【会社設立・法人成りに必要な3つの費用】安く抑えるポイントとは

「法人成りにはどのような費用がかかるの?費用相場が知りたい」

「法人成りの費用は高いの?法人成りを進めたいけれど設立費用やランニングコストが不安」

法人成りをするときに、実際にはどれくらい費用がかかるのか気になりますよね。個人事業主は0円から開業できるため、イメージが沸かない方もいるでしょう。

結論から言うと、法人成りには最低でも24万円程度の費用がかかります。

この費用は下記の3つの費用から成り立っており、株式会社を設立するときに必ず必要です。例えば、株式会社を設立するためには登記登録が必須なので、登記費用が捻出できなければ法人成りはできません。

法人成りをするときに必要な費用
定款費用会社の基本原則をまとめた定款を作成・保管するための費用
登記費用株式会社を登記するための費用
資本金法人成りをするための資本となる資金

また、法人成りをした後には個人事業主では発生しなかった下記のような費用が発生します。

費用が発生する項目費用の概要
社会保険料役員や従業員の厚生年金・健康保険の費用
税金法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・消費税
決算公告費用決算の財務内容を公開するための費用
株主総会費用株主総会を招集するための費用

法人成りをするとどのような費用がかかるのか全体像を認識して、計画的に進めることが欠かせません。

そこでこの記事では、法人成りに必要な費用を始め、ランニングコストや合同会社との費用比較など法人成りの費用に関するポイントをまとめて解説していきます。とくに、設立時に必要な費用は分かりやすくまとめているため、自分のケースに当てはめて算出できます。

【この記事で分かること】
・法人成りをするときにかかる3つの費用
・法人成りをして株式会社を運営するための費用
・合同会社と設立費用
・ランニングコストを比較
・費用がかかっても株式会社を選択したほうがいいケース
・法人成りをするときの費用を少しでも抑えるポイント

この記事を最後まで読むと法人成り時に必要な費用やランニングコストが理解でき、法人成りをどのように進めるべきか判断できます。費用は法人成りをするときの重要なポイントとなるので、ぜひ参考にしてみてください。


1.法人成りには最低でも24万円程度の費用がかかる

冒頭でも触れたように、法人成りをするときの株式会社設立費用は最低でも24万円程度必要です。個人事業主の開業は個人で行えば0円なので、比較すると「少し高いなぁ」と感じるかもしれません。

法人成りをするときに必要な費用
定款費用会社の基本原則をまとめた定款を作成・保管するための費用
登記費用株式会社を登記するための費用
資本金法人成りをするための資本となる資金

一例として、資本金300万円で法人成りをする場合は、定款費用に約9.2万円、登記費用に17万円程度必要です。合計すると、資本金を除いて最低でも約26.2万円かかります。

資本金が300万円の場合
定款費用92,300円~(紙面申請の場合)
登記費用170,000円~
資本金300万円
合計資本金を除いて262.300円~

それぞれ具体的にどのような費用がかかるのか確認してみましょう。


2.法人成りをするときにかかる3つの費用

費用項目内訳費用
定款費用認証手数料30,000~50,000円
謄本代2,000円が目安
収入印紙代40,000円
印鑑証明書300円~
登記費用登録免許税資本金×0.7%または15万円
会社実印登録費用20,000円~
資本金資本金1円~
合計最低242,301円~
参考:京橋公証役場「紙(書面)による定款の認証」
   大阪府「印鑑登録証明書の交付請求」
   国税庁「登録免許税の税額表」

先ほども触れたように、法人成りをするときには3つの費用がかかります。これらの費用を合計すると、最低で約24万円必要です。

それぞれどのような費用なのか1つずつ詳しく解説していきます。中には、少しでも抑えられる費用があるため併せてチェックしてみてください。

2-1.定款費用

定款とは、簡単に言うと会社の基本原則をまとめた書類です。定款の記載事項は会社法で定められており、下記の3つの項目を記載します。

記載事項概要
絶対的記載事項商号・本社所在地・資本金・発起人の氏名と住所・事業目的など必ず記載しなければならない事項
相対的記載事項法的には定めがない事項ではあるものの、記載をしておかないと効力がないもの(例:株券発行や株主名簿の管理人に関する事項など)
任意的記載事項①と②には該当しない事項(例:株主総会の規定・配当金に関する事項など)

