「創業当時は自力で経費処理や決算を行っていたが、専門家に頼った方がいいのか検討中だ」
「税理士に依頼しているスタートアップも多いようだが、自社にメリットがあるのかどうか分からない……」
スタートアップとして起業すると、会社員時代に特定部署が担っていた業務を自力で行う必要があり、その業務の幅や量に驚かれる方も多いようです。
とりわけ専門性が高い経理業務は、作業に苦戦するのみならず「この数字で正しいのだろうか?」と不安に感じることもあるのではないでしょうか。
結論としては、スタートアップが税理士に依頼する必要があるケースと、あまりメリットが得られないケースがあります。
当記事では、まずはメリットが得られる、代表的な3つのケースについて紹介します。
簡単に言えば、売上げが想定通りに上がっている企業なら、お金のプロである税理士に依頼することで、多くの場合はスタートアップのさらなる成長に寄与するはずです。
一方、不向きなケースの場合もあります。
このような場合は、無理をして税理士に依頼しても、分かりやすいメリットは享受しにくいでしょう。
ただし、不向きなケースであっても、中長期的な目線で考えれば「今後売上げが拡大していけば、いつか必ず税理士は必要となる」とも捉えられます。
そのため記事の後半では、実際に税理士に依頼することを前提とした際の依頼ポイントや注意点を紹介しています。
いつの時点で税理士に依頼すればいいのか?
具体的にどのような業務が依頼できるのか?
- 依頼する際の注意点は?
税理士に依頼するということは、少なからず外部支払いコストが発生するということです。
何もかもを依頼したからといって、望んだサポートが受けられるとは限りません。
最後まで記事をお読みいただければ「自社なら、こんな分野で依頼メリットが得られそうだ」という目途がつき、自社にフィットした税理士探しへと踏み出せることでしょう。
目次
1.スタートアップには税理士が必要!特にオススメの理由
税理士に依頼するメリットが享受出来るスタートアップの条件は比較的単純で「順調に想定売上げが上がり、さらなる成長が見込める」ケースです。
そのようなスタートアップが税理士に依頼することがオススメの理由を3つ紹介します。
・本業の重要な仕事に集中できる
・合法的な節税対策ができる
・資金調達のサポートが受けられる
早速一つずつ具体的に説明していきます。
1-1.本業の重要な仕事に集中できる
煩雑で専門性が高い経理業務を税理士に任せることで、創業者メンバーは売上を上げるためのバリューの高い業務に集中できます。
創業間もないうちは、一刻も早く黒字を目指すべく、営業活動や商品・サービスの開発に注力したい時期でしょう。より業績影響が高い仕事に、集中して取り組みたいはずです。
特に経理業務は帳簿記帳や決算処理など、専門的な知識を要求される業務です。
勘所がない経理業務に社員の時間が取られ、本来やってほしい仕事が出来ず売上げ獲得の機会ロスをしたという創業者の声はよく聞かれます。
もちろん税理士に依頼するコストは発生しますが、コストを支払ってでも社員を本業に集中させることで、支払いコストを上回る売上げが得られると捉えるべきです。
経営者は会社の命運を左右するため、自分や社員の時間の使い方にはシビアになるべきです。創業時から出鼻をくじかれないよう、負担の大きい経理業務は税理士に任せるべきでしょう。
1-2.合法的な節税対策ができる
税金のプロである税理士に依頼することで、本来支払わなくて済む税金の対策など、節税対策のサポートが受けられます。
創業間もないころは、資金繰りに余裕のない会社が多いものです。
また一方で、売上げが拡大すればするほど、多額の税金支払いが気になることでしょう。
税理士は財務上の無駄なコストを見つけることの専門家で、さらにどのような出費が経費として認められるかも熟知しています。
税理士に依頼することで、無意識に法を犯すリスクを避けられることも、依頼メリットとしては大きい点です。
