個人事業主でも銀行融資は受けられる|必要書類や条件を解説

個人事業主として事業を運営していると、設備投資や事業拡大、新しいプロジェクトの立ち上げなどで、まとまった資金が必要になる場面が出てきますよね。

その際、有力な資金調達の方法として「銀行融資」が挙げられます。しかし、「個人事業主は銀行融資を受けにくい」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

実際、銀行融資を受けるためには事前の準備や一定の条件を満たすことが求められますが、必要な書類を正しく用意し、適切に対応すれば、融資を成功させることは十分可能です。

この記事では、個人事業主が銀行融資を受ける際の基本的な流れや必要書類、条件について詳しく解説します。また、その他の資金調達の選択肢や、個人事業主が融資を受けた際の借入金の仕訳方法についても取り上げます。

これから銀行融資を検討している個人事業主の方は、ぜひ最後までお読みいただき、事業運営の参考にしてください。

銀行融資を活用し、事業の成長と安定を手に入れるための第一歩を踏み出しましょう!


目次

1.個人事業主も原則、銀行融資は受けられる

個人事業主でも、一定の条件を満たせば銀行融資を受けることが可能です。ただし、受けるためにはいくつか条件があり、また、法人と比べると審査が厳しくなる傾向にあります。

以降の章では、個人事業主が銀行融資を受けるために必要な条件や、個人事業主が受けられる銀行融資の種類について解説します。


2.個人事業主が銀行融資を受けるための3つの条件

個人事業主は、事業の信用力が法人より低いと見なされやすいため、特に銀行側が融資に慎重になることが多いです。そのため、融資を受けるための条件を理解し、準備を整えることが重要となります。条件について、具体的に見ていきましょう。

2-1.開業届を提出していること

銀行融資を受けるためには、まず「事業を正式に行っている」ことを証明する必要があります。

そのためには、税務署に開業届を提出していることが必須です。開業届がないと、銀行側は事業の実態があるかどうかを判断できず、融資を断られる可能性が高くなります

2-2.2年目以降は確定申告を行い、納税していること

銀行は、個人事業主の信用力を判断するために事業計画書や確定申告書を重要視します。

特に、個人事業主として開業して2年目以降に融資を申し込む際には、直近の確定申告書を求められることが一般的です。

また、確定申告後に適切に納税をしていることも重要なポイントです。税金の未納があると、「資金管理ができていない」と判断され、融資審査で不利になります。

2-3.基本的に黒字で利益を上げていること

銀行融資においては、個人事業主が継続的に黒字を出しており、利益を上げていることが審査において重要な要素となります。

なぜなら銀行は、融資をしたお金が確実に返済されるかどうかを重視するためです。

赤字経営が続いていると、返済能力に不安があると判断され、融資を受けるのが難しくなります。

2-4.税金の滞納や消費者金融からの借金などの負の前提がないこと

税金の滞納や消費者金融からの借入があると、銀行は「信用リスクが高い」と判断します。

特に、消費者金融からの借入が多い場合は「資金繰りが厳しい」とみなされ、融資の審査に悪影響を及ぼします。銀行融資を検討する前に、税金の滞納を解消し、過度な借入を避けることが大切です。


3.銀行融資のうち、プロパー融資は個人事業主には難しい

銀行融資には、大きく分けてプロパー融資と保証付融資の2種類があります。

・プロパー融資:信用保証協会の保証なしで銀行が直接行う融資

・保証付融資:信用保証協会の保証を受けて行う融資

このうち、プロパー融資を受けるには、銀行が単独で「この事業者なら返済能力がある」と判断する必要があります。そのため、以下のような条件を満たしている事業者でなければ難しいのが現状です。

個人事業主がプロパー融資を受けるための条件

・長期間にわたり安定した黒字経営を続けている
・財務基盤がしっかりしている(手元資金が潤沢であると判断されるなど)
・過去の銀行取引で良好な実績がある

個人事業主の場合、法人に比べて財務基盤が脆弱であることが多いため、プロパー融資を受けるのは難しく、信用保証協会付きの融資(保証付融資)しか受けられないケースが一般的です。

※保証付融資とは?