定款は法人成りをするときには必ず必要で、定款の認証が受けられないと法人成りができません。定款の認証には、下記の4つの手数料がかかります。

費用項目内訳費用
定款費用認証手数料30,000~50,000円
謄本代2,000円が目安
収入印紙代40,000円
印鑑証明書300円~

①定款の認証手数料

定款の認証手数料は、定款の認証を受けるために必要な手数料です。紙面と電子(PDFやWordでの提出)の2種類の方法で提出でき、資本金額に応じて30,000~50,000円を支払います。

資本金の額認証手数料
資本金の額等が100万円未満30,000円
資本金の額等が100万円以上300万円未満40,000円
上記に該当しない場合50,000円
※ここでの資本金は基本的には定款に記載された資本金額を指しています
※紙面・電子双方の金額です
参考:京橋公証役場「紙(書面)による定款の認証」

例えば、資本金が150万円の場合は、4万円の認証手数料が必要です。定款の認証は、設立する会社の本社所在地がある公証役場で行っています。例えば、東京に本社がある場合は、東京都内の公証役場に行きます(電子定款の場合は事前にメール等で定款の送付が必要な場合があります)。

②定款の謄本代

定款の謄本代とは、謄本を作成するための費用です。原始定款を公証役場で保管するためには、謄本の作成が必要です。定款の謄本は、定款の認証時に併せて作成するのが一般的です。謄本代は1冊約2,000円が目安ですが、細かな内訳の一例は下記のとおりです。

定款の種類謄本代
紙面1枚250円
電子電子記録保存料:300円 基本料700円+1枚20円
参考:京橋公証役場「紙(書面)による定款の認証」

例えば、30ページある紙面の定款を謄本する場合、30ページ×200円で謄本代は6,000円です。定款の枚数や保存方法により金額が左右されるため、注意してください。

③収入印紙

定款は課税文書に該当するため、公証役場で保管する原始定款には収入印紙を貼りつける必要があります。収入印紙代は4万円です。

収入印紙40,000円

定款を電子申請した場合は収入印紙は不要となり、40,000円の節約になります。しかし、現状は個人で電子申請をするには以下のシステムが必要です。

・PDF変換ソフト

・電子印鑑証明書

・カードリーダライター

これらのシステムを既に持っている場合は法人成りの費用削減につながりますが、そうでない場合は初期投資にコストがかかるため注意が必要です。

④印鑑証明書

定款の認証を行うには、発起人の印鑑証明書が必要です。印鑑証明書の取得には、1通300円かかります。

印鑑証明書300円

法人成りでは個人事業主本人の印鑑証明書と、他に発起人がいる場合はその人の印鑑証明書を用意しなければなりません。また、発起人自身が申請を行うのか代理人が申請を行うのかによっても必要な印鑑証明書の種類やその他書類が変わります。

2-2.登記費用

 

登記とは、法務局に株式会社の概要を登録し公的に認めてもらうための制度です。法人成りをするときには、必ず登記が必要です。登記をするときには、下記の費用がかかります。

費用項目内訳費用
登記費用登録免許税資本金×0.7%または15万円
会社実印費用20,000円~

①登録免許税

登録免許税とは、登記をするときにかかる国税のことです。法人成りでは、資本金×0.7%または15万円のどちらか高い額を納税しなければなりません。

登録免許税資本金×0.7%または15万円
参考:国税庁「登録免許税の税額表」

例えば、資本金が100円の場合は、15万円の登録免許税がかかります。また、資本金が3,000万円の場合は15万円のよりも資本金×0.7%で算出したほうが高くなるため、21万円が登録免許税として必要です。

②会社実印

会社実印とは、新しく設立する会社用の実印のことです。以前は登記申請時に必ず必要でしたが、商業登記規則の改正により、オンライン申請時は不要となりました。

とは言え、紙面での申請や銀行、取引先との契約締結や他の書類など実印が必要なシーンは多々あるので、登記時に作成しておいたほうが得策です。法人成り時には下記の3種類の印鑑をまとめて作成するのが一般的です。

法人成りをするときに必要な実印の種類
実印法務局に印鑑登録を行い会社の意思表示に使用する印鑑
銀行印銀行などの金融機関に届出をして使用する印鑑
角印届出が不要な会社で会社の認印としての役割を果たす

