法人化で後悔する5つのケースとは?知っておきたい失敗例と正しい対応

「法人化を検討しているけれど、実際に踏み切ったあとに後悔するかもしれない……」

そんな迷いを抱く個人事業主の方は、少なくありません。

ある程度、収益が上がってくると、多くの方が法人化を検討されます。

法人化すると、税金対策として有利になったり、信用力の向上などビジネスに好影響が及んだりする可能性があります。

しかしながら、法人化をしてから後悔するケースがあるのも事実ですので、慎重に検討したいポイントです。

この記事では「法人化で後悔するのは、どのようなケースか?」にフォーカスして、具体的な失敗例をご紹介します。

(1)思ったよりも節税効果がなかった

(2)設立コストをもっと抑えられた

(3)稼いだお金を自由に使えない

(4)経理や決算に手間がかかる

(5)精神的な心配ごとや不安が増えた

正しい対応もあわせてお伝えしていきますので、法人化を検討している方は、ご一読ください。


1. 法人化の後悔(1)思ったよりも節税効果がなかった

1つめの後悔は「思ったよりも節税効果がなかった」です。

1-1. 節税を期待して法人化したけれど…

多くの人が「節税したい」「できるだけ税金を減らしたい」と希望して、法人化に踏み切ります。

しかしながら、法人化によって税負担を軽減できるのは、一定以上の利益が確保できるケースのみです。

・課税所得が高い:「法人」が有利

・課税所得が低い:「個人」が有利

仕組みとしては、個人に対する所得税は5〜45%の累進課税で、所得が高くなるほど税率が高くなります。

一方、法人税は非累進課税で、税率は基本的に一律です。

【法人税の税率】

法人税の税率は、普通法人、一般社団法人等又は人格のない社団等については23.2%
(資本金1億円以下の普通法人、一般社団法人等又は人格のない社団等の所得の金額のうち年800万円
以下の金額については15%)
出典:財務省「法人課税に関する基本的な資料」

「法人化して、税負担が軽減できるかどうかは、毎年の課税所得の金額次第」

という点に注意しましょう。

一般的には「課税所得 800万円 前後が法人化検討のライン」といわれますが、後悔しないためには、事前に納税額の変化をシミュレーションしておくことが重要です。

1-2. 法人化すると生じる税金とは?

実際には、法人税以外にも、さまざまな税金が生じます。

【会社が事業を行う上で実際にかかるおもな税金の種類】

出典:【税金の基本】会社に関わる税金

さまざまな税制が絡んでくるため、法人化を決める前に、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

法人化にしたほうがお得かどうか、ご自身で詳しく調べたい方は、「【会社設立】そのビジネス、会社に(法人成り)した方がお得かも!」の記事も、あわせてご覧ください。

 

1-3. 赤字でも課税される税金がある

注意点として「法人は、赤字でも課税される税金がある」ことも、明確に知っておきましょう。

法人住民税(都道府県民税、市町村民税)の均等割の部分は、利益の有無にかかわらず、納めなければならない税金です。

資本金が1千万円以下、従業員数50人以下の会社の場合で《7万円》ほど課税されます。

詳しくは「法人 税金 赤字」の記事にて解説していますので、あわせてご覧ください。

参考:【税金の基本】会社に関わる税金


2. 法人化の後悔(2)設立コストをもっと抑えられた

2つめの後悔は「設立コストをもっと抑えられた」です。

2-1. 法人設立にかかるコストとは?

株式会社を設立する際には、実費として222,000円が必要となり、代行を依頼する場合には代行手数料を加えた金額が生じるのが一般的です。

【株式会社設立の費用】

定款認証印紙代40,000円
定款認証手数料 ※32,000円
登録免許税150,000円
代行手数料(代行を依頼する場合)〜80,000円
合計222,000〜302,000円