信用保証協会は、信用力や担保力が不足する小規模事業者の資金調達をサポートする公的機関です。

保証付融資では、以下の流れで融資を受けることになります。

 

    1.    事業者が銀行に融資を申し込む
    2.    銀行と信用保証協会の双方が審査を行う
    3.    信用保証協会の保証が付けば、銀行から融資を受けられる
    4.    事業者は信用保証協会に保証料を支払う

保証付融資は、信用保証協会が一部リスクを負担するため、銀行にとっては融資のハードルが下がります。そのため、個人事業主が銀行融資を受ける際には、保証付融資が現実的な選択肢となるのです。


4.個人事業主が銀行から融資を受けるメリット

個人事業主が資金調達を行う方法は複数ありますが、そのうちの一つである銀行融資にもいくつかメリットがあります

個人事業主が銀行融資を受けることには、以下のような大きなメリットがあります。

銀行融資のメリット

・低金利で借入でき、返済負担が軽減される
・借入限度額が大きく、事業拡大に必要な資金を確保しやすい
・融資の実績が信用力向上につながり、将来の融資が受けやすくなる
・株式発行と異なり、経営に干渉されることなく資金調達が可能となる

この章では、個人事業主が銀行融資を受けることの主なメリットについて詳しく解説していきます。

4-1.融資の中では金利が低めである

銀行融資の最大のメリットの一つは、金利が比較的低いことです。

銀行融資は審査が比較的厳しい反面、金利は低く設定されており、おおむね2.0%程度からです。これは、消費者金融やビジネスローンと比べると圧倒的に低く設定されています。

例えば、消費者金融の事業者向けローンでは年10%〜15%程度の金利が一般的であり、これを考えると、銀行融資の方がはるかに有利です。

低金利で借入できれば、返済負担を抑えながら資金調達ができるため、事業の安定性が増します。

4-2.借入限度額が多い

銀行融資には、他の資金調達方法と比べて借入限度額が大きいというメリットがあります。

一般的に、銀行からは数百万円〜数千万円規模の融資を受けることが可能です。事業の規模や自己資金、事業計画に応じて融資額は決まりますが、規模感としては、設備投資や事業拡大などの大きな資金ニーズにも対応できます。

例えば、事業用の店舗や設備の購入、事業立ち上げの際の仕入れ資金の確保など、大きな資金が必要な場面で銀行融資は有力な選択肢になります。

借入額が大きくなるほど審査は厳しくなるため、事業計画や収益見込みをしっかり準備することが重要ではありますが、借入限度額の多さは銀行融資の魅力の一つです。

4-3.銀行融資を受けると事業の実績となり、信用力が向上する

銀行からの融資を受けることは、事業の信用力向上につながります。

銀行は融資の際に厳格な審査を行うため、一度融資を受けることができれば、銀行から「信用できる事業者」であると認められた証拠になるのです。

銀行融資の実績があると、次回以降の融資が受けやすくなるため、将来的な資金調達のハードルが下がります。また、取引先や仕入れ先からの信頼度も上がり、ビジネスの幅を広げることができます。

このように、銀行融資は単なる資金調達手段ではなく、事業の成長において重要な実績にもなるのです。

4-4.株式による資金調達と違い、経営への干渉がない

銀行融資と株式発行(出資による資金調達)を比較した場合、銀行融資は経営への干渉がないという点で大きなメリットがあります。

株式を発行して資金を調達する場合、出資者(投資家)の意向が経営に影響を与えることがあります。

一方、銀行融資は借入金の返済さえ適切に行えば、経営方針に干渉されることはありません。

そのため、自分の経営判断で事業を進めたい個人事業主にとって、銀行融資は自由度の高い資金調達手段となります。


5.個人事業主が銀行から融資を受けるデメリット

銀行融資は、低金利や高額な借入が可能などのメリットがある一方で、以下のようないくつかのデメリットも存在します。

銀行融資のデメリット

・審査が厳しく、事業の安定性や収益性が求められる(審査落ちのリスクあり)
・融資までに時間がかかる(2週間〜1ヶ月以上、場合によっては3ヶ月)
・担保や保証人を求められることが多い(保証付融資でも審査あり)