印鑑の作成費用は材質により大きく異なるため一概には言えませんが、20,000~60,000円程度が相場です。

印鑑作成費用20,000~60,000円程度

会社実印が完成したら、法務局にて印鑑届書を提出します。印鑑届出には費用はかかりませんが、登録した実印の印鑑証明書の取得には390円~450円の費用がかかります。

法人の印鑑証明書の取得費用
書面請求450円
オンライン請求・郵送410円
オンライン請求・窓口での交付390円

2-3.資本金

資本金とは、法人成りのときに出資者から集めた資金のことです。2006年の会社法改正で最低資本金額が撤廃されたため、理論上は出資額が1円であっても法人成りは可能です。

ただし、資本金は下記の要素を踏まえて検討する必要があるため、コストだけで設定することは好ましくありません。

【資本金額を決める要素】
 
・運転資金が十分に確保できている(3ヶ月~半年程度の運転資金がある)
・対外的な信用を得られる金額を設定している
・業務内容に応じた資本金額をクリアしている(人材派遣業:2,000万円以上・一般建設業:500万円以上など)

例えば、法人成りの費用を抑えたくて資本金を1円にしたところ、金融機関から信用を得られず融資に苦戦した失敗例があります。資本金の明確な基準はないものの、今後の展開を視野に入れて設定することが大切です。


3.法人成りをして株式会社を運営するための費用

法人成りをするときに必要な費用が把握できたところで、法人成りをしてから必要となる主な費用をご紹介します。

費用が発生する項目費用の概要
社会保険料役員や従業員の厚生年金・健康保険の費用
税金法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・消費税
決算公告費用決算の財務内容を公開するための費用
株主総会費用株主総会を招集するための費用

個人事業主とは異なりどのような費用が発生するのか理解しておくと、現状に応じたランニングコストの目安が掴めるようになります。法人成りは設立時だけでなく設立後の費用も検討するべきポイントとなるため、参考にしてみてください。

3-1.社会保険料

1つ目は、社会保険料です。社会保険料は一般的には厚生年金と健康保険(40歳以上65歳未満は介護保険料が追加)を指し、法人は強制加入となります。

正社員や契約社員など、雇用している従業員の条件や給与により支払い額が異なります。常勤である場合は基本的に会社代表者や役職者も対象となり、下記のような数式で会社負担額を算出します。

社会保険料の算出方法
健康保険標準報酬月額×健康保険料率÷2
厚生年金標準報酬月額×18.3%÷2

健康保険料率は、加入している保険会社や都道府県により異なります。厚生年金は2023年6月時点では、利率が18.3%で固定されています。

一例として、給与が20万円の場合の株式会社負担額を算出してみると、下記のようになります(健康保険料率は仮の数値で算出)。

厚生年金標準報酬月額×18.3%÷2

健康保険料率は、加入している保険会社や都道府県により異なります。厚生年金は2023年6月時点では、利率が18.3%で固定されています。

一例として、給与が20万円の場合の株式会社負担額を算出してみると、下記のようになります(健康保険料率は仮の数値で算出)。

給与が20万円の場合の株式会社負担額
健康保険20万×10%÷2=1万円
厚生年金20万×18.3%÷2=18,300円

給与20万円の場合、1人当たり約2.8万円の社会保険料を負担しなければなりません。従業員が多い場合や一人当たりの給与が高い場合は、負担額が大きくなります。

社会保険料は個人事業主のときには馴染みのなかった費用ですが、法人成りすると毎月発生するため注意が必要です。

従業員を雇わず、ご自身への役員報酬を0円にする場合は、社会保険料はかかりません。

3-2.税金

2つ目は、税金です。法人成りすると個人事業主のときとは異なり、下記のような税金の支払い義務が発生します。

税金の種類概要算出方法
法人税 赤字の場合:支払い義務なし年間所得に対して発生する国税年収に応じて税率が変わる 所得800万円以下:15%(除外条件あり) 所得800万円以上:23.2%
法人住民税 赤字の場合:一部支払い義務あり会社を登記している都道府県に納める地方税法人税割と均等割で構成されており納税する都道府県により税率が変わる
法人事業税 赤字の場合:支払い義務なし事業所のある都道府県に納める地方税都道府県により税率や税率判定の仕組みが変わる
特別法人事業税 赤字の場合:支払い義務なし法人事業税と併せて納付する地方税(都市と地方が支え合い発展するための資源として創設)法人事業税の納付義務がある法人が対象で都道府県により税率が異なる
消費税 赤字の場合:特定の条件に該当すると支払い義務なし消費やサービスの取引に対して加算される間接税課税期間中に預かった消費税額-課税期間中の仕入れ時に支払った消費税額で算出(その他簡易課税制度あり)

