サラリーマンはペーパーカンパニーで節税できる?仕組みやリスクを解説

サラリーマンが、ペーパーカンパニーを設立して節税するスキームがあると聞いたけど、本当に効果はあるの?」

そんな疑問をお持ちではないでしょうか。

結論からお伝えすると、ペーパーカンパニーによって、一時的に節税できる可能性はあります。

しかし、違法となるリスクがあり、大きな代償を払わされる可能性もあるため、注意が必要です。

この記事では、サラリーマンとして企業に勤めながら税金対策を模索する方に向けて、ペーパーカンパニーの仕組みを、違法性を含めて解説します。

もちろん、「もう少し、節税できないものか?」という気持ちはもっともですので、そのためにできることもお伝えします。

法的なリスクや社会的な信用の観点からも、損のないやり方で、手元に残すお金を増やす方法が見つかります。


1. ペーパーカンパニーとは何か

まず「そもそも、ペーパーカンパニーって何?」という疑問から、クリアにしていきましょう。

1-1. 「ペーパーカンパニー」=事業の実体のない会社

「ペーパーカンパニー」とは直訳すれば「紙の会社」となりますが、その名のとおり、形式上だけの会社を指す言葉です。

法人登記はされているものの、実質的な活動を行っておらず、事業の実体がない名目だけの会社のことを、ペーパーカンパニーといいます。

【ペーパーカンパニーの類義語】

・ダミー会社

・幽霊会社

・ゴースト会社

shell company(シェルカンパニー)

※英語では「shell company」や「dummy company」という表現が、よく使われます。

1-2. ペーパーカンパニーは一般的に悪い意味

登記だけして事業の実体がないことが、直接的に違法と判断されるわけではありません。

しかしながら、一般的に、ペーパーカンパニーは悪い意味で使われる言葉です。

社会通念上、好ましくない意図で設立された、形式だけの会社を指してペーパーカンパニーといいます。

参考に、辞書に記載されている意味を、いくつかご紹介します。

【ペーパーカンパニーの意味】

・会社の設立登記はされているが、実体のない名目だけの会社。税金逃れなどのために設ける。ペーパー会社。(デジタル大辞泉)

・書類上登記はしてあるが、実体のない名目だけの会社。税金逃れや債権者の目をくらます目的に使う幽霊会社。(日本国語大辞典)

・税金逃れに、登記だけある名目会社。(現代用語の基礎知識)

・法人登記はされているものの、事業の実態のない企業の総称。税務対策、資金調達、投資、悪徳商法などのために設立する名目だけの会社で、事務所や工場などをもたない。(日本大百科全書)

こういった違法性を感じさせるニュアンスを知らずに、オフィシャルの場などで、不用意にペーパーカンパニーという言葉を使わないように、注意が必要です。

個人が資産管理などのために設立する会社を指したいときには、ペーパーカンパニーではなく「プライベートカンパニー」の語を使ったほうが、誤解がありません。

※プライベートカンパニーについて詳しくは「プライベートカンパニー 作り方 」もご覧ください。


2. ペーパーカンパニーがサラリーマンの節税につながる仕組み

次に、なぜペーパーカンパニーを設立して節税しようとするサラリーマンがいるのか、その仕組みを解説します。

ただし、前述のとおり、「ペーパーカンパニー」は違法の可能性を多分に含む語句です。

ここでご紹介するのは推奨という意味ではありません。危険性を理解するうえで必要な知識となります。

2-1. 租税回避地(タックスヘイブン)にペーパーカンパニーを設立する

1つめの手法は、租税回避地(タックスヘイブン)を活用した節税です。

租税回避地(タックスヘイブン)とは、法人税や所得税などの税率が極めて低く設定された国や地域のことです。

タックスヘイブンを活用すること自体には、違法性はありません。

タックスヘイブンは、その国や地域が海外企業を誘致するために、税制上の優遇措置を実施するものです。

よって、日本人が外国のタックスヘイブンで起業したり、移住したりすることは、合法です。

【代表的なタックスヘイブン】

・ケイマン諸島

・バハマ

・キュラソー

・香港

・シンガポール

・アイルランド

・ルクセンブルク

・デラウェア州

例を挙げると、カリブ海のケイマン諸島は、所得税や法人税がなく、非課税として知られています。

こういったタックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立し、投資などで得た所得を移転しようとする動きが見られます。

2-2. 複数の会社に所得を分散させる

2つめの手法は、複数の会社に所得を分散させるやり方です。

サラリーマンで副業収入や投資による収益がある場合に、法人設立(法人成り)するケースは、多く見られます。

実体があれば、これはペーパーカンパニーではなく、健全な会社です。プライベートカンパニーやマイクロ法人といった呼び方をすることが多いでしょう。

【参考記事】

・プライベートカンパニー

・マイクロ法人

法人税の税率は、非累進課税(所得の金額によって変動しない)で一律23.20%が原則ですが、中小法人の場合、所得800万円以下の部分について軽減措置が講じられています。