そのため、銀行融資を検討する際は、事前に準備をしっかり整え、他の資金調達方法と比較しながら最適な方法を選ぶことが重要です。

この章では、個人事業主が銀行融資を利用する際の主なデメリットについて詳しく解説していきます。

5-1.銀行融資は他の融資以上に審査が厳しい

銀行融資の審査は、他の資金調達方法と比べて非常に厳しいのが特徴です。

収入の安定性や事業の将来性を詳細にチェックされるため、経営や事業計画が不安定な場合や、事業で赤字が続いているような場合は、融資を断られることがあります。

例えば、確定申告をしていない、納税が遅れている、過去に金融機関での延滞履歴があるなどの信用面の問題があると、審査に通るのは難しくなります。また、事業計画や返済計画の提出も求められるため、計画をしっかり作成する手間がかかります。

このように、銀行は「確実に返済できる事業者にしか貸さない」という方針のため、個人事業主にとってはハードルが高くなることがデメリットです。

5-2.融資審査に時間が長くかかる

銀行融資は、審査や手続きに時間がかかるため、急ぎの資金調達には向いていません。融資方法別に、審査期間の比較を以下の表に記載します。

各融資方法の審査期間の比較

融資方法平均審査期間
銀行融資2週間〜1ヶ月以上(信用保証付き融資:23週間/プロパー融資:担保なしで23週間、担保ありの場合は約4週間)
日本政策金融公庫初回:3週間〜1ヶ月程度/2回目以降:13週間程度
ビジネスローン(銀行系カードローン)最短で数日〜2週間程度

このように、銀行融資は、手続きが煩雑なため、融資が実行されるまでに最低でも2週間〜1ヶ月以上かかることが一般的です。事業内容や財務状況の確認、確定申告書や事業計画書の提出行程、必要に応じて担保や保証人の審査など、多くの手続きを経るため、急ぎで資金を調達したいという事業者には不向きと言えるでしょう。

5-3.担保や保証人が必要な場合が多い

個人事業主が銀行融資を受ける際、担保や保証人を求められるケースが多いのもデメリットの一つです。

例えば、個人事業主が利用しやすい保証付融資では、信用保証協会が借主(個人事業主)の保証人となり、万が一返済できなくなった場合に金融機関に代わって弁済を行うという条件のもと、融資を受けることができます。しかし、この場合は信用保証協会の審査が必要であり、さらに、保証料の支払い義務も発生してしまいます。

また、信用保証協会を利用しないプロパー融資を受けるという場合には、銀行が不動産などの担保や保証人を要求することが一般的です。

そのため、担保にできる不動産がないと、融資を受けにくくなっています。また、保証人が必要な場合には、親族や知人に頼む必要があり、心理的負担が大きいというデメリットがあります。さらに、万が一事業が失敗してしまうと、担保を失うというリスクもあります。

このように、銀行融資は低金利で借りられる反面、担保や保証人の問題が精神的、実務的な負担になることも多いのです。


6.個人事業主が銀行融資を受けるまでの主なステップ

個人事業主が銀行融資を受けるには、いくつかの手続きを踏む必要があります。

銀行融資を受けるための流れの概要は、以下の通りです。

①銀行に相談し、融資申請を行う
②必要書類を準備して提出する
③融資担当者との面談を実施(事業の将来性や返済計画を説明)
④審査を受ける(約1ヶ月、結果によって融資条件が決まる)
⑤銀行から融資を受ける(契約締結後、資金が振り込まれる)