法人成りをしたときの目安として税金をおおまかに算出すると1,000万円の利益に対して、約300万円の税金がかかると言われています(地域や従業員、業種により変動します 。)個人事業主と安易に比較できるものではありませんが、利益によっては税金負担が大きくなります。

また、法人住民税は事業が赤字であっても発生します。個人事業主の場合は赤字の状態で発生する税金がないため、法人成りをするときは留意しましょう。

3-3.決算公告費用

3つ目は、決算公告費用です。株式会社は決算のたびに、財務内容を公開する義務があります。会社の規模により公開する情報の範囲が異なります。

会社の規模公開する情報の範囲
大会社 (資本金額が5億円以上、または負債計上額の合計額が200億円以上の会社)貸借対照表と損益計算書
大会社以外貸借対照表

法人成りをしてすぐに大会社に該当するケースは少ないため、まずは貸借対照表を公示すると考えるといいでしょう。決算公示の方法は下記の3種類があり、それぞれ費用が異なります。

公示方法概要費用相場
官報国の広報誌である官報に掲載する7万円~20万円程度
日刊新聞紙馴染みのある日刊新聞紙に掲載する50万円程度~
電子公告自社のホームページなどに掲載する0円~

費用を抑えたい場合は、自社ホームページでの決算公告が向いています。社内でホームページを管理していれば、0円で公告することも可能でしょう。ただし、電子公告には

・決算書類の全文掲載が必要

・計算書類承認後5年間を経過する日まではホームページに掲載しなければならない

など特別な規定があるので、理解をしたうえで掲載する必要があります。

3-4.株主総会開催費用

4つ目は、株主総会を開催するための費用です。株式会社は、毎事業年度の終了後の一定期間内に株主総会を行う義務があります。株主総会の方法には対面とオンラインがあり、費用が異なります。

株主総会の方法概要必要な費用
対面株主や役員が一か所に集まり株主総会をする方法会場代 お弁当やお茶代 お土産代 資料作成代
オンラインのみオンラインのみで開催する方法現法上は上場している会社しか認められていないパソコンやマイクなどの機材代 資料作成代 (お土産代)
ハイブリッド型 (オンラインと対面)対面の場を設けながらオンライン配信も行う方法会場代 お弁当やお茶代 お土産代 資料作成代 パソコンやマイクなどの機材代

対面での株主総会は会場の広さやお土産の個数によっては、費用がかさみます。場合によってはハイブリッド型にして会場を狭くすることで、コストダウンにつながる可能性があります。

また、現在の法律ではオンラインのみの株主総会は、上場企業にしか認められていません。法人成りをしたらまずは、対面かハイブリッド型で検討することになります。

3-5.その他の費用

ここまで、法人成りをして株主総会を運営する際に必ず発生する費用について説明してきました。他にも発生し得る費用としては、下記が考えられます。

費用が発生する項目概要費用の相場
定款の書き換え費用役員交代や本社所在地の変更などがあったときにはその都度費用が発生する2~4万円程度
顧問契約料税理士や弁護士と顧問契約を結ぶときに発生する費用年間20~60万円程度

例えば、定款の内容を書き換える場合は、その都度費用が発生します。また、弁護士や税理士などの士業と顧問契約をする場合には、年間費用がかかります。このように、法人成りをすると、個人事業主のときには発生しなかったランニングコストがかかるため、あらかじめ把握しておくようにしましょう。


4.合同会社と株式会社どちらがいい?設立費用・ランニングコストを比較

法人成りを検討するときに、気になるのが合同会社と株式会社の費用差ではないでしょうか?合同会社とは、出資者と経営者が同じ会社形態です。一方で、株式会社は株主から資本を集めて会社を経営していく形態です。

項目株式会社合同会社
出資者と経営者異なる同じ
代表者の呼び名代表取締役代表社員
重要事項の決定機関株主総会社員全員の同意
役員の任期基本的には10年 (株式の譲渡制限がないときは2年)なし