【中小法人(資本金1億円以下)向けの税制】

軽減税率所得800万円以下の部分について、税率19%。さらに、時限的に税率15%(租特法)

出典:財務省「中小法人に対する課税に関する資料」

よって、1つの会社で所得800万円を超えないように、ペーパーカンパニーを設立して所得を分散させようと試みる動きも見られます。

2-3. その他の手法

その他、ペーパーカンパニーを利用(悪用)したスキームは、さまざまなパターンがあります。

本記事の主題である「サラリーマンの節税としてのペーパーカンパニー」からは脱線するものも多いので、以下にまとめてご紹介します。

・複数の会社に売上高を分散し、消費税の納付義務を免除する(課税売上高1,000万円以下なら免税事業者)

・本業の会社からペーパーカンパニーに不動産などを売却し、売却損を計上し利益圧縮する

さらに悪質性の高いものとしては、以下があります。

・不法な収益を正当に見せかけるマネーロンダリング(資金洗浄)に使う

・ペーパーカンパニーを使って巨額の損失を隠す(例:オリンパス事件

・複数のペーパーカンパニーを使って、国や地方自治体から補助金や給付金を搾取する

・無担保ローンの仕組みを悪用して、金融機関から融資を搾取する


3. 違法性の高いペーパーカンパニーを設立するとどうなるか

ここまでお読みいただくと、ペーパーカンパニーは節税の範囲を超えて、脱税の危険性があるとイメージできたのではないでしょうか。

実際に、サラリーマンがペーパーカンパニーを設立して節税を試みた場合、どうなる可能性があるのか、見ていきましょう。

3-1. タックスヘイブン対策税制が適用される

タックスヘイブンの国・地域に、実体のないペーパーカンパニーを設立して税負担を免れようとした場合、「タックスヘイブン対策税制」が適用されます。

タックスヘイブン対策税制では、経済実態のない、いわゆる受動的所得は、タックスヘイブンに設立したペーパーカンパニーではなく、日本の本社(個人の場合、個人)に合算して課税されます。

つまり、日本の税制に従って、所得税や法人税を納税する必要があるということです。

合算対象外にするためには、その国・地域において、事業の管理・支配・運営を自ら行っていることや、経済実態があることを証明する書類を提出し、認められる必要があります。

実体のない名目だけのペーパーカンパニーは、合算対象外になりません。

参考:ジェトロ「タックスヘイブン対策税制:日本」国税庁「我が国タックス・ヘイブン税制と租税条約の関係」

3-2. ペーパーカンパニー悪用による摘発事例

より悪質であると判断されれば、摘発の対象となり、逮捕されたりその事実が報道されたりするリスクが高まります。

以下は、近年、報道のあったペーパーカンパニー関連事件の例です。

・海外会社を使い脱税容疑 不動産会社ら告発 税理士グループが指南か
20211223日、朝日新聞)

・給付金8千万円詐取か、容疑の男2人逮捕 ペーパーカンパニー悪用?
20211115日、朝日新聞)

・【独自】2億円を医薬品関連会社に流出か日大背任事件、ペーパーカンパニー?
20210911日、読売新聞)

安易にペーパーカンパニーで節税しようと考えることは、おすすめできません。

サラリーマンとしての生活にも悪影響が及び、人生が狂う原因にもなりかねないからです。

とはいえ、手元に残るお金を増やしたいと思うのは、当然のことです。日本の税法のルールの中で安全にできる対策を、次の章でご紹介します。


4. ペーパーカンパニーに代わる節税手法の選択肢

ペーパーカンパニーに代わる、サラリーマンができる節税の手法をご紹介します。

4-1. 控除をしっかり使い切る

まず1つめは「控除をしっかり使い切る」ことです。

会社での年末調整や個人での確定申告の際に、さらに適用を受けられる控除がないか、再確認しましょう。

【控除の例】

・特定支出控除

・扶養控除

・医療費控除

・生命保険料控除

・地震保険料控除

・雑損控除

・ふるさと納税

・住宅ローン控除

・配当控除

・小規模企業共済等掛金控除(企業型DCiDeCo など)

とくに、サラリーマンの方が意外と使い切れていないのが「特定支出控除」です。

勤務先の会社の承認が得られれば、以下の支出を控除できます。

【給与所得者の特定支出控除】

1 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)

2 勤務する場所を離れて職務を遂行するための直接必要な旅行のために通常必要な支出(職務上の旅費)

3 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)

4 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)

5 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)

6 単身赴任などの場合で、その者の勤務地または居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)

7 次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限ります。)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)

1)書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)

2)制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)

3)交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)