融資を受けるまでには、事前の準備や審査対応が重要となるため、スムーズに進めるために各ステップを理解しておきましょう。

この章では、銀行融資を受けるまでの主な流れを解説します。

6-1.電話や融資窓口などで銀行へ融資に関する相談、申請をする

まず、融資を希望する銀行に相談をします。直接銀行の融資窓口に訪問する、または電話で問い合わせる方法があります。

事業内容や資金用途、希望融資額について簡単に説明し、銀行側の対応を確認します。相談の際に、融資の条件や必要書類を聞いておくと、スムーズに準備が進みます。

銀行によっては、個人事業主向けの専用融資商品を用意している場合もあるため、事前に公式サイトなどで情報をチェックしておくのも有効です。

6-2.必要な書類を集めて提出する

銀行の融資を受けるためには、いくつかの書類を提出する必要があります。必要な書類と、その内容(なぜ提出が求められているか)については、以下の表をご覧ください。

一般的な銀行融資に必要な書類一覧

書類名内容・目的
本人確認書類運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどで本人確認
代表者の印鑑証明書代表者の実印を証明
直近1~3年分の確定申告書事業の収益状況を証明
青色申告決算書(損益計算書・貸借対照表)または収支内訳書(白色申告の場合)事業の財務状況を証明
各種控除関係書類控除が適用されている場合に必要
消費税の確定申告書消費税の納税状況を確認するため
資金計画書借りた資金の用途や返済計画を明確にするため
借入計画書具体的な借入額や返済計画を記載
事業計画書融資の目的や今後の事業展開を説明
開業届事業が正式に登録されていることを証明
勘定科目内訳明細書、経営分析資料など事業の詳細な財務状況を示すため、提出すると審査が有利になる可能性あり

銀行によって求められる書類は異なるため、事前に銀行に確認し、抜け漏れなく準備しておきましょう。

6-3.融資担当者との面談を行う

書類を提出した後、銀行の融資担当者との面談があります。面談では、事業の内容や資金の用途、返済計画などについて詳しく質問されます。このとき、事業の将来性や安定性をしっかりアピールすることが重要です。

特に、融資の場では返済能力の有無が重視されるため、収益の見込みや資金繰りの計画を明確に説明しましょう。

面談の際に、もし不明点があれば、銀行側に質問しておくと良いでしょう。

6-4.融資を受けられるか審査される

面談の後、銀行による本格的な審査が行われます。

審査基準は非公開ですが、一般的には、以下のような点がチェックされます。

審査で見られやすい点

・事業の収益状況(事業計画、売上、利益)
・返済能力(キャッシュフローや負債状況、返済計画)
・信用情報(税金の滞納や過去の借入状況)
・事業の将来性(事業計画、業界の動向や市場の成長性)

審査には最短で2週間、通常1ヶ月以上はかかることが多いです。審査結果によって、融資の可否と、融資を受けられる場合には金利、融資額、返済期間が決まります。

仮に審査に落ちてしまった場合でも、必要に応じて別の融資手段を検討することができます。改善点がどこにあるかを再検討してみましょう。

6-5.銀行から融資を受ける

審査に通過すると、銀行と融資契約を締結し、指定口座に融資金が振り込まれます。

このとき、契約内容をしっかり確認し、特に金利や返済条件について、不明点があれば事前に質問しておきましょう。

融資を受けた後は、計画通りに返済を行うことが最も重要です。返済の遅延があると、信用力が低下し、将来的に追加の融資が難しくなる可能性もあるため、十分に注意が必要です。


7.銀行融資の申し込みに必要な書類一覧

個人事業主が銀行融資を申し込む際には、さまざまな書類を準備する必要があります。

審査をスムーズに進めるために、事前にしっかりと確認し、抜け漏れがないように準備しましょう。一般的に求められる書類の一覧表を以下に記載します。

必要な書類一覧

書類名内容・目的
本人確認書類運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどで本人確認
代表者の印鑑証明書代表者の実印を証明
直近1~3年分の確定申告書事業の収益状況を証明
青色申告決算書(損益計算書・貸借対照表)または収支内訳書(白色申告の場合)事業の財務状況を証明
各種控除関係書類控除が適用されている場合に必要
消費税の確定申告書消費税の納税状況を確認するため
資金計画書借りた資金の用途や返済計画を明確にするため
借入計画書具体的な借入額や返済計画を記載
事業計画書融資の目的や今後の事業展開を説明
開業届事業が正式に登録されていることを証明
勘定科目内訳明細書、経営分析資料など事業の詳細な財務状況を示すため、提出すると審査が有利になる可能性あり

