期間は、毎年春頃に1ヵ月程度設定されています。創業補助金を受給するためには、この期間中に必ず申請が必要です。助成金と違い、創業補助金は申請期間が短いため、目当ての創業補助金が決まったら、受付期間をしっかり確認しておいてください。
5. 創業補助金の種類
創業補助金には大きく分けて、3種類あります。
・経済産業省系の補助金(a)
・厚生労働省による助成金(b)
・その他の補助金(自治体や企業によるもの、c)
創業補助金には、何のために補助をするのか、どのような事業が対象となるのかによってさまざまですが、それらは上記3種類に分類できます。
厚生労働省によるものは「助成金」という扱いなので、要件さえ満たせばほぼ100%受給できます。
厳密には創業補助金とは異なりますが、類似するものとしてご紹介します。
この章では、3種類に分類される創業補助金のうち、有名なものを解説していきます。
5-1. 事業再構築補助金(a)
事業再構築補助金は、経済産業省系の補助金で、新型コロナウイルス感染症の影響により変化した経済社会に対応するために、中小企業者などへ事業再構築の支援をする補助金です。
新分野展開や事業転換、業種、業態転換や、事業再編といった思い切った事業再構築を主に支援してくれます。
補助金額が大きく、補助上限額は500万円~1.5億円(申請枠や企業規模による)となっています。
詳しくは、以下のURLをご覧ください。
5-2. 小規模事業者持続化補助金(a)
小規模事業者持続化補助金は、経済産業省系の補助金で、経営の持続性を高めるための取り組みを支援する補助金です。
小規模事業者や特定非営利活動法人を対象としています。
マーケティング活動や設備投資など、多岐にわたる経費が補助され、さらに計画を作成する際などに、商工会議所の指導や助言を受けられるというメリットもあわせ持ちます。
詳しくは、以下のURLをご覧ください。
5-3. IT導入補助金(a)
IT導入補助金は、経済産業省系の補助金で、中小企業者などが生産性を上げるべく、ITツール導入をする際に支援してもらえる補助金です。業務効率化や生産性向上を図るためのITシステムの導入費用が補助されます。
適用の範囲も広く、受発注や決済、会計、セキュリティ、POSレジ、モバイルPOSレジ、券売機、PC、タブレット、プリンター、スキャナー、複合機などさまざまなITツールに対応しています。
詳しくは、以下のURLをご覧ください。
5-4. ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(a)
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、経済産業省系の補助金で、中小企業者などが生産性向上を目的として行う設備投資や新技術導入を支援する補助金です。
具体的には、新しい機械の導入や賃上げ、インボイス制度への対応などが対象となります。
企業らの制度変更にともなう、革新的なチャレンジを支援する目的があるので、補助上限額も750万円~1億円(申請枠や賃上げ内容などによる)と、大きく設定されています。
詳しくは、以下のURLをご覧ください。
5-5. 事業承継・引継ぎ補助金(a)
事業承継・引継ぎ補助金は、経済産業省系の補助金で、事業の承継や引継ぎを行い、それをきっかけに新たな取り組みを行っていく中小企業者などへの支援を目的としています。
例えば、事業後継者の開業や、経営資源の引継ぎに関する費用などが補助されます。
詳しくは、以下のURLをご覧ください。
5-6.地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)(b)
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)は、厚生労働省による補助金で、地域の雇用創出を目的とした助成金です。
この助成金は、雇用機会が特に不足している地域などの事業主が事業所の設置や整備を行い、あわせて、その地域に居住する求職者などを雇い入れる場合に、設置整備費用及び対象労働者の増加数に応じて、助成されることになっています。
1年毎に、要件を満たせば最大3回まで支給されます。
詳しくは、以下の厚生労働省によるURLをご覧ください。
5-7.キャリアアップ助成金(b)
キャリアアップ助成金は、厚生労働省による補助金で、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者を正規雇用へ転換すること、また、スキルアップをすることを目的とした助成金です。従業員のキャリア形成を促進し、企業の人材確保に貢献します。
助成内容によって6種類のコースに分かれています。
詳しくは、以下の厚生労働省によるURLをご覧ください。
5-8.その他創業支援制度(c)
その他にも、各自治体や民間団体による創業支援制度は多く存在します。
地方自治体による独自の補助金や、民間の創業支援プログラムなどもありますので、各地域圏内の創業補助金でWEB検索するなどして調べてみましょう。
創業補助金やそれに準ずる支援制度は、地域、また業種によっても異なります。自分の事業に適したものを調査し、積極的に活用しましょう。
6. 創業補助金の申請手順の流れ
創業補助金を受けるためには、以下の手順を踏む必要があります。ほとんどの創業補助金に共通する申請までの手順を説明いたします。
6-1. 事業計画書や申請書を提出
まずは、毎年春頃の1ヵ月程度の募集期間中に、事業計画書と申請書類を当該窓口に提出します。多くの創業補助金で電子申請ができるようになっているため、そちらも活用してみてください。
事業計画書には、ビジネスの概要や目標、必要な資金とその使い道などを明確に記載します。
6-2. 資格審査と書面審査