※資本金が100万円以上300万円未満の場合は定款認証手数料は42,000円、300万円以上の場合は52,000円になります。

参考:辻・本郷会社設立センター

しかしながら、上記の費用はより低く押さえられる選択肢があります。

2-2. 「合同会社」も検討する

法人化というと「株式会社」しか念頭にない方が多いですが、2006年に施行された会社法によって新設された「合同会社」という会社形態があります。

合同会社は定款の認証手続きが不要なので、その費用がかかりません。登録免許税も、株式会社は15万円ですが、合同会社なら6万円です。

できる限り設立コストを抑えて法人化したい方にとって、合同会社は有効な選択肢です。

合同会社について詳しくは、以下の記事にてご確認ください。

合同会社 メリット

株式会社 合同会社

合同会社 節税

2-3. 会社設立代行の費用は比較検討する

会社設立代行を依頼する際には、複数の依頼先の費用を比較検討するようにしましょう。

会社設立代行の全て!代行内容から費用・メリットまで詳細がわかる」を参考にご覧ください。

たとえば、辻・本郷 税理士法人では、代行手数料0円に加えて、設立費用特別割引 -39,000円 のサービスをご提供しています。

※ご利用の際には、弊社との税理士顧問契約が要件となります。詳しくは「辻・本郷会社設立センター 」よりご確認ください。

法人化の際に必要となる費用に関する詳細は「法人成り 費用」も、あわせてご覧ください。

2-4. 受けられる助成金・補助金を確認する

会社設立時には、事前に要件を満たして申請することで、助成金・補助金を受けられるケースがあります。

【会社設立時に受けられる助成金・補助金の例】

1. 創業者向け助成金・補助金(都道府県別)
2. 地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ型)
3.  NEDO スタートアップ企業支援
4. 事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)
5. 小規模事業者持続化補助金
6.  IT導入補助金
7. ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
8. キャリアアップ助成金
9. 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)

詳しくは「【2023年】会社設立でお得な助成金・補助金一覧|申請方法付き」にて解説していますので、法人化の前にご確認ください。


3. 法人化の後悔(3)稼いだお金を自由に使えない

3つめの後悔は「稼いだお金を自由に使えない」です。

3-1. 会社のお金は社長でも使えない

個人事業主の場合、事業で稼いだお金は事業主のものとなりますので、自由に使うことができます。

たとえば、今月末に取引先から振り込まれた売上を生活費に使ったり、多くの金額が振り込まれた月に資産運用に回したりすることは、自由です。

一方、法人化すると、「会社の資産」と「個人の資産」が、明確に分離されます。

法人が稼いだお金は法人のものとなりますので、社長(代表取締役)であっても、自由に使うことはできません。

後悔しないためには、事前に役員報酬の仕組みを理解したうえで、法人化を判断する必要があります。

3-2. 役員報酬とは?

法人化すると、個人事業主から法人の役員となり、法人から「役員報酬」を支給される形で、報酬を受け取ることになります。

役員報酬は、定期同額給与が原則で、一定の期間(1ヶ月など)ごとに同じ金額を支給します。

役員報酬の金額を決めたら、株主総会の承認を受けて議事録に残し、基本的には1年間、変更ができません。

3-3. 変更は期首3ヶ月以内のみ

当年度の役員報酬が変更できるのは、原則、期首から3ヶ月以内のタイミングだけです。

たとえば、3月決算の会社であれば、4〜6月の間に変更の手続きを行う必要があります。

自由にお金を使えた個人事業主のときと比べると、柔軟性が大きく減ることを把握しておきましょう。

なお、やむを得ない事情があれば、ほかのタイミングで変更も可能ではありますが、役員報酬が経費として損金算入できなくなります。納税額が大幅に上がってしまうため、現実的ではありません。

役員報酬の変更について詳しくは、「役員報酬 変更 」の記事も、あわせてご確認ください。

参考:国税庁「No.5211 役員に対する給与」


4. 法人化の後悔(4)経理や決算に手間がかかる

3つめの後悔は「経理や決算に手間がかかる」です。

4-1. 法人化すると生じる義務

法人化すると、会社法や税法などの法律によって、少なくとも1年に1回は決算を行う義務が生じます。

事業年度終了時に適正な利益を計算し、それに基づいて、税務申告や決算公告を行わなければなりません。

【決算書の具体的な内容】

出典:J-Net21「決算書とは?」

決算書の作成では、以下を踏まえる必要があります。

・会社法
・税法
・会社法施行規則、会社計算規則などの法令
・企業会計基準、適用指針 など

経理や決算にかかわる業務には専門的な知識が必要であり、労力と時間がかかります。

4-2. 税理士への依頼を織り込んでおく

法人化してから後悔しないためには、法人化を検討する段階で、税理士への依頼を織り込んでランニングコストなどを見積もることが大切です。

「小さな会社だから、自分で何とかできるだろう」

と軽くとらえることは、失敗につながります。

理論上は自分でもできる業務ではありますが、本業に割くべき時間が奪われて生産性が落ちたり、誤った処理で追徴課税が課せられたりするリスクがあります。

税理士と年間契約を結び、サポートを受けることを前提としましょう。

税務顧問契約については「顧問税理士の「顧問」って何ですか?」にてわかりやすく解説しています。


5. 法人化の後悔(5)精神的な心配ごとや不安が増えた

5つめの後悔は「法人化の後悔精神的な心配ごとや不安が増えた」です。

5-1. 多くの人が抱えるストレスの例

この後悔は個人差が大きな問題ではありますが、じつは抱える人が多いものでもあります。

個人事業主・自由業・自営業・フリーランスといった肩書きで活動しているときは、イキイキと活動的に取り組めていたのに、法人化して代表取締役となってみると、心境の変化を感じる人がいます。