両者は出資者や経営スタイルが異なりますが、ここでは費用に焦点を絞り「設立費用」と「ランニングコスト」を比較してみましょう。

4-1.会社設立費用は「合同会社」のほうが低い

株式会社と合同会社の設立費用を比較すると、合同会社のほうが約12万円低いです。

合同会社の設立費用が低くなる理由は、定款の認証が不要だからです。株式会社と合同会社は共に定款の作成は義務ですが、合同会社は公証役場で認証を受ける必要がありません。定款の電子提出、保管ができる環境であれば、収入印紙代も削減できます。

また、合同会社は登録免許税代が最低6万円と低いところもポイントです。株式会社の場合は最低15万円かかるため、ここでも設立費用に差が生まれます。

辻・本郷税理士法人の場合は、株式会社と合同会社どちらの設立であっても、39,000円の特別割引があります。

【株式会社】

【合同会社】

4-2.合同会社は株主総会や決算公告費が不要

次に、株式会社と合同会社のランニングコストを比較してみましょう。どちらも法人として社会保険加入の義務や税金支払いの義務があることは変わりません。

一方で、合同会社は株主から出資を受けておらず、株主が存在しません。そのため、決算公告や株主総会招集の義務がなく、株主に関するコストと手間を削減できます。

このように、費用だけに着目してみると、株式会社よりも合同会社のほうが設立費用やランニングコストを抑えられる傾向があります。では、費用が多少かかっても、株式会社を選択したほうがいいケースとしては、どのようなパターンが考えられるのでしょうか?次の章で詳しく解説します。


5.費用がかかっても株式会社を選択したほうがいいケース

多少費用がかかっても株式会社を選択したほうがいいケースとしては、次の3つがあります。

法人成りの設立費用のみで合同会社を選択してしまうと、将来的に思ったようなビジョンが描けなくなる可能性があります。後悔をしないためにも、事前に理解しておきましょう。

5-1.高い信頼性を得たい場合

社会的に高い信頼性を得たい場合は、株式会社をおすすめします。一般的には、合同会社よりも株式会社のほうが社会的な信頼性が高いと言われています。その理由は2つあります。

1つ目は、合同会社は株式会社と比較すると閉鎖的であることです。合同会社には決算公告の義務がありませんし、代表社員の意志を中心に事業が展開されていきます。外部から見ると内情を知る手段が少なく、資金繰りや経営状況の判断が難しい側面があります。

2つ目は、日本ではまだまだ普及していない形態であることです。日本で合同会社が認められるようになったのは、2006年のことです。新しい形態なので、認知度や信頼度が低い傾向があります。海外に目を向けるとAmazonやAppleなどの大手起業も合同会社ではありますが、日本ではまだ馴染みがないのが現状です。

・会社の知名度や信頼性を高めてサービスを拡大したい

・融資や投資を受けるために会社の信頼性を重視したい

という場合は、株式会社のほうが向いているでしょう。

5-2.将来的に上場を視野に入れている場合

将来、株式を証券取引所(株式市場)で売買できるよう上場を目指している場合は、株式会社を選択しましょう。「4.合同会社と株式会社どちらがいい?設立費用・ランニングコストを比較」でも触れたように、合同会社には株式を発行する制度がありません。言い換えると、合同会社では株式を発行することができないのです。

そのため、会社が成長しても株式上場を目指すことができません。将来的に合同会社から株式会社への変更も可能ですが、組織変更の手続きや株式会社としての登記に時間とコストがかかります。法人成りを検討している時点で

・将来的には株式上場を目指している

・株式上場を視野に入れた事業計画をしている

という場合は、株式会社を選択したほうがスムーズに進められます。

5-3.幅広い資金調達方法から選択したい場合

法人成りをしてから資金調達を検討している場合も、株式会社のほうが有利です。合同会社は下記の理由から、株式会社よりも資金調達の方法が限定される傾向があります。

・株式会社と比較すると信頼性が低い

・株式が発行できないため株式を活用した資金調達ができない

一方で、株式会社は出資や融資、助成金や補助金など様々な選択肢を踏まえて資金調達が検討できます。会社が成長して信頼性が高くなれば、より選択肢が増えていくでしょう。

・会社を成長させるために資金調達を検討している

・いざという時に資金調達ができる方法を選択したい

という場合は、株式会社を検討してみてください。


6.法人成りをするときの費用を少しでも抑えるポイント

法人成りをするときの費用は、少しでも抑えたいものです。ここでは、法人成りをする費用を抑えるための2つのポイントをご紹介します。

場合によっては数万円以上初期費用が抑えられる可能性があるので、参考にしてみてください。

6-1.市区町村の支援を活用する

法人成りを検討している市区町村によっては、創業支援を行っているケースがあります。市区町村の支援を受けることで、法人成りをするときの費用を抑えられるケースがあります。

