「プライベートカンパニーの作り方を知りたい」
と、プライベートカンパニーに興味をお持ちかもしれません。
もともとは、富裕層の間で一般的だったプライベートカンパニーですが、近年では、幅広い層から注目が集まっています。
多様な働き方が広がるなか、フリーランスや副業など、さまざまな形態で収益を得る人が増えたことが、背景として挙げられるでしょう。
「プライベートカンパニーを作って、節税すべき!」
といった論調も見かけますが、法のグレーゾーンを安易にかいくぐるようなやり方はリスクがあるため、注意が必要です。
この記事では、正当な税金対策やビジネス拡大のための選択肢として、プライベートカンパニーがどう役立つのか、どう作ればよいのか、解説します。
メリットだけでなくデメリットも理解したうえで、最適な選択をしていきましょう。
目次
1. プライベートカンパニーとは?基本の知識
最初に「プライベートカンパニー」とは何か、基本の知識からご紹介します。
1-1. プライベートカンパニーの定義
「プライベートカンパニー」は和製英語で、厳密な定義があるわけではありません。
個人の「資産管理会社」を指して、プライベートカンパニーという言葉がよく使われますが、最近では、より広く、個人が設立する会社全般を指すこともあります。
以下でもう少し詳しく見ていきましょう。
1-2. 資産管理会社とは?
まず、資産管理会社とは、不動産・株式・債券などの資産管理を目的としている法人のことです。
多くの資産を保有する富裕層の資産家や経営者であれば、資産管理会社を設立するのは、ごく一般的であるといえます。
資産が多いと管理や運用に手間や労力がかかること、税金対策や相続対策が困難になること、などがその理由です。
資産管理会社の設立によって、どのようなメリットがあるのかは、後ほど「2. プライベートカンパニーのメリット 」にて解説します。
1-3. 近年では「法人成り」「一人社長」を指すケースも
近年では、資産管理に限らず、フリーランスや副業などの小規模ビジネスの文脈で、個人が設立する企業に対して「プライベートカンパニー」と表現されている例も見かけます。
いわゆる「法人成り」や「一人社長」に該当します。
【法人成り/一人社長】
・法人成り:個人として事業を営んでいる人が、事業内容はほとんど変更せずに、法人格を取得して法人経営の事業形態とすること。
・一人社長:法人の形態で事業を営んでいるが、従業員は雇用しておらず、社長ひとりで経営している状態。個人事業主が法人成りした際に一人社長となることが多い。一人社長の会社を「マイクロ法人」ともいう。
より詳しくは、以下の記事をあわせてご覧ください。
・【フリーランス・個人事業主の方へ】いつか検討する際に役立つ法人成りまとめガイド
・フリーランス・個人事業主は知っておきたい新たな選択肢選択肢「マイクロ法人」とは?
1-4. 英語のプライベートカンパニーは別の意味
補足として、英語の「private company」は、民間会社や非公開会社を指す言葉で、日本語での「プライベートカンパニー」とはニュアンスが異なります。
【private company】
1 私企業、民間会社(⇔public company)[⇒民間の個人または企業が所有する会社]
2 非公開会社、非上場企業(⇔public company)[⇒株式が公開市場で取引されていない会社]
出典:『プログレッシブ ビジネス英語辞典』
以上、プライベートカンパニーの基礎知識をご紹介しました。
多くの人がプライベートカンパニーを作るのは、作ったほうが有利になるメリットがあるからです。
具体的に何がよいのか、続けて見ていきましょう。
2. プライベートカンパニーを作るメリット
プライベートカンパニーを作るメリットとして、大きく3つのポイントが挙げられます。
以下で詳しく見ていきましょう。
2-1. 税法上有利になるケースがある
1つめのメリットは「税法上有利になるケースがある」ことです。
プライベートカンパニーを作らずに、個人で所得税および住民税を納付する場合、《所得税 5〜45% + 住民税》で課税されます。*1
所得税は「累進課税」ですから、所得が増えるほど税率も高くなります。
【所得税の税率】
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円~330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円~695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円~900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