銀行によっては追加の書類が求められる場合もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。


8.個人事業主が融資を受ける際の7つの注意点

銀行融資を成功させるためには、いくつかのポイントに注意する必要があります。この章では、個人事業主が融資を申し込む際に意識すべき7つの注意点を紹介します。

8-1.銀行は事業の財務の実態、純資産、返済可能性を主にチェックする

銀行融資の審査では、財務状況と返済能力を具体的に説明することが重要です。

なぜなら、銀行は融資のリスクを判断するために、事業の安定性や将来の返済可能性を厳しく確認するためです。

特に、個人事業主の場合、財務基盤が弱いと見なされやすいため、これらを明確に示す必要があります。

銀行が特に重視するのは、以下の3つの点です。

①財務の実態(売上や利益が安定しているか)
②純資産の状況(負債が多すぎないか、資産はどの程度あるか)
③返済可能性(事業が継続し、確実に返済できるか)

例えば、確定申告書や事業計画書を提出し、売上推移や今後の収益見込みを具体的な数値で示すと、審査通過の可能性が高まります。

銀行の審査を通過するには、財務の実態・純資産・返済可能性を具体的なデータで説明できるよう、事前にしっかり準備しましょう。

8-2.自己資金は多いほど審査で有利になる

銀行融資を受ける際、自己資金が多いほど審査に有利になります。

なぜなら、自己資金が多いと、銀行は「融資額を抑えられる」「返済リスクが低い」と判断しやすくなるためです。

また、銀行によっては自己資金の割合が一定以上であることを融資の条件としている場合もあります。

例えば、銀行が「自己資金が事業資金の30%以上あること」を条件としている場合、自己資金が不足していると融資を受けられません。

また、家族や友人からの借金は自己資金とはみなされないため、預金などの形で自己資金をしっかり準備しておくことが重要です。

このように、銀行融資を成功させるには、十分な自己資金を確保し、審査基準を満たせるよう準備を進めることが大切になります。

8-3.面談までに資金の用途を明確に説明できるようにしておく

個人事業主が銀行融資を受けるには、資金の使い道を明確に説明することが重要です。

なぜなら、銀行は、「なぜ融資が必要なのか?」を細かく確認し、融資が適切に活用されるか、返済の見込みがあるかを判断するためです。用途が曖昧だと、計画性がないと見なされ、審査を通過しにくくなります。

例えば、「設備投資のために500万円が必要」「広告費として200万円を投じ、新規顧客を獲得する」など、具体的な金額と用途を示すことで、融資の必要性と返済の見通しが明確になります。反対に、「事業資金が足りないから」という漠然とした理由では、審査が厳しくなります。

このように、銀行融資をスムーズに受けるためには、資金の用途を明確にし、具体的な金額と使い道を説明できるよう準備することが大切です。

8-4.資金計画や売上予測など具体的数値を挙げた事業計画書を作成する

銀行融資を受ける際には、事業計画書の内容に具体的数値を挙げる必要があります。

なぜなら、事業計画書は、銀行に対して「この事業が成功し、融資が返済できるか」を示す重要な資料であるためです。具体的な数値を盛り込むことで、銀行に信頼感を与え、融資の承認を得やすくなります。

売上予測や収益モデル、返済計画などを具体的な数値で示し、事業の成長性や市場の需要に対する見通しを説明すると良いでしょう。

例えば、以下のような事業計画書の記載例が挙げられます。

事業計画書の具体例

①売上計画

・商品単価:1個300円のパン
・販売数量:1日100個
・月間売上:300円 × 100個 × 30日 = 900,000円

②支出計画

・原材料費:10,000円/日 × 30日 = 300,000円
・人件費:月200,000円
・店舗賃料:月150,000円
・その他経費(設備維持、電気代など):月150,000円
・合計支出:800,000円