経理に明るくない個人での節税対策は、漏れが発生する可能性だけでなく、行き過ぎたグレーな節税によって税務調査で指摘を受けるリスクをはらんでいます。
税理士というパートナーができることで、真偽の怪しいネットなどの情報に惑わされず、税金について正しい知識を得られることもメリットといえるでしょう。
1-3.資金調達のサポートを受けられる
スタートアップ時に税理士を付けると、資金調達のアドバイスやサポートを受けられ、企業の成長スピードを加速させられる点がメリットです。
企業には成長段階が存在します。
ラリー・E・グレイナーが1979年にハーバードビジネスレビューに発表した論文によると、おおよそ企業の発展プロセスには5つの段階があります。
「創業」の第一ステージから、会社としての指揮命令系統を整える「指揮」の第二ステージに移行するためには、会社としてスケールアップするための資金が必要となるでしょう。
具体的な税理士からの支援としては、金融機関からの融資や助成金・補助金を申請する際の事業計画書や創業計画書の作成をサポートしてもらえるでしょう。
特に事業計画書には、金融機関が好んでくれやすい書き方のコツがあります。
税理士に頼めば、資金繰りの観点から説得力のある事業計画書を作成でき、スタートアップであっても信用力を担保できるメリットがあります。
また、補助金や助成金の中には、毎年短期間で終了するものが多く、すべてをチェックするのは手間がかかるものです。
資金調達に強い税理士なら、最新の情報とともに自社にぴったりの補助金・助成金を紹介してくれるでしょう。
これから会社設立するので煩雑な手続きをサポートしてもらいたいあなた!
もし、会社設立後の税理士サポートを予定している、かつ、これから会社設立するが、事業に集中したいので煩雑な手続きまでサポートしてもらいたい場合、「会社設立+設立後の税理士サポート」をまとめて依頼することでかなりお得になる場合があります。
例えば、ご自身で株式会社を設立する場合、最低でも、222,000円の費用がかかります。
辻・本郷 税理士法人では、電子定款を作成することで収入印紙代の40,000円をカット。
さらに会社設立後に税理士顧問契約を予定されている場合には、設立費用特別割引として、当法人で39,000円をご負担いたします。
結果として、ご自身で設立業務を行うよりも、79,000円安く、会社設立が可能です。
※会社設立後に税理士顧問契約の必要がない「登記代行パック」であっても、自分で書類を作成するよりも7,000円安く、代行できます。
2.スタートアップに税理士依頼が不向きなケース
次に、税理士に依頼するメリットを受けにくいスタートアップの条件を、以下2点で解説します。
・お金の動きがほぼ発生していないケース
・特殊な経理業務で、自社にナレッジを残したいケース
早速一つずつ具体的に説明していきます。
2-1.お金の動きが少なく、コストメリットが享受できないケース
税理士に依頼するということは、一定の費用がかかってしまうことになります。
スタートアップの場合、創業当初はそれほど売上げが入らないこともあります。逆の見方をすれば、それほど出入金の動きがないとも見なせます。
つまり、お金の動きがそこまでないのであれば、税理士に依頼をするのではなく、自力で経費処理や決算業務をやった方がいいこともあるということです。
例えば、以下のようなケースでは、税理士に依頼してもあまりコストメリットは享受できないでしょう。
依頼のメリットが感じられなければ、スタートアップ時から税理士に依頼する必要がないこともあります。
会社が成長して、経理業務や資金管理に課題を感じ始めてから、税理士依頼を検討することがおすすめです。
2-2.特殊な経理業務で、自社にナレッジを残したいケース
売上の請求(確定)時期や取引先ごとのルールが複雑で、頻繁に変更が生じる業態では、社員がしっかり経理をマネジメントする必要があるため、税理士依頼は慎重にすべきでしょう。
例えば、以下のようなケースが該当します。