一方、法人税は「非・累進課税」です。
【法人税の税率】
法人税の税率は、普通法人、一般社団法人等又は人格のない社団等については23.2%
(資本金1億円以下の普通法人、一般社団法人等又は人格のない社団等の所得の金額のうち年800万円以下の金額については15%)
上記のとおり、資本金1億円以下の法人であれば、
《年800万円以下の部分は15%、それを超える部分は23.2%》
となります。
ほかにも法人住民税・事業税なども含めて総合的に判断する必要があるため、一概に断定はできません。
その前提のうえですが、目安として《課税される所得金額:800〜900万円以上》の場合には、プライベートカンパニーの設立で有利になる可能性が高いといえます。
*1:令和19年12月31日まで復興特別所得税(所得税額2.1%)が上乗せされます。
2-2. 相続対策として活用できる
2つめのメリットは「相続対策として活用できる」です。
資産管理を目的としてプライベートカンパニーを設立する場合、相続対策を視野に入れているケースが多くあります。
トラブルのない円滑な相続は、資産家の方にとって重要な課題です。
資産を個人の所有にしておくと、所有者が亡くなったときに相続財産の対象となります。
一方、プライベートカンパニーを設立して、個人名義の資産を法人名義にすると、将来の相続財産を法人名義で管理できます。
具体的な活用方法は、それぞれのケースによっても異なりますが、以下に一例を挙げましょう。
【相続対策の活用例】
・家族を役員にして、報酬を支払うことで、将来の相続財産を圧縮する。
・プライベートカンパニーからの譲渡・贈与によって、実質的な生前贈与を進める。
・相続時に、プライベートカンパニーの株式を相続することで、現物よりも手続きを容易にする。
・株式数による明確な遺産分割によって、遺産争いのトラブルを防ぐ。
状況によっては、個人名義のまま資産を贈与あるいは相続するよりも、贈与税・相続税が圧縮できるケースがあります。
2-3. 経費として計上できる幅が広がる
3つめのメリットは「経費として計上できる幅が広がる」です。
個人事業主として確定申告する場合にも、経費は計上できますが、多くのケースではプライベートカンパニーを設立したほうがその幅が広がります。
【経費として計上できる例】
・役員報酬
・退職金
・福利厚生費
・法人保険
ただし、実際に計上できる経費は、税務署の解釈や事業内容によって変動します。個々の具体的な状況に応じて、税理士と相談することをおすすめします。
3. プライベートカンパニーを作るデメリット
「プライベートカンパニーは、全員作るべき」かといえば、そうとはいえません。
プライベートカンパニーには、メリットだけでなく、デメリットもあるためです。
以下で詳しく見ていきましょう。
3-1. 会社設立のコストが生じる
1つめのデメリットは「会社設立のコストが生じる」です。
ここでいうコストは、金銭的な費用だけでなく、労力や手間も含みます。まずは実費として必要な費用を見てみましょう。
【会社設立にかかる費用】
項目 | 費用 |
定款認証印紙代 | 40,000円 |
定款認証手数料 | 32,000円(※) |
登録免許税 | 150,000円 |
会社設立にかかる実費合計 | 222,000円 |
※資本金が100万円以上300万円未満の場合は定款認証手数料は42,000円、300万円以上の場合は52,000円になります。
さらに、定款や登記に関する書類を準備し、法務局へ登記申請する必要があります。
手続きの流れは、この後「4. プライベートカンパニーの作り方 」にてご紹介しますが、専門的で難しい手続きとなるので、専門家に依頼する方も多くいます。
3-2. 決算手続きが煩雑になる
2つめのデメリットは「決算手続きが煩雑になる」です。
会社を設立する前は、個人の確定申告のみで問題ありませんでしたが、会社を設立すると、決算書の作成・提出が義務づけられます。
【決算書の提出書類】
複式簿記による記帳を行い、貸借対照表・損益計算書などの書類を正確に作成して、所轄の税務署に提出する必要があります。
個人の確定申告よりも、はるかに煩雑で多くの労力が必要となることを、認識しておきましょう。
3-3. 赤字であっても法人住民税が課税される
3つめのデメリットは「赤字であっても法人住民税が課税される」です。
「2-1. 税法上有利になるケースがある 」にて述べたとおり、個人に課税される所得税は累進課税ですが、法人税は非・累進課税です。
端的にいえば、所得が低ければ、法人ではなく個人として納税したほうが、納税額は抑えやすくなります。
加えて注意しなければならないのが、均等割で課税される「法人住民税」です。