提出された書類は、募集要件を満たす企業かどうかの資格審査が行われ、資格審査に通過後は書面審査を受けることになります。事業の実現可能性や経済的な影響などもチェックされます。
審査には、大体1~2ヶ月程度かかります。
6-3. 審査結果を通知
審査の後、書面で採択の可否が通知されることになります。補助金が交付される場合は、その詳細な条件や手続きについての説明も同時に行われます。
6-4. 経費補助期間(ほとんどが6ヶ月)
補助金の交付が決定した場合、約6ヶ月の経費補助期間となります。
経費補助期間内には事業を行い、経費として計上すべきものについては、領収書や請求書などの証拠書類を保管して、いつでも参照できるよう整理しておきましょう。
6-5. 報告書と経費の証拠書類を提出
事業終了後には、報告書と経費の証拠書類を提出します。
実際にかかった経費が正確に計上されているかなどが確認されます。
ここでの報告書の審査には約数ヶ月かかります。途中で不備が見つかった場合には修正し、再提出を求められることになります。
6-6. 補助金の交付
すべての手続きが完了し、報告が承認されると、補助金が交付されます。これにより、事業の立ち上げに必要な資金を確保することができます。
7. 創業補助金の申請成功のためのポイント
創業補助金申請には、申請書提出段階で要件を満たすか審査された後、経費が適切であるか報告書などを参考に確認されるという一連の流れがあります。
この章では、ミスなく創業補助金の申請を成功させるために気をつけておきたいポイントについて、解説いたします。
7-1. 使用目的が事業の遂行に必要だと明確に特定できる経費内容にすること
補助金の申請には、経費の使用目的を明確に記載することが重要です。事業の遂行に不可欠な経費であることを具体的に明記しましょう。
たとえば、オフィスの賃貸費用であれば、使用目的は、より快適で効率的な労働環境を提供することにより、生産性の向上と従業員の満足度向上を図ること、のようになります。
専門機器の購入であれば、使用目的は、製品の迅速な作成と改善を行うこと、また、製品開発サイクルの短縮と品質向上を実現すること、のように記載できます。
7-2. 補助対象経費を各自治体などで確認しておくこと
補助対象となる経費は、補助金の種類や自治体によって異なります。申請前に必ず確認し、適用範囲を把握しておくことが重要です。
7-3. 補助事業期間完了日までの契約・発注により発生した経費を申請すること
補助金の対象となる経費は、補助事業期間中に発生したものに限られます。つまり交付決定日以降、補助事業期間内の契約・発注により発生した経費となります。
7-4. 経費の金額・支払いなどが確認できる証拠書類を用意すること
経費の支出を証明するために、領収書や請求書などの証拠書類を用意し、提出する必要があります。正確な書類管理が求められます。金額と、支払いを行ったことが確認できるように証拠書類を用意しましょう。
7-5. 認定支援機関で創業補助金交付へのサポートを受けることも視野に入れること
創業補助金の申請には専門的な知識が必要な場合があります。認定支援機関では、中小企業者らが専門家に経営相談などをすることができるため、創業補助金を受給するまでのサポートも受けられます。
認定支援機関:商工会や商工会議所といった団体、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士など、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として、国の認定を受けた支援機関を指す
認定支援機関からのサポートにより、申請成功の確率を高めることができます。
認定支援機関にはそれぞれ得意分野があるため、自分の業種に適している認定支援機関を見つけて相談をしましょう。
8. 創業補助金に関する注意点
8-1. 創業補助金は原則として後払い
創業補助金は、制度ごとの要件を満たして審査に通った後、経費を先に支出し、その後に補助金が交付される後払い方式です。申請が通ってもすぐにお金をもらえるわけではないため、事前に事業用の資金を用意しておく必要があります。
8-2. 補助金交付後も5年間は事業状況の報告が必要
創業補助金を受け取った後も、交付後5年間は事業状況の報告が求められます。事業の進捗や経済効果を継続的に各事務所に対して報告しなければなりません。
また、一定以上の収益がある場合では、交付した補助金を上限に一部の返納義務が発生することがあります。
交付後にも創業補助金を受給した事実がなくなるわけではありませんので、気をつけておきましょう。
8-3. 交付以降の融資も受けやすくなるというメリットも存在
創業補助金を受けることで、事業の信用度が高まり、その後の融資が受けやすくなるというメリットもあります。金融機関からの信頼を得るための一助となります。
さらに、創業補助金の申請に通った場合、それを担保にして、日本政策金融公庫などの公的な金融機関から融資を受けられるケースもあります。この場合は、創業補助金が支払われるまでの期間を、融資によってフォローすることができます。
8-4. 一度廃業したことのある方も多くの場合申し込みが可能
一度廃業した経験がある方も、多くの場合は再度創業補助金に申し込むことが可能です。新たな挑戦を支援するための制度が整っていますので、安心して再挑戦してみてください。
9. まとめ
創業補助金は、新たにビジネスを立ち上げるための強力な支援制度です。
原則的に返済不要ですが、申請が必要で、要件を満たさなくては審査に通りません。また、予算や件数に上限があるため、必ずしも要件を満たせば受給できるわけではありません。
政府や地方自治体からの多様な補助金制度を活用することで、創業時の資金不足を補い、事業の成功に向けた足がかりを築くことができます。受付期間は短いことが多いので、期間になったら速やかに申請できるように、申請手続きや条件を理解し、計画的に準備を進めていきましょう。