・小売業で、取引先によってマージンを変えている
・自社の業績に応じて、価格を細かく調整している
・インセンティブ制度など、社員の報酬制度を流動的にしている
経理は専門分野といっても、全てを税理士に丸投げをしてしまうと、社員にとって経理業務がブラックボックス化するリスクもあります。
少しでも本業に社員の工数を充てたいという思いは分かりますが、ある程度経費を管理しコスト意識を持つことも重要です。
スタートアップは数名で創業したとしても、事業の拡大に伴い社員数も増えるはずです。
創業時に税理士に全ての経理業務を委ねてしまうと、新しい社員が入社したときに、自社の経理のプロセスやルールを説明できる既存社員がいなくなってしまいます。
さらには、本来外注せずに自社で担った方が良い経理業務の見極めができず、永遠に外部支払いコストを払い続けることにもなりかねません。
仮に依頼をしたとしても、定期的な報告会や共有の場を持ち、自社に経理ナレッジを蓄積できるようにしましょう。
税理士によっては経理業務(仕訳入力等の帳簿の作成)については自社で行わせ、決算と申告業務のみを行う税理士もいます。経理業務を自社で行うことを「自計化」と呼び、税理士へ依頼することを「記帳代行」と呼びます。
自計化を行うことで、顧問報酬を安くするという税理士もいます。ただし、自計化の導入の際には税理士や経理経験のある者から、経理指導を受け大枠のフローを完成させておくことをお進めします。安易に自計化を選択した場合、決算時になって誤った入力を修正する作業が必要となり、かえって時間を用する場合もあります。
不向きな場合でも税理士に依頼すると長期的にメリットはある!
不向きな場面であっても中長期目線や依頼方法次第では、税理士に依頼するメリットはあります。
なぜなら、今回紹介したのはスタートアップ特有の一時的なケースだからです。
例えば、創業直後で売上げが乏しかったとしても、ゆくゆく業績が伸びてきたら、「1.スタートアップには税理士が必要!特にオススメの理由」のようなメリットが享受できることになります。
経理がブラックボックスになると困るケースにおいても同様です。
売上げが拡大すればするほど社内で経理を効率的に運用するためにも、専門家である税理士の知恵は必要となるでしょう。
会社を永続的に成長させるためにも、スタートアップの一時点だけで判断することなく、長い目線で税理士の活用を検討することが推奨されます。
3.スタートアップで税理士に依頼する際の見極めポイント
前章をお読みいただき、税理士に依頼したいと思われた方は、次に「どのように税理士を選べばいいのだろう?」と感じたかもしれません。
本章では、スタートアップならではの税理士の見極めポイントを以下の観点で紹介します。
①スタートアップ支援の経験が豊富であること
②プランに自分の依頼したい業務が含まれていること
③担当税理士との相性が良いこと
・レスポンスは速くて柔軟か
・難しい話を分かりやすく話してくれるか
・自社の業界知見が豊富か
・自社のビジョンに共感してくれているか
④コスト(報酬)は予算範囲内か
一つずつ詳しく説明していきます。
3-1.スタートアップ支援の経験が豊富であること
第一に、スタートアップ支援の経験が豊富にある税理士を選ぶことです。
税理士はお金全般のプロフェッショナルではありますが、特にスタートアップ期はお金の問題以外に経営の悩みに遭遇しがちな傾向があります。
具体的には、スタートアップに強い税理士であれば、以下のような恩恵が期待できます。
スタートアップに強い税理士は、ホームページにその旨を強調しています。
ただし、本当にスタートアップ支援実績があるかどうかの定量情報をチェックし、事前の問い合わせなどで、具体的な自社のケースを相談してみることをおすすめします。
3-2.プランに自分の依頼したい業務が含まれていること
創業当時で細々とした困りごとがある際は、自分の依頼したい業務やニーズがプランに含まれている税理士選びが重要です。