赤字で利益がなかったとしても、年あたり最低7万円は、法人住民税を納める必要があります(実際の金額は資本金額や従業員数によって異なります)。
3-4. 会社として儲けたお金を自由に使えなくなる
4つめのデメリットは「会社として儲けたお金を自由に使えなくなる」です。
個人事業主、個人投資家、資産家の状態であれば、事業や投資で得た収益を、自由に使用できます。今月の生活費に充てたり、旅行に使ったり……といった具合です。
プライベートカンパニーを設立すると、会社のお金を個人で自由に使えなくなることに注意しましょう。
会社の事業で得た収益は、役員報酬として会社から支給されて初めて、個人で使えるようになります。
役員報酬は、年に1度、事業年度開始の日から3ヶ月以内にしか変更できないため、個人として使うお金の自由度や柔軟性は低くなります。
※役員報酬については「役員報酬の変更はどうすればいい?手続きの流れや金額の決め方を解説 」もご覧ください。
4. プライベートカンパニーの作り方
続いて、プライベートカンパニーを作る流れを、具体的に見ていきましょう。
4-1. 会社の形態を決める
まず、プライベートカンパニーの形態を何にするか、決める必要があります。
プライベートカンパニーの場合、「株式会社」か「合同会社」のどちらかを選ぶのが一般的です。
以下は中小企業庁のWebサイトからの引用です。
【株式会社とは?】
多くの投資家から資金を集めて大きな事業を運営するのに適した法人形態です。
しかし、社長一人、資本金1円でも株式会社を設立できますので、小規模な株式会社もたくさんあります。
【合同会社とは?】
米国のLLC(Limited Liability Company)を参考にした法人形態で、日本版LLCとも呼ばれます。
株式会社に近い形態ですが、株式会社より簡単に設立でき、運営の自由度も高い法人です。
出資者が一人や少数の場合に適しています。知名度は株式会社に劣りますが、設立や運営の費用が株式会社よりも少なく済むため、合同会社を選ぶ人が増えています。
株主となる出資者の人数が多い場合や、「代表取締役」の肩書きを使ってビジネス上の信用力を高めたい場合には、「株式会社」のほうが適しています(合同会社では取締役がいないため役職名は「代表社員」となります)。
一方、ビジネス上の信用力などを考慮する必要がなく、できる限り費用負担を抑えたい場合には、「合同会社」もよい選択肢です。
【設立費用の違い】
・合同会社では定款認証が不要で、株式会社では必要となる定款認証手数料5万円が不要
⇒ 合同会社-5万円
・設立登記の登録免許税の最低額は株式会社は15万円、合同会社は6万円
⇒ 合同会社 -9万円
資産管理だけを目的とするプライベートカンパニーでは、合同会社を選択する方も多くいます。
株式会社・合同会社について詳しくは「株式会社 合同会社 」にて解説しています。あわせてご覧ください。
参考: J-Net21「株式会社と合同会社のどちらがよいか」
4-2. 会社設立の流れ
会社の形態が決まったら、法務局に登録(登記)して、会社を設立します。
簡単に流れを押さえておきましょう。
(1)会社の基本事項決定
事業の内容や商号、事業年度、役員など基本事項を決めます。
登記申請の際に必要なので、代表者の実印と、会社の印鑑を準備しておきましょう。
(2)定款を作成
会社の目的や商号、本店の所在地、設立時の出資額など最も基本的な事柄を定めた「定款」を作成します。定款に定めたことは会社の決まりごととして法的な拘束力を持ちます。定款はいわば会社の憲法です。
(3)定款の認証
作成した定款は、公証役場で正しく作成されていることを確認してもらう必要があります。定款の認証は、会社設立登記のために必要な手続きとなります(合同会社等の場合は、定款認証不要)。
(4)登記書類の作成
会社の設立登記をするには、定款のほかに登記申請書や代表取締役の就任承諾書、印鑑届出書などいくつかの書類を作成・添付する必要があります。
(5)設立登記の申請
法務局へ登記申請書を提出します。不備がなければ1週間程度で審査が完了し、無事に会社が成立したことになります。会社の創立記念日にあたる設立日は、登記を申請した日になります。
(6)開業の届出等
会社を設立したことを税務署や年金事務所等に届け出ます。
登記が完了しないと「登記事項証明書」が取れないので、銀行で会社名義の口座を開設するのは登記が完了してからとなります。
出典:辻・本郷 税理士法人 会社設立センター『税理士が見つけた!本当は怖い会社設立〜はじめての決算失敗事例55』, 東峰書房, 2018年, pp.25-26
会社設立に関しては、以下の記事も参考にしてみてください。
・会社設立を最短3日で行うロードマップと効率化した手続きを全解説!