一例としては、「創業支援事業計画」の認定を受けた市区町村が取り組んでいる創業支援事業があります。創業支援事業の内容は市区町村により異なりますが、松本市では一定の条件を満たすことで、登記時に必要な登録免許税が50%削減できる支援を行っています。

松本市の創業支援事業
通常の登録免許税資本金×0.7%または15万円
創業支援事業を活用したときの登録免許税資本金×3.5%または7.5万円
参考:松本市「産業競争力強化法に基づく松本市の「創業支援事業計画」および支援内容」

例えば、通常なら登録免許税が15万円かかる場合、創業支援事業を活用すると7.5万円になります。市町村ごとの創業支援事業の内容は下記より確認できますので、利用できそうな支援がないか確認してみてください。

中小企業庁「産業競争力強化法に基づく認定を受けた 市区町村別の創業支援等事業計画の概要」

6-2.電子申請を活用する

定款の電子申請ができる環境が整っている場合は、電子申請を活用するのも一つの方法です。電子申請を活用すると、下記の費用が削減できます。

項目紙面での申請電子申請
定款に貼る収入印紙代40,000円0円
定款の謄本代(15ページ)1ページ250円×15ページ=3,750円基本料:700円 電子記録保存料:300円 1ページ20円×15ページ=300円
費用43,750円1,300円(42,450円も抑えられる)

収入印紙代だけでなく、謄本代の費用も抑えられます。上記の例では、電子申請をすることで42,450円分の費用削減ができました。

ただし、自分で電子申請をするには、電子証明書の取得やICカードリーダライター、PDF変換ソフトなどの用意が必要です。これらを一から揃えるとコストと労力がかかってしまうため、ある程度揃っており初期投資なく電子申請ができる場合は費用を抑える方法として検討してみてください。


7.法人成りは自分でやるより代行依頼の方が損しにくい!代行依頼がおすすめな3つの理由

ここまで解説してきたように法人成りには様々な費用が発生し、一人で適切に処理することが非常に難しいです。例えば、定款の認証を行うにしても必要な書類や持ち物を把握し準備していないと、せっかく認証に行っても受け取ってもらえません。

このようなやり取りを重ねているうちに、時間と労力がかかりなかなか前に進まない失敗例は多いです。そこで法人成りを検討するときには、最初から代行依頼をすることがおすすめです。ここでは、代行依頼がおすすめな理由を詳しく解説していきます。

「自分で法人成りの手続きを進めようか迷っている」という人は一度立ち止まり、法人成りの方法を再検討してみてください。

7-1.迷いがなくなり適切な判断ができる

1つ目は、適切な判断ができることです。「2.法人成りをするときにかかる3つの費用」でも解説しましたが、法人成りの手続きは非常に複雑です。個人事業主の開業時とは異なり、定款の作成や申請、登記など初めて行うことが多くあります。どの作業も法律や会計の知識が必要となるので、自分で判断をすることが難しいです。

例えば、定款は記載するべき事項や記載しておいたほうがいい事項が決まっています。「株主総会に関することはもう決めておくべき?」「業務内容はどの程度まで記載するの?」など迷っていると、なかなか前に進みません。

また、定款の認定手続きには印鑑証明書や実印の用意など必要な持ち物や書類がありますが、ここを間違えると手続きができず二度手間になります。場合によっては不必要な書類を取得し、費用がかさむことも考えられるでしょう。このようなミスや手間を防ぎ最適な判断をするためにも、専門知識がある代行業者への代行依頼を検討してみてください。

7-2.費用を抑えられるケースがある

2つ目は、法人成りの費用を抑えられるケースがあることです。「代行業者に依頼すると高くなるのでは?」と思うかもしれません。確かに代行業者の中には、必要な費用を含めずに費用を公表していたりオプションで高くなったりすることもあります。

しかし、「辻・本郷 税理士法人」なら、下記のように自分で法人成りするよりも低い費用で代行依頼ができます。自分で時間をかけて法人成りするよりも、70,000円以上も安く法人成りができるのです。