例えば一口に「相談」と言っても、融資や資金調達の相談は別料金として設定している税理士もいます。
他には定期の面談に加え、臨時で何かを相談したいときの相談料が顧問料に含まれていないケースもあります。
4章の「税理士に依頼できる業務」をご参照のうえ、自分が依頼したい業務に対応できる税理士を選ぶようにしましょう。
なお、税理士には「顧問契約」「スポット契約」と分かれている場合が大半です。
プラン内容と合わせて、自社のケースでは顧問契約とスポット契約のどちらが相応しいか検討しましょう。
3-3.担当税理士との相性が良いこと
スタートアップの際は税金や経理相談のみならず、経営周りで税理士に相談することはさまざまあります。
起業が成長期・安定期に入るまで付き合うことを考えると、担当税理士との相性は無視できない要素です。
一般的に相性の見極めポイントは以下の通りです。
ストレスなくコミュニケーションのとれる税理士であれば、疑問点を気軽に聞いたり、資金調達の相談をしたりして自社の成長に貢献してくれます。
ただし「相性」はかなり漠然としているので、ここからは具体的に一つひとつのポイントについて解説していきます。
3-3-1.レスポンスは早くて柔軟か
不安や疑問が大きい開業当初に、スピーディなレスポンスや柔軟に対応してくれることも、税理士選びのポイントです。
初めての開業の場合、事業がどのような方向性に進むかはオーナーの不安事項の一つです。
例えば「思ったより売り上げが上がってしまった。でもキャッシュは確保したいから、節税できる手段はないだろうか?」のようなケースに遭遇した時は、税理士の対応が問われる場面といえるでしょう。
「規定通り納税しましょう」という対応をする税理士は、依頼する価値があまり感じられないかもしれません。
そんな時でも「法規の範囲内で、こんなやり方が考えられます」「過去の判例では、このような対応もあり得ます」など、柔軟に意見してくれる税理士は、頼りがいがある存在になるに違いありません。
昨今のビジネス事情に精通して、依頼主の状況に対しての配慮がある税理士選びは、昨今欠かせない観点といえるでしょう。
「辻・本郷会社設立センター」は時間や場所の制約を受けにくいリモート顧問形式を採択。Web会議システム「Google Meet」でご相談いただけます。また若いスタッフも多いため、相談しやすいのも強みです。「いつでも気軽に相談できる」と利用者から好評です。
3-3-2.難しい話を分かりやすく話してくれるか
経理・経営面の話を、スタートアップ時の経営者に分かりやすく伝えるスキルは重要です。
経理には専門用語が多い上に、融資や助成金を受ける場合は事細かに条件や規則が規定されていることもあります。
税理士は、いわば専門領域を初心者経営者に分かりやすく伝える翻訳者のような存在です。
難しい専門用語をそのまま伝えられるだけでは、自力でネット検索することと何ら変わりはありません。
候補となった税理士に、疑問に思っていることをぶつけてみて、最も納得感がある返答をしてくれた税理士を選ぶとよいでしょう。
3-3-3.自社の業界知見が豊富か
自分が創業する業界の知見が豊富かどうかも、見逃せないポイントです。
例えば業種によっては、経費として認められる範囲はかなり異なります。
さらに設備投資が多い場合は、減価償却費の算出方法など、独特の勘所も必要です。
過去の知見や経験で、「この業界ではこんなケースがあった」「ここまでは許容範囲でしょう」など、業界独自のアドバイスをくれる税理士は心強い存在となるはずです。
業界に限らず、広めに「ビジネスモデル」と捉えた際に、過去に似たようなスタートアップ支援をした経験がある税理士を選ぶと良いでしょう。
3-3-4.自社のビジョンに共感してくれているか
スタートアップならではの税理士選びの観点としては、創業にあたっての価値観が一致していることも重要ポイントです。
単に資金管理の観点ではなく、お金の知識がある経営パートナーが寄り添ってくれる税理士がいれば、何より心強いかと思います。