③利益予測

・月間利益 = 売上900,000円 – 支出800,000円 = 100,000円

④キャッシュフロー

例:月初に固定費(賃料、人件費)支払い、月末に収入確定(収入と支出をグラフや表など用いて時系列で整理し、資金繰りの内訳を可視化)

⑤感度分析

原材料費が10%増加した場合の影響について

・新コスト = 300,000円 × 1.1 = 330,000円
・新利益 = 900,000円 – (800,000円 + 30,000円) = 70,000円

6. シナリオ分析

・最善シナリオ:販売数量が20%増 → 月間売上 = 1,080,000円
・最悪シナリオ:販売数量が20%減 → 月間売上 = 720,000円

このように、具体的なプランを示すことで、説得力を高めることができます。

銀行融資を受けるためには、売上予測や収益モデルを具体的な数値で示した、説得力のある事業計画書を準備することが必要不可欠です。

8-5.確定申告書や決算書は一式全て提出する必要がある

銀行に融資を申請する際は、税務署に提出した確定申告書類をすべて提出することが重要です。

なぜなら、銀行は、融資審査において必要な情報を基に判断するためです。提出された書類が不完全だと、銀行側で必要な情報が不足し、審査に支障をきたす可能性があります。

特に個人事業主の場合、法人と比べて財務情報が少ないため、銀行に正確な判断をしてもらうためにも、できるだけ詳細なデータを提出する必要があります。

そのため、融資申請時には、確定申告書類を一式すべて提出し、銀行に必要な情報を完璧に揃えておきましょう。

8-6.融資の審査には最大1ヶ月以上かかる

銀行融資は、審査に最大1ヶ月以上と時間がかかることも注意点の一つです。

銀行融資の審査期間は、一般的に2週間〜1ヶ月以上程度の時間がかかります。特に保証協会付き融資の場合、審査にさらに時間がかかることもあるため、資金が必要な時期を考慮して余裕を持って申し込みを行う必要があります。

資金調達の上では、例えば、設備投資や事業拡大のための資金が必要な場合、早めに融資申し込みを行っておいて、審査にかかる期間を考慮して、必要なときに資金が手に入るように計画するようにすると良いでしょう。

また、急ぎの資金調達には銀行融資よりも、日本政策金融公庫やビジネスローンなどの審査が早い資金調達方法を検討するのも一つの手です。

このように、銀行融資を受けるときには時間がかかるため、審査期間を考慮して早めに申し込み、余裕を持って資金調達を進めることが重要です。

8-7.銀行によるビジネスローンであれば審査のハードルは下がるが、金利が高く、担保や保証人が必要な場合がある

銀行のビジネスローンは、通常の銀行融資と比べると審査が緩やかで手続きが簡単ですが、金利や条件には注意が必要です。

銀行のビジネスローンは金利が高めで、担保や保証人が必要になる場合が多いので、事前に条件をよく確認して、最適なタイミングで用いるように計画しましょう。

例えば、急な資金調達が必要な場合はビジネスローンが便利ですが、金利が高いため、長期的な資金調達には不向きです。長期的に安定した資金調達が求められる場合、通常の銀行融資の方が適している場合があります。

このように、銀行のビジネスローンは短期的な資金調達に有用ですが、金利や担保条件は十分に注意しておきたい要素となります。


9.個人事業主が銀行融資以外にできるその他の資金調達方法3選

個人事業主が資金調達を行う方法には、銀行融資以外にもいくつかの選択肢があります。この章では、個人事業主が活用できるその他の資金調達の主な方法を紹介します。

辻・本郷税理士法人の起業ガイドには、融資に関する記事を多数掲載しています。以下のURLも参考にしてみてください。

融資|辻・本郷税理士法人の起業ガイド

9-1.補助金や助成金の活用

補助金や助成金は、事業を支援するために国や自治体が提供している資金です。

これらは返済不要であるため、非常に有利な資金調達手段です。ただし、条件や申請期限が厳しく、競争が激しいため、事前にしっかりと情報収集し、計画的に申請することが重要です。