出典:国税庁「No.1415 給与所得者の特定支出控除」より抜粋

4-2. 経費や損失を抜け漏れなく計上する

2つめは「経費や損失を抜け漏れなく計上する」ことです。

まず、副業収入がある場合には、日頃から経費の記帳を正確に行っておき、確定申告の際に漏れなく申告できるようにしましょう。

【必要経費の例】

出典:フリーランスのための税金対策

また、投資などで損失が出たときには、損失も忘れずに計上することが大切です。

損失には課税されないため申告義務はありませんが、計上しておくと、翌年以後3年にわたり繰越控除が可能となります。

4-3. プライベートカンパニーを設立する

3つめは「プライベートカンパニーを設立する」ことです。

実体のないペーパーカンパニーではなく、実体のある健全な法人(プライベートカンパニー)を設立することで、納税する金額を抑えられる可能性があります。

その場合にポイントとなるのは、課税所得の金額です。課税所得とは、経費や控除を差し引いた後の金額となります。

個人に課税される所得税は累進課税のため、課税所得が少ないほど低額に、課税所得が多いほど高額になる仕組みです。

・所得税の税率:545%(住民税は別途)

一方、法人税は「非」累進課税であり、基本的に一律の税率で課税されます。

【法人税の税率】

法人税の税率は、普通法人、一般社団法人等又は人格のない社団等については23.2
(資本金1億円以下の普通法人、一般社団法人等又は人格のない社団等の所得の金額のうち年800万円以下の金額については15%)

出典:財務省「法人課税に関する基本的な資料」

目安としては、「課税所得 800万円 程度」が、法人化を検討してもよいタイミングといわれます。

参考:『SCOPE』9月号(No.231)p.8


5. 正しい税金対策は税の専門家である税理士に相談を

社会的な信用を失うリスクのあるグレーなやり方ではなく、正々堂々と安全な方法で税金対策をするためには、税の専門家である税理士へ相談されることをおすすめします。

その理由を3つ、ご紹介します。

  1. サラリーマンこそ専門家に活用すべき
  2. 法人化したほうがよいのか相談できる
  3. 法人化する場合は手数料無料で設立代行を依頼できる

5-1. サラリーマンこそ専門家に活用すべき

本業、副業、不動産運用、投資……と多忙を極めるサラリーマンの方こそ、専門家を活用すべきです。

会社を経営している経営者の場合、日頃から税理士をはじめとする専門家と接する機会が多いため、自然と必要な情報が集まってきます。

一方、そのような環境にないサラリーマンの方は、周囲の知人やインターネットからの情報収集が中心となり、どうしても情報の質が劣ります。

辻・本郷 税理士法人は、所得税申告だけでも毎年1万件以上の実績がありますので、情報の濃さと鮮度が違います。

安全で効果的な税金対策の手法に熟知している専門家の知恵を、積極的にご活用ください。

5-2. 法人化したほうがよいのか相談できる

サラリーマンの方にとって、判断に迷うのは、

「自分のケースでは法人化したほうがよいのか?しないほうがよいのか?」

という点ではないでしょうか。

辻・本郷 税理士法人では、無料相談を何度でも、ご納得いただけるまで受け付けています。

ご自身の状況にぴったりと合う最適な選択肢を見つけるためには、専門家に直接相談するのが、最も確実です。

5-3. 法人化する場合は手数料無料で設立代行を依頼できる

ペーパーカンパニーではなく、実体ある会社を設立して対策していこうと考えたときには、サラリーマンの方にとっては、書類作成や法務局への提出などの労力・手間がネックとなります。

辻・本郷 税理士法人では、難しくて手間のかかる会社設立を手数料無料で代行しています。

当法人との税理士顧問契約が要件となりますが、設立後の経理や決算などを通じた税金対策も、一貫してサポートできるのが強みです。

まずは、こちらのお問い合わせページより、無料相談にてお問い合わせください。


6. まとめ

本記事では「ペーパーカンパニー」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。

ペーパーカンパニーとは何か、基本的な意味を解説しました。

  1. 「ペーパーカンパニー」=事業の実体のない会社
  2. ペーパーカンパニーは一般的に悪い意味

ペーパーカンパニーがサラリーマンの節税につながる仕組みとして、以下が挙げられます。

  1. 租税回避地(タックスヘイブン)にペーパーカンパニーを設立する
  2. 複数の会社に所得を分散させる
  3. その他の手法(売上高の分散、資産売却による損失計上など)

違法性の高いペーパーカンパニーを設立すると、以下のリスクがあります。

  1. タックスヘイブン対策税制が適用される
  2. 摘発・逮捕される事例もある

ペーパーカンパニーに代わる節税手法の選択肢として、3つをご紹介しました。

  1. 控除をしっかり使い切る
  2. 経費や損失を抜け漏れなく計上する
  3. プライベートカンパニーを設立する

モラルのないやり方でリスクを冒さなくても、税金対策できる手法は多くあります。専門家のサポートを得ながら、正しい知識で安全にキャッシュを増やしていきましょう。

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