法人設立は法務局に行かなくてもいい!電子申請手続きの流れとメリットを解説

法人設立の登記申請を法務局で行うか、電子申請にするかで悩んではいませんか?

ポイントをしっかり押さえることで、法務局に足を運ばなくても、インターネットを経由して自宅やオフィスから完全電子申請により法人設立手続きを完了できます。

法人登記を電子申請で行う流れとともに、必要な事前準備やポイントを解説しました。ご参考になれば幸いです。


1.法人設立の電子申請とは

法人として認められるためには、法人を設立する際に法務局で登記をすることが必要となります。
しかし、法務局に出向くことなく、オンライン上で書類の作成から申請手続きまでを行える方法があります。これが、法人設立の電子申請です。
電子申請であれば、自宅やオフィスからでも法人設立の登記を行うことができます。

会社を設立する際、「法人登記」という言葉を使うことが多いのではないでしょうか。
正確には、会社(株式会社、合名会社、合資会社、合同会社など)の登記をすることを商業登記、会社以外の法人を登記することを法人登記といいます。
本記事では、会社を対象とした法人設立で電子登記する際の方法について紹介します。


2.一人会社の法人設立は、電子申請に向いている

電子申請による法人設立が向いているのは、代表者である社長1名で経営しており従業員がいない「一人会社」です。
株式会社、合同会社を問わず、公的個人認証サービス電子証明書を取得することで、申請書情報のほか、全ての添付書面情報に必要な電子署名を付与できます。

また、株式会社の設立には、公証人の認証を受けた電子定款の作成が必須です。2023年12月26日に、発起人が1名のみといったような小規模な会社向けの、定款作成支援ツールが無料で公開されました。
完全電子申請で一人会社の法人設立の登記申請を行える環境が、整いつつあるといえるでしょう。


3.法人設立を電子申請するメリット

3-1.法務局に行く必要がない

法人設立登記を電子申請にすれば、法務局まで足を運ぶ必要がありません。

窓口の対応時間よりも電子申請の方が、受付時間が長くなっています。会社や自宅など、インターネットが使える環境であればどこからでも申請できるので、なかなか時間が取れない忙しい方にはピッタリの申請方法といえるでしょう。

3-2.短期間で法人登記が可能

法人設立の登記を電子申請で行う大きなメリットの1つに、短期間で手続きを完了できることがあげられます。

窓口で申請を行った場合、受付から登記完了するまでにかかる時間は数日間、申請の時期や地域によっては数週間以上かかることもあります。
電子申請の場合は、窓口での手続きよりも短期間で法人設立登記の手続きが可能です。条件を満たしていれば、原則として24時間以内には登記が完了します。

ただし、法務局が混雑している時期など状況によっては、条件を満たしていても24時間以内に登記が完了しないこともあるので、注意が必要です。

3-3.申請状況を把握できる

法人設立を電子申請した際は、オンラインで手続きの進捗状況を確認することができます。

申請手続きがどこまで進んでいるかという不安が軽減できるほか、状況を適宜確認することで、補正があった場合でも迅速に対応することが可能です。


4.法人設立を電子申請する際の注意点

4-1.すべて自分で対応する必要がある

自分で法人設立の登記を電子申請で行う場合、すべて自分で対処することが必要となります。

窓口で申請する場合は、その場で不明点を確認できるほか、不備があれば指摘してもらえる可能性があります。

法務省のホームページで、操作手引書のダウンロードや動画による案内を見ることができるなど、電子申請を支援するシステムやツールは整っています。
それでも、手続きに不安を感じたり、頭を悩ませることがあるかもしれません。

4-2.補正や不備により登記申請が却下される可能性がある

修正や不備などの補正があった場合、原則として申請自体が却下されてしまいます。

ただし、軽微な補正など、内容によっては期限内に対応することで申請手続きを継続できるケースもあります。
法務省のホームページ「オンラインによる設立登記申請の補正内容について(商業登記)」では、主な補正内容や対処方法が記載されているので、事前に確認しておくと良いでしょう。