9-2.クラウドファンディングの活用

クラウドファンディングは、多くの人々から少額ずつ資金を集める方法です。

インターネットを活用して自分の事業アイデアやプロジェクトを公開し、共感を得た支援者から資金を調達するという方法で、誰でも、いつでも始められるところが魅力となっています。

事業内容が新規性や社会貢献性を持っている場合、非常に効果的な資金調達方法となります。

9-3.ファクタリングの活用

ファクタリングは、事業主が未回収の売掛債権をファクタリング会社に売却して、振込期日よりも前に現金化する方法です。

この方法には厳しい審査がなく、即日~2日程度で資金を調達できるため、短期的な資金需要に対応するのに有効です。

ただし、売掛債権額以上の資金調達はできない点と、手数料が10.0%~20.0%前後と高めであることに注意が必要です。


10.個人事業主が銀行融資を受ける際の借入金の仕訳・処理の仕方

個人事業主が銀行融資を受けた際には、どのように仕訳を行うかについても把握しておきたいですよね。

この章では、融資による借入金に関する仕訳・処理の仕方を解説していきます。

10-1.勘定科目は借入金、租税公課、前払費用など

銀行から融資を受けた際主に使用する勘定科目は以下の通りです。

・借入金(借入金の金額を記録)

・租税公課(税金関係の費用を記録)

・前払費用(保証料など事前に支払った費用を記録)

・普通預金(振込や引き出しを記録)

・支払手数料(銀行の手数料がかかる場合に記録)

仕訳・処理の例は以下のようになります。

借方貸方摘要
普通預金○○借入金○○事業用資金借入
前払費用○○借入金○○保証料
租税公課○○借入金○○印紙代
支払手数料○○借入金○○銀行の支払手数料

10-2.返済時の勘定科目は借入金、支払利息など

銀行融資の返済時には、以下の科目を使用します。

・借入金(元本返済分を記録)

・支払利息(利息分を記録)

・普通預金(振込や引き出しを記録)

仕訳・処理の例は以下のようになります。

借方貸方摘要
借入金○○普通預金○○借入金返済
支払利息○○普通預金○○円利息支払

10-3.借入金の利息は経費計上可能

銀行から融資を受けて支払う利息は、事業の運営に必要な費用とみなされ、経費として計上することができます

これにより、最終的な課税所得を減らし、税務上の負担を軽減することが可能です。


11.個人事業主の銀行融資など、資金調達にお困りの方は辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスのご活用を

個人事業主が資金調達や融資に関してお困りの場合、専門的なアドバイス、サポートを受けることで問題が解決する可能性が高いです。

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資金調達に関して税理士に相談することが特におすすめな理由、得られるメリットについて、詳しくは、以下の記事をご覧ください。

資金調達を税理士に支援してもらう8つのメリットとオススメの税理士|辻・本郷税理士法人の起業ガイド


12.まとめ

個人事業主が銀行融資を受けるには、いくつか条件があります。信用のある事業者でないと融資は受けられないことを知っておきましょう。

また、銀行融資を受ける際には、そのメリット・デメリットを理解した上で挑みましょう。

審査基準を理解して、特に事業計画などの必要書類の内容を、具体的数値を用いて記載することも重要です。

個人事業主は、銀行融資以外にも、補助金、クラウドファンディング、ファクタリングといった方法で柔軟に資金調達を行うことができます。自分の場合にはどの方法が合っているかをしっかり検討してから選ぶようにしましょう。

また、銀行融資を受ける際には、税務面でも適切に仕訳を行いましょう。自分だけで仕訳を行うことが難しい場合には、辻・本郷 税理士法人の税務顧問サービスを活用して、相談しながら着実に資金調達を進めていくことをおすすめします。

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