・0円で会社設立は現実的に不可能!実際の設立費用と資本金の目安解説
5. プライベートカンパニーを作るなら専門家に相談を
プライベートカンパニーの作り方をどうするか、より具体的に話を進めていきたい方は、まず専門家の相談をご検討ください。
インターネット上で見かける、一般ユーザーの成功体験談や節税スキームが、自分にも同じように当てはまるとは限らない点に、注意が必要です。
税金対策を目的として、プライベートカンパニーの設立を検討されている場合、相談相手として最適なのは税の専門家である税理士です。
税理士のなかでも、辻・本郷 税理士法人なら、デメリットを回避してプライベートカンパニーを設立できます。その理由を3つ、ご紹介します。
- プライベートカンパニーの有効性を事前に検討
- 手数料0円で完全代行
- 大手ならではの実績で設立後もサポート
5-1. プライベートカンパニーの有効性を事前に検討
ここまでお読みいただくと、正直なところ、
「プライベートカンパニーには興味があるけれど、私のケースでは、設立したほうがいいの?」
と感じるかもしれません。
これは重要なポイントで、プライベートカンパニーの有無によって何がどう変わるのか、個々のケースごとに見極める必要があります。
すべての人にとってプライベートカンパニーの設立が正解ではありません。設立しないほうがよいケースもあるからこそ、事前相談が大切です。
辻・本郷 税理士法人では、事前の無料相談に力を入れています。
何度でも無料で、納得できるまで相談できます。話しやすい専門家がお話をお伺いしますので、お気軽にお問い合わせください。
5-2. 手数料0円で完全代行
「プライベートカンパニーを設立する」と決断された場合、定款の作成から登記書類の準備、申請まで、難しく専門的な作業を行う必要があります。
辻・本郷 税理士法人では、登記書類作成から設立登記申請まで、代行してサポートします。
当法人の提携司法書士が、設立するための書類を作成し、公証人役場と法務局へ提出しますので、役所などへ行く必要はありません。
5-3. 大手ならではの実績で設立後もサポート
「なぜ、無料で完全代行してくれるの?」と疑問に思われたかもしれませんが、当法人との税理士顧問契約が要件となります。
大手ならではの実績を持つ当法人が、プライベートカンパニー設立後の経理や決算はもちろん、創業融資なども含めて、経営を幅広くサポートしますのでご安心ください。
参考までに、以下は当法人の顧客データです。
国内拠点は85カ所あり、1,960名の優秀な専門家・スタッフたちが、全国で高品質なサービスをご提供しています。
まずは、こちらのお問い合わせページより、無料相談でお問い合わせください。
6. まとめ
本記事では「プライベートカンパニー」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
プライベートカンパニーを作るメリットは以下のとおりです。
- 税法上有利になるケースがある
- 相続対策として活用できる
- 経費として計上できる幅が広がる
プライベートカンパニーを作るデメリットは以下のとおりです。
- 会社設立のコストが生じる
- 決算手続きが煩雑になる
- 赤字であっても法人住民税が課税される
- 会社として儲けたお金を自由に使えなくなる
プライベートカンパニーの作り方としては、 会社の形態を決め、必要書類を作成して法務局などへ提出します。
- 会社の基本事項決定
- 定款を作成
- 定款の認証
- 登記書類の作成
- 設立登記の申請
- 開業の届出等
「プライベートカンパニーの設立をしたほうがいいのか?」の判断を含めて、早期に専門家に相談しながら、最善の方法を検討していきましょう。