【法人化のストレスの例】

・税務調査が入るのでは?と考えると不安になる
・「売上が上がらないと税金を損する」と焦る気持ちが強くなった
・取引先や顧客から法人としての責任を求められている気がして、プレッシャーを感じる

法人化によって、税負担の軽減などのメリットを享受できていれば、不安を感じても相殺できるものです。

しかしながら、法人化した後に思うように売上が上がらず、業績不振が続くと、精神的につらい時期を過ごすケースも少なくありません。

5-2. 自分に合うスタイルを選ぶことも大事

法人化した後、自分がどのような気持ちになりそうか、静かに想像してみることも、大切です。

たとえば、子どもの頃から社長になるのが夢で、起業家スピリットを持っている人の法人化と、できる限りストレスのない生活をしたい人の法人化では、精神に及ぶ影響はまったく異なります。

「こんなにストレスを感じるなら、多少、多く税金を納めたとしても、個人事業主のほうがよかった」

と後悔しないために、自分に合うスタイルを選ぶことも意識してみましょう。


6. 法人化で後悔しないためには事前に専門家へ相談を

「自分は法人化して、後悔しないだろうか?」と不安になった方もいるかもしれません。

そのような場合に重要なことは、自己判断せずに、事前に専門家に相談してアドバイスを得ることです。

辻・本郷 税理士法人では、法人化を検討中の方向けの無料相談を実施していますので、ご活用ください。

6-1. 圧倒的実績数でさまざまなケースを熟知

辻・本郷 税理士法人は、圧倒的な実績数がありますので、さまざまなケースを熟知しています。

法人化するかどうか迷っている方には、豊富な知見をもとに、具体的なアドバイスが可能です。

後悔しないためには、「法人化したほうがメリットが大きい」と確信が持てるまで、法人化のタイミングを待つのも、賢い選択といえます。

どのタイミングでの法人化が適切か、個々のケースに合わせて専門的な見地からご提案できますので、お気軽にご相談ください。

6-2. 会社設立「失敗」に関する書籍も出版

辻・本郷 税理士法人は、専門家の中でも極めて高いプロフェッショナル性を誇ります。

「法人化での後悔」というテーマでいえば、失敗事例をまとめた書籍も出版しています。

●法人用クレジットカードで私的な買い物をした
●資本金を親から借りたが借用書を作らなかった
●源泉所得税の納期の特例について知らなかった
●税金を支払うための資金を準備していなかった
●許認可の要件を満たしていない
●会社設立の届出をしていなかった
●繁忙期と決算期が重なってしまった
●銀行口座開設の準備をしていなかった
●証憑書類を保存していなかった
●雇い入れた従業員と労働契約を結んでいなかった
●法人成りをしたが、個人事業の廃業届出書の提出を忘れた
●小切手・手形の扱いがわからない
●領収書に収入印紙を貼付しなかった
●扶養控除申告書をもらい忘れていた
●消費税の還付が受けられなかった
●決算日が過ぎてから節税対策をしようとした
●法人成りをした年の個人の確定申告を忘れていた
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辻・本郷 税理士法人『税理士が見つけた!本当は怖い会社設立~はじめての決算失敗事例55 』

辻・本郷 税理士法人へのご相談はこちらのお問い合わせページよりご連絡ください。何度でもご相談は無料です。お気軽にご利用いただけます。


7. まとめ

本記事では「法人化で後悔するケース」をテーマに解説しました。

(1)思ったよりも節税効果がなかった
(2)設立コストをもっと抑えられた
(3)稼いだお金を自由に使えない
(4)経理や決算に手間がかかる
(5)精神的な心配ごとや不安が増えた

後悔するとしたら、どのような可能性があるのか、あらかじめ想定しておくことで、適切な対応が可能となります。

本記事を参考としていただき、後悔のない選択をしていただければ幸いです。

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