例えば、創業初年度は予算を度外視しても、世の中に創業のビジョンや社会貢献意義を伝えていきたいとお考えの場合もあるでしょう。
そんな際でも、あえて初年度を赤字決算にすることで、繰り越し決算などの資金面の提案をしてくれる税理士もいます。
「今年は創業の意思を広める年度と位置づけましょう」と提案してくれる税理士は、中長期でパートナーシップが組める確率が高いかもしれません。
3-4.報酬は自社の予算範囲内か
依頼コストが発生する以上、報酬体系も必ずチェックしておきたいポイントです。
一般的に顧問税理士にかかる顧問料の相場は、月1万~5万円です。事業の規模や訪問回数によって異なるため、最初によく確認しましょう。その他、決算申告料に発生する費用は顧問料とは別に10万円~必要です。決算申告料も、事業の規模によって大きく変動します。
税理士の依頼費用を下記の表にまとめたので、ご覧ください。
上記はおよそ年商1億円以下の場合の目安費用です。
税理士の料金体系は年商によって分かれているのが基本で、年商が高いほど費用が高額になる傾向にあります。
また「月次の財務レポート提出」「経営アドバイス」など、内容によっては別途料金が必要なケースもあります。事前に「何をお願いしたいか」を明確にして見積もりを依頼するようにしましょう。
4.スタートアップはいつ税理士に依頼すべき?
税理士選びのポイントを理解したうえで、次は「いつ税理士に依頼すればいいのか」について考えていきましょう。
スタートアップと一言でいっても、立ち上げ時と数年経過した時では状況が変わります。
本章では「会社設立時」と「設立1~2年後」に区切って、税理士依頼するポイントをお伝えします。
4-1.創業時から体制を整えたいなら「会社設立時」
当記事ではスタートアップ立ち上げ後での税理士の支援をメインに紹介してきましたが、会社設立時に「会社設立代行」として、税理士に依頼することも大いにあり得ます。
会社設立前から税理士に依頼することで、企業の形態や資金計画など幅広く相談に乗ってもらえます。
もちろん創業後も、事情を知っている税理士にそのまま依頼することで、スムーズに経理面や資金面のサポートを受けられるメリットもあるでしょう。
新たに会社を立ち上げたときや、個人事業主から法人成りするときは、税理士を付けるおすすめのタイミングです。
会社設立時に税理士を付ける主なメリットには、以下が挙げられます。
会社設立時に依頼するメリット
開業・資金調達のサポートを受けられる
会計業務の適切な形に整えられる
決算期の相談ができる
- 1期目から節税対策ができる
会社を立ち上げたばかりのときは、業務フローが整っていないことがほとんどです。
開業時から税理士を頼ることで、初めから適切な処理方法に沿った会計業務を行えるでしょう。
4-2.外部依頼を慎重にしたい場合は「会社設立から1~2年後」
会社設立当初は、資金不足などの理由で税理士に依頼しなかった方は、設立1~2年後のタイミングで依頼することがおすすめです。
売上が上がってきて経理業務が煩雑になったタイミングや、一期目の決算・確定申告が到来したタイミングで税理士に相談するケースが多いでしょう。
特に会社員から創業した方は、個人事業主であっても法人であっても「確定申告」に不慣れな傾向にあります。
そのため、最初の確定申告の際にスポットで税理士に依頼するケースも多いでしょう。
その次は、売上が安定して上げられるようになったときや、創業二期目にも税理士依頼するタイミングといえます。
さらに具体的に説明すると、課税売上高が1,000万円を超えるタイミングがおすすめです。
課税売上が1,000万円を超えると消費税の申告が必要になり、会計業務が複雑になります。
また、設立初年度から「インボイス登録」を行う場合には、売上とは関係なく消費税の申告が必要となります。
売上が上がるほど会計業務の負担が大きくなるだけでなく、節税対策の効果も大きくなるため、ぜひ税理士を頼りましょう。