主なサービス内容自分で法人成りする場合辻・本郷 税理士法人
定款認証印紙代 定款認証手数料 登録免許税など240,000163,000

※目安費用です。資本金額等により変動します。

実は、一部の費用を「辻・本郷 税理士法人」側で負担しているため、この費用を実現できています。このように、適切な代行業者を選択できれば、法人成りの費用を抑える方法としても有効です。

7-3.経営課題を踏まえたアドバイスがもらえる

3つ目は、経営課題を踏まえたアドバイスがもらえるところです。法人成り時の判断は、会社設立後のビジョンに関わっている部分が多々あります。例えば、適切な資本金額や株式会社、合同会社の選択は会社設立後の計画に左右されます。

少しでも多くの融資を受けたい場合は、資本金額の検討が必要かもしれません。また、個人事業主時代の資産を引継ぎ、資金繰りをする方法を検討できる可能性があります。このように、法人成りのときには様々な要素が関連するため、多方面から検討を行い適切なアドバイスをするには知識と経験が必要です。

代行業者に依頼をすれば法人成りのサポートとともに、適切なアドバイスをもらえるところも大きなメリットだと言えます。


8.自分に合う法人成り代行先の見つけ方

法人成りの代行先は、法人成りの手続きのみをサポートするケースと会社設立時の手続きと併せて顧問として様々な経営課題の解決をサポートするケースがあります。

それぞれ魅力が異なるため、どちらを選択するべきか参考にしてみてください。

8-1.法人成りのみをサポートするケース

法人成りの手続きのみをサポートするケースでは、下記のような会社設立時に必要な書類の作成や申請の代行を行います。今回ご紹介した「2.法人成りをするときにかかる3つの費用」に該当する業務を代行してもらえるイメージです。

【代行してもらえる業務の一例】
 
・登記書類の作成
・会社設立の登記申請
・定款の認定手続きなど

会社設立時に難しいと感じる登記申請や定款の認証手続きを一括して依頼できる点がメリットです。自分自身で行うと迷う部分や分からない部分が出てくるかと思いますが、代行依頼をすれば迷うことがありません。法人成りを目指す忙しい時期に、負担を減らし効率よく法人成りを進められます。

・いち早く法人成りを実現したい

・法人成りの負担を減らして効率よく進めたい

という場合は、法人成りのみのサポートを検討してみてください。

8-2.法人成り+顧問で日々の会計業務をサポート

法人成り時の手続きと併せて、新しく設立する会社の顧問として幅広いサポートを受けることも可能です。法人成りのみのサポートは会社設立の手続きができれば終わりですが、実は悩みを抱えやすいのは会社を設立した後です。

・個人事業主とは会計処理の方法が大きく異なりよく分からない
・株式会社として成長するにはどのような資金繰りが必要なのか悩む
・初めての決算書の作成方法が分からない
・融資を受けるにはどうすればいいのか相談できる相手がいない

など、個人事業主とは大きく異なる運営体制に戸惑い悩むことが増えます。そこで、法人成りをするときに顧問契約も済ませておけば、知識のある顧問と二人三脚で自社の課題や悩みを解決できるようになります。長い目で見れば、会社の成長に直結する資金繰りなども早い段階から手を打てるでしょう。

・会社設立時だけでなくその後のサポートも依頼したい

・個人事業主とは異なる運営体制に不安や疑問がある

・少しでも早く会社を成長させたい

という場合には、法人成りを顧問契約の双方を行える代行先がおすすめです。

まとめ

いかがでしたか?法人成りに必要な費用や会社設立後に必要な費用が理解でき、計画的に法人成りを進められるようになったかと思います。最後にこの記事の内容を簡単に振り返ってみましょう。

〇法人成りのときに必要な費用は下記のとおり

①定款費用:定款の認証手数料や謄本代、収入印紙代
②登記費用:登録免許税や会社実印登録費用
③資本金:1円から設定可能
 
合計すると最低でも24万円程度必要

〇法人成りをした後に必要な費用は下記のとおり

①社会保険料:役員や従業員の厚生年金・健康保険の費用
②税金:法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税・消費税
③決算公告費用:決算の財務内容を公開するための費用
④株主総会費用:株主総会を招集するための費用

〇費用はかかっても株式会社を設立したほうがいいケースは下記のとおり

①合同会社よりも信頼性が高いため信頼性を得たい場合
②将来的に上場を視野に入れている場合
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