なお、電子定款認証と設立登記のオンライン同時申請制度を利用すると、公証人による株式会社の定款認証と設立登記の電子申請を同時に行うことができます。手続きが簡略化できる便利なシステムですが、当日中に定款が認証されないと法人設立の登記申請は却下されてしまうので注意が必要です。


5.法人設立を電子申請する2つの方法

法人設立登記を電子申請するには、2つのシステムがあります。それぞれの特徴をまとめました。

※1 電子定款の認証手数料や登録免許税などの、手続き上で必要な費用は含まれません。

2つのシステムを比較してみると「法人設立ワンストップサービス」であれば、概ねいつでも利用可能であり、多くの手続きを一度に済ませられることがわかります。

5-1.登記・供託オンライン申請システム

「登記・供託オンライン申請システム 」は、法務省が提供しているシステムです。
法人登記のほか、登記事項証明書や印鑑証明書の交付請求、登記事項の提出など、登記に関するさまざまな手続きを行うことができます。

「登記・供託オンライン申請システム」で法人設立登記を行う場合、申請用総合ソフトのインストールが必要です。

「登記・供託オンライン申請システム」の利用時間は、平日の8時30分から21時となっています。
17時15分以降に送信した場合は、受付が翌開庁時間以降となるので注意しましょう。それ以外の時間帯は、オフラインでの作業は可能ですが申請はできません。

5-1-1.「24時間以内処理」の条件

2020年3月から、株式会社や合同会社の登記に限り、完全電子申請した際に、条件が整っていれば法務局における法人設立登記の手続審査が24時間以内で完了できるようになりました。
窓口や郵送による手続きでは数日から数週間かかっていたことと比較すると、大幅に手続きの期間を短縮できます。

※登記申請件数の多い時期を除いて、「24時間以内処理」は、完全電子申請による株式会社や合同会社の登記であることのほか、以下の条件もすべて満たしていることが必要です。

    • 役員等が5人以内 
    • 添付書面情報(定款、発起人の同意書、就任承諾書等)が全て電磁的記録(PDFファイル)により作成され、申請書情報と併せて送信されている(完全オンライン申請)
    • 補正(申請後、不備を指摘されることによる是正)がない 
    • 登録免許税の納付が電子納付である
      ※電子納付であっても、納付の時間が遅れると登記の完了が遅くなる可能性がある

    参考:完全オンライン申請による法人設立登記の「24時間以内処理」について(法務省)

    なお、「24時間以内処理」の目安は、以下の時間区分となります。

    たとえば、申請日時が3月18日(月)午前10時だった場合、区分は「午前」です。そのため完了時期の目安は、3月19日(火)の「午前」(午前8時30分~正午まで)となります。 ※行政機関の休日は除く。

    5-2.法人設立ワンストップサービス

    「法人設立ワンストップサービス」は、デジタル庁が運営するシステムです。
    上記の「登記・供託オンライン申請システム」のほか、e-Tax(国税電子申告・納税システム)、eLTAX(地方税ポータルシステム)、e-Gov(行政ポータルサイト)などのシステムと連携しています。
    可能な手続きは設立登記に関する申請に限られますが、法務局や税務署、自治体、年金事務所、労働基準監督署などへの手続きを、個別に行う必要がありません。

    利用には、マイナンバーカードが必要です。
    パソコンのほか、スマートフォンやタブレットから手続きを行うこともできます。

    なお、「法人設立ワンストップサービス」は基本的に24時間365日利用可能ですが、メンテナンスが行われている場合は利用できません。 お問い合わせ窓口の対応時間は、9時30分から18時30分です。


    6.法人設立を電子申請するための準備

    法人設立の登記を電子申請する場合、事前の準備が必要です。

    • 電子証明書

    電子申請する場合は、電子署名をするための電子証明書の取得が必要です。

    電子証明書には、公的個人認証サービス(マイナンバーカード)のほか、法務省が認めている民間事業者が提供する電子証明書を利用する方法もあります。

    パソコンでカードタイプの電子証明書に使う場合はICカードリーダーが必要ですが、ファイルタイプの場合は必要ありません。
    なお、カードタイプの電子証明書を読み取れる、カードリーダー機能を持つスマートフォンから「法人設立ワンストップサービス」を利用する場合は、ICカードリーダーは不要となります。