5.税理士に依頼できる業務
ここまでスタートアップが税理士に依頼するとメリットが出るケースや、依頼時期について解説してきました。
税理士に依頼することに興味を持たれた方は、いよいよ「何の業務をお願いしようか」と考えるでしょう。
本章では、税理士に依頼できる以下の主な業務について解説します。
・会社設立の手続き
・税務関係書類の作成代行
・経理業務の代行
・税務調査の立ち会い
・経営コンサルティング
早速、一つずつ具体的に説明していきます。
5-1.会社設立の手続き
会社の設立はご経験がある方なら理解できると思いますが、各種手続きが必要で、費用も労力も発生します。
例えば、会社設立にはおおよそ以下のような手続きが必要になります。
会社設立時に必要な手続き例
- 税務署と都道府県・市区町村への会社設立関係、その他税務関連届出の作成
法人口座の開設
許認可申請
役員報酬の決定と臨時株主総会
社会保険や雇用保険などの労務関係の手続き
給与や勤怠管理ソフトの選定・導入
税理士事務所のなかで「会社設立代行」がメニューにあれば、手続きの多くの部分をお任せすることができたり、分かりやすく案内をしてもらえます。
また、自身で設立手続きを行った場合と比べて、税理士に依頼した方がコストカット効果を得られる場合もあります。
もし創業後に税理士と顧問契約をしようと決めている場合は、会社設立前に税理士に相談して初期費用を安く済ませるのがよいでしょう。
会社設立代行について詳しくは、こちらの記事で解説しています。
5-2.税務関係書類の作成代行
決算書や確定申告書など、税務関係書類の作成代行は、プロである税理士にお任せできます。
税務関係書類に不備があると税務調査で指摘を受け、追徴課税を課される恐れがあるため、ミスが許されません。
税理士なら正確な書類を作成してくれるだけでなく、抜け漏れのない節税対策までサポートが受けられます。
仮に自分で書類を作成する際も、税理士がいればミスがないかをチェックしてくれるので安心です。
税理士がいれば社会的信用を高めたり、逆に信用を損なうリスクヘッジも避けられたりするでしょう。
5-3.経理業務の代行
顧問契約の範囲内、もしくは個別メニューとして、毎月の記帳をはじめとする経理業務も代行してもらえます。
税理士に経理業務を任せるメリットは、経営者の負担軽減だけではありません。
経理担当の社員を雇うよりも低コストで依頼ができます。
例えば月給20万円で社員を1人雇うとすると、ボーナスや社会保険料の折半分も含めると年間で350万円程度のコストが発生します。
しかし税理士なら、記帳代行料が月3万円だとしても年間のコストは36万円です。
さらに税務のプロが行うため、正しさが担保されています。
社員を雇う余裕がない経営者にとって、税理士は良いアウトソース先になるでしょう。
5-4.税務調査の立ち合い
税務調査に入られた際に、顧問税理士は立ち合いをしてくれます。
具体的には、税務調査官からの質問に税務面から適切な回答をしてくれます。
税務調査官のなかには、少々強引な指摘をしてくる方も少なくはありません。
しかし税理士がいればしっかりと反論してくれる上、調査官にとっても税理士がいる手前、強い指摘をしなくなる抑止力にもなります。
税務署からの事前通知があれば、税理士が事前準備からサポートしてくれるため、心強いでしょう。
5-5.経営のコンサルティング
すべての税理士が対応しているわけではありませんが、経営のコンサルティングも行ってくれる税理士もいます。
本来税理士は税金のプロであり、それがすなわち経営のプロであることを意味するものではありません。
しかし昨今はサービス力を強化すべく、経営コンサルティングにも力を入れている税理士が増えています。
主に資金繰りの観点から、在庫の抱えすぎや売掛金の回収といった潜在リスクの発見や改善提案、節税対策などのアドバイスをしてくれます。
経営相談にも乗ってくれる税理士は、一緒に協力して会社を発展させるパートナーになってくれるでしょう。
6.スタートアップで税理士に依頼する際の注意点
これまで、スタートアップに特化した税理士の選び方を紹介してきましたが、最後に必ず注意したい点をお伝えします。
スタートアップは余力がないため、税理士選びに時間をかけられない傾向もあるでしょう。
そのような余力のなさにつけこむ税理士がいるのも事実です。
忙しい場合でも、最低限は確認したいポイントを2点紹介します。
①税理士資格を確認する
②料金体系・提供メニューを確認する
6-1.税理士資格を確認する
依頼をする者が個人事業主であれば税理士資格を有するのか、会社(法人)であるならば税理士法人の職員であるかを確認してください。
無免許の税理士もしくは法人に依頼してしまうと、企業の信用度の悪化や、場合によっては税務的な違反をするリスクがあります。
税理士資格の確認方法
税理士証票を見せてもらう
日本税理士会連合会で検索する
- 日本税理士会連合会に電話する
無免許の税理士に依頼してしまうと、企業の信用度の悪化や、場合によっては税務的な違反をするリスクがあります。
必ず税理士の資格を持っていて、自社を任せられる税理士かどうかを確認するようにしましょう。
6-2.料金体系・提供メニューを確認する
相談費用は安ければ安いほど良い、というわけではありません。報酬は高めだけれどその分サポートが充実している、という場合もあります。
必ず「全メニューの価格体系が決まっているかどうか」「含まれる範囲はどこまでか」はチェックしてください。
事前に報酬を決めない、業務を終えたあとに報酬額を伝えてくる税理士には要注意です。
法外な報酬を要求してくることがあるため、事前に報酬を告知しない税理士への依頼は避けましょう。
また税理士のなかには、節税に役立つ生命保険や損害保険の販売を行っている人もいますが、強引に売り込んでくる人は注意してください。
顧客の利益を重視せず、他の商品を紹介してくる場合は、別の税理士を探すのが賢明でしょう。
7.まとめ
今回は、スタートアップが税理士依頼をすると、メリットがあるケースと不向きなケースを取り上げました。
あらためて本記事のポイントをまとめます。
◎スタートアップに税理士が必要な3つの理由
- 本業の重要な仕事に集中できる
- 合法的な節税対策ができる
- 資金調達のサポートが受けられる
◎スタートアップに税理士依頼が不向きな2つのケース
- お金の動きがほぼ発生していないケース
- 特殊な経理業務で、自社にナレッジを残したいケース
◎スタートアップで税理士に依頼する際の見極めポイント
- スタートアップ支援の経験が豊富であること
- プランに自分の依頼したい業務が含まれていること
- 担当税理士との相性が良いこと
レスポンスは速くて柔軟か
難しい話を分かりやすく話してくれるか
自社の業界知見が豊富か - 自社のビジョンに共感してくれているか
- コスト(報酬)は予算範囲内か
◎スタートアップが税理士に依頼するタイミング
- 創業時から体制を整えたいなら「会社設立時」の依頼
- 外部依頼を慎重にしたい場合は「会社設立から1~2年後」の依頼
◎税理士に依頼できる業務は以下の通り
- 会社設立後の税務関係の書類の提出
- 税務関係書類の作成代行
- 経理業務の代行
- 税務調査の立ち会い
- 経営コンサルティング
◎スタートアップで税理士に依頼する際の注意点
- 個人事業主であれば税理士資格を有するのか、会社(法人)であるならば税理士法人の職員であるかを確認する
- 料金体系・提供メニューを確認する
スタートアップは、本業だけで利益を上げられないことも多いため、時間・コストなどをどのように采配するかが問われる時期といえるでしょう。
特に専門知識が問われ、時間を奪われがちな税務・経理業務は、専門家である税理士に依頼するメリットが大きいといえるでしょう。
当記事をお読みいただいたうえで、自社のケースに当てはめて依頼内容のイメージを高めていただければ幸いです。