    • 資本金の払込み

    株式会社は定款認証後(合同会社の場合は定款作成後)、発起人(複数いる場合は発起人総代)名義の銀行口座に資本金を振り込みます。

    必要事項を記載した払込証明書を作成するほか、銀行名・支店名、口座の名義人、資本金払込みの取引履歴通帳など、必要な部分を用意します。

    • 登録免許税の準備

    手続きには、設立する会社の種類や資本金に応じた登録免許税の支払いが必要です。

    • 添付書面の準備

    申請書に添付する書面は、設立する法人の種類や規模によって異なります。
    ここでは例として法務省のホームページから、一人株式会社と一人合同会社の設立で必要な書面を紹介します。

    ※2
    完全オンライン申請による株式会社の設立登記申請では、公証人の認証を受けた電子定款の添付が必要です。
    ※3
    合同会社の設立登記申請では、払込みを証する書面として領収書を添付することもできます。

    7.登記・供託オンライン申請システムによる申請手順

    7-1.「申請用総合ソフト」のダウンロード

    「登記・供託オンライン申請システム」の「申請者情報登録」から登録を行い、システムを利用するための申請者IDとパスワードを取得します。

    その後、パソコンに「申請用総合ソフト」をダウンロードし、取得した申請者IDとパスワードでログインします。
    ※後から、ログインすることも可能です。

    7-2.申請書情報の作成

    「申請用総合ソフト」の「申請書様式一覧選択」から、必要な申請様式を選択します。

    株式会社や合同会社を設立する場合は、「商業登記申請書」カテゴリーから「登記申請書」を選択し、「登記申請書(会社用):株式会社,特例有限会社,合名会社,合資会社,合同会社,外国会社【署名用】」を開きます。

    「申請書作成・編集」画面にて必要事項を入力、プレビューで確認し、問題やエラーがなければ入力を完了し情報を保存します。

    7-3.添付書面情報の添付

    「ファイル添付」から、電子署名を付与した必要書類を添付していきます。

    なお、添付書面情報として提出できるファイルの種類は、署名付きPDFファイル(pdf)、 ビットマップイメージファイル(bmp)、署名付きPDFフォルダ(PDFファイルと署名情報ファイル:XMLが格納されている)、電子公文書です。

    7-4.申請データの送信

    申請者情報にも電子署名を付与し、申請書を送信します。
    登記・供託オンライン申請システムに登録されると「到達のお知らせ」が届きます。

    7-5.到達・受付のお知らせ

    「到達のお知らせ」に記載されている申請番号から、「処理状況表示」画面で処理状況を確認できるようになります。

    なお、17時15分以降に申請すると、受付が翌開庁時間以降となるので注意が必要です。

    7-6.登録免許税・登記手数料の納付

    登録免許税の納付をします。

    電子申請の場合は、領収証書または印紙を窓口に提出・送付する方法で納付、もしくはインターネットバンキングやモバイルバンキングまたは電子納付対応のATMを利用した電子納付の、いずれかを選択することができます。
    すべてオンラインで済ませたい場合は、電子納付を選択します。

    電子納付であれば、「申請用総合ソフト」の「処理状況表示画面」の「納付」から、電子政府の総合窓口・e-Gov電子納付を開きます。指示に従って納付手続きを済ませましょう。

    電子納付の納付期限は、申請書情報が登記・供託オンライン申請システムに到達した日の翌日から起算して3日間です。
    ※行政機関の休日は除く。

    7-7.補正・取下げの対応

    登記の申請書情報および添付書面情報に不備があった場合、原則として申請が却下されてしまいます。ただし、補正が可能な範囲であれば、定められた期間内に対応することで手続きの継続が可能です。
    申請が済んだら登記が完了するまで、「処理状況表示」画面から処理状況を随時確認し、補正があった場合に迅速に対応できるようにしましょう。

    補正が必要な場合は、「処理状況表示」画面に「補正」という項目が表示されます。それをクリックすると、補正が必要な内容を表示することができます。
    申請用総合ソフトには「補正書」が用意されているので、それを使用しオンラインで補正を行います。


    8.法人設立ワンストップサービスによる申請手順

    8-1.かんたん問診・手続きの選択

    「法人設立ワンストップサービス」にアクセスしたら、まずは「かんたん問診」を受けます。

    質問に対し、「はい」「いいえ」もしくは「わからない」を選択していくことで、必要な手続きがリストアップされるので、その結果により必要な手続きを選択します。

    8-2.マイナンバーカードで申請者確認

    利用規約に同意しマイナンバーカードを読み取ると、「申請者情報」が自動入力されます。

    必要な情報を追加で入力すると、指定したメールアドレスにワンタイムパスワードが届くので、操作画面に入力します。

    8-3.申請・届け出

    選択した手続きに必要な情報を入力し、添付ファイルを登録します。そしてマイナンバーカードで電子署名を行い申請すると、各申請機関にも一斉に送信されます。
    なお「法人設立ワンストップサービス」では、PDFファイル(pdf)、画像ファイル(jpeg、jpg)、テキストファイル(txt、csv)などが添付できますが、書類によって形式が異なります。

    以降はマイナンバーカードでログインすることで、申請の進捗状況のほか、各申請機関からのお知らせも確認することが可能です。
    各機関から申請に関するお知らせも届くようになります。 必要なものは適宜対応を行いましょう。


    9.法人設立の電子申請におけるよくある疑問

    Q:法人設立の電子申請に印鑑は必要ですか?

    A:法人設立の登記を電子申請で行う場合、2021年2月15日から法務省への印鑑登録は任意となりました。必ずしも印鑑の届出は必要ありません。

    ただし、電子申請による手続きだけで印鑑の提出ができるのは、登記申請と同時に行う場合に限られています。法人設立後に印鑑を提出する場合は、これまでと同様に郵送や持参して印鑑届書原本を提出することが必要です。

    業務上、印鑑が必要である場合は、法人設立の登記申請と同時に電子申請で行うと合理的です。

    Q:法人設立登記を電子申請にした場合、設立日はいつになりますか?

    A:法人設立の登記を電子申請で行った場合、会社の設立日は「法務局が登記申請を受け付けた日」になります。

    ちなみに、窓口で申請した場合は法務局に申請書を提出した日、郵送の場合は法務局に申請書が到着した日が設立日です。

    電子申請の場合、「登記申請の受付時間」と「システムの利用時間」が異なることに注意が必要です。
    「登記・供託オンライン申請システム」の場合、申請日が会社設立日になるのは、登記申請受付時間である17時15分までであり、それ以降に受け付けられたものは、翌開庁日が会社設立日となります。

    事前に会社設立日を決めている場合は、申請時間のほか、補正を出さないように注意が必要です。
    なお、土日祝日や年末年始(12月29日~1月3日)など、法務局の休日にあたる日は会社の設立日に設定することができません。


    10.まとめ

    本記事では、法人設立の電子申請の流れとともに、メリットや注意点を紹介しました。
    以下に自分で法人設立登記の電子申請を行う際のポイントをまとめています。

    ◎法人設立登記に向いている会社は、社長一人で運営する「一人会社」

    ◎法人設立登記の電子申請ができるシステムは2つ

    ・登記・供託オンライン申請システム
    ・法人設立ワンストップサービス

    ◎法人設立登記の電子申請のメリットは3つ

    ・法務局に足を運ぶ必要がない
    ・窓口申請よりも短期間で手続きが完了できる
    ・申請手続き中の進捗状況を把握できる

    ◎法人設立登記の電子申請の注意点

    ・すべてを自分の判断で行わなければいけない
    ・補正や不備があれば申請自体が却下される可能性が高い

    法人設立登記を電子申請により、自分で行うことは可能です。
    スムーズな申請手続きのためには、事前準備と手続きを理解をしておくことが大切と言えるでしょう。

    業界で多くの顧問先を支援している辻・本郷税理士法人
    あなたの会社設立をリーズナブルかつ、最適な内容でご案内いたします。
    業界で多くの顧問先を支援している辻・本郷税理士法人
    あなたの会社設立をリーズナブルかつ、最適な内容でご